No.534:ルールを守らない社員がいる ~その時にとるべき社長の対応~

№534:ルールを守らない社員がいる ~その時にとるべき社長の対応~

貿易支援業を営むS社長が変革に取り組み始めて半年が経過しています。
現在、社内の仕組化が急速に進んでいます。
 
しかし、S社長の表情は晴れません。
「先生、決めたことを守らない社員がいるのです。」
 
私は状況を伺い、答えました。
「放っておいたらどうですか?」
 
S社長は顔を横に振りながら言いました。
「その社員は古株なのです。若い人に悪い影響を与えるのではないかと心配です。」

「組織として決めて、全員が出来るようになるサイクル」を獲得する


会社として「何かを決める」、そして「全員が出来る」状態をつくる。
そして「それによって成果を得る」。その後も必要に応じ「改善し全員が出来るようにする」。
 
このサイクルは、組織として当たり前に持っていなければならないものです。このサイクルがなければ、会社としての成長も発展もありません。
 
これは聞けば当たり前のことですが、多くの中小企業や年商数億円企業は、このサイクルを持っていません。そのサイクルを社長や一部の社員で回しているのが実情です。それらの会社の成長は、やはり遅いものになります。
 
「社長一人で頑張る会社」から「組織で稼ぐ会社」に変容するためには、何としてもこの成長サイクルの獲得が必要になるのです。

決めたことを定着させる3つのステップ


会社として決めたことを全員が出来る状態にするためには、次のステップを踏むことが必要です。この3つは、会社としての成長サイクルを回すための基盤にもなります。
 
1.文章にする
文章になって初めて「決まり事」になります。そして、構成員と共有が出来、認識を合わせることができます。文章になっているから、その後も改善を積み上げることができます。文章にしていないのは、「決まっていない」のと同じです。また、業務に属人性を生む根本原因になります。
 
2.全員に伝える
方針やルールを決める時に、主要な管理者や社員を『巻き込むこと』を考えます。彼らを参画させることで、彼らの『自分事』となります。社長が作った文章も有効ですが、彼ら主導で作ったものには数倍の効果があります。
そして全員に伝えます。その重要度やその後の効果を考え、個別、チーム、全員とその対象人数を変えることをします。
 
3.定着まで確認する
一つの決め事が定着するまでには、やはり時間が掛かるものです。導入初期が勝負です。その管理者や社員には、「1週間は毎日その実施状況を報告させる」や「週例でチェックする」などの怠け者対策を施します。
 
中小企業や年商数億円企業の社長の中は、この3つを苦手とする方が多くいます。「口頭で方針や決定事項を伝える」、「自分で決定して投げる(巻き込みも伝えるのもしない)」、「指示を出せばほったらかし、数カ月後の再発でやっていなかったことを知り怒る」。この社長自身の習慣を変えることで、組織の習慣を変えることができます。

ルールを守らない人への対応のポイント


冒頭の貿易支援業を営むS社長も、この基本を抑えながら仕組みを続けていました。その効果を実感するS社長です。
「文章で書いたものはすぐに社員が守るようになります。また社員が意見を言ってくれるようになりました。」
 
文章の効果は、どの社長もが経験することです。そして定着された状態までをしっかり確認することで、成果をスピーディに得ることができます。
 
しかし、その一方でS社長には悩みがありました。その存在は社内が整うほど目に留まってきます。
「先生、古株の一人の社員が決めた事をやろうとしません。」
 
仕組化を進める時、このようなことが必ず起きるものです。多くの社員はその仕組みやルールの合理性を理解して、すぐにやってくれます。しかし一部の社員はそれを「やらない」「守らない」のです。
 
これはある程度致し方がないことです。いままでの会社には、仕組みもルールも無かったのです。その多くを個人任せにしてきました。その状態で長い間業務をこなしてきたのです。全く「文章化ー共有ー定着」というサイクルは会社には無かったのです。
 
坦々と粘り強く、その手順やルールが守られるまで取り組むだけです。ミーティングで再度読み合わせをする。やっていないその個人を呼び出し「よい会社にしたい。だから協力してほしい」と依頼する。こうしてやらない人を一人一人出来るようにするだけです。
 
しかしそれでも、変らない(変われない)一人か二人は、必ず出てくるものです。若い人への影響を考えると放っておくこともできません。また、他の社員からの社長への信頼が落ちることにもなりかねません。粘り強く当たるしかありません。
 
このようなケースでは、よく「腹を割って話したら」という意見や「話を聴くようにしたら」という専門家からのアドバイスがあります。しかし、この段階になるとそれは難しいのです。正直、こちら(社長)はその社員の顔を見るのも嫌になっています。そして、その社員も「変われないもの」なのです。

仕組みづくりを進めると起きる二つの現象


この時、社長は捕らわれてはいけません。どうしてもその社員の言動が気になります。また頭の中は「その社員をどうするか」ばかりになります。それどころか「社長自身が会社に行きたくなくなる」までに至ってしまうのです。
 
捕らわれてはいけません。仕組みづくりを坦々と進めるのです。事業を更に強いものにする、仕組みを改善する、組織でPDCAを回す、それを進めるのです。
 
すると次の現象が起きてきます。
 
1.自浄作用が働くようになる。
職場に良い意味での規律と緊張感が生まれてきます。その中で、貢献している人とそうでない人が明確に見えてきます。そして「守っていない人」が誰の目にも浮き彫りになります。そういう人は決まって実際の貢献度は低いものです。
 
徐々にその人の存在感は薄れていくことになります。また、本人もそれを察してか、声を潜めるようになります。いつのまにか「決めた事」をやるようになっています。または会社を去ることになります。
 
決めたことをやってくれる、その他大勢の社員と共に、仕組化を進めるのです。
 
2.人の入れ替わりが起きる。
それと同時期に「並みの人」が採用できるようになります。社内には、常識があり真面目な社員やパートが増えてきます。また新しく入ってくる人にとっては、そのルールや仕組みは当たり前のものなのです。教えたことをすぐに受け入れ、その通りにやってくれます。
 
そうすると益々「守らない人」にとって職場は居心地の悪いものになります。それにより、自浄作用が更に働くことになります。
 
そうして人の入れ替わりが起きていきます。「そこにいる人の成長」よりも「より優秀な人の獲得」の方が、組織の変化・成長のスピードを早くします。
 
S社長は、私の「放っておいたらどうですか」のアドバイスを信じることにしました。
 
そして、その取組みに邁進することにしました。その結果、3年後には社員の多くが入れ替わることになりました。
 
当時の社員数は20名、今は30名ほどに増えています。そのうち、3年前から残っている社員は10名ほどです。オフィス街の新しい事務所に移転も行い、年商も昨対125%で伸びています。ピッカピカの会社に生まれ変わったのです。
 
S社長は言われます。
「今は、会社として決めた事がすぐに実行されるようになりました。その点でのストレスは全くありません。」

まとめ:ルールを守らない社員がいる ~その時にとるべき社長の対応~


会社の成長には、「決めたことを全員が実行するサイクル」が不可欠です。一部のルールを守らない社員に社長が捕らわれていては、改革は前に進まなくなります。
 
個人に向かうのでなく、仕組みを変えていく。それにより、自浄作用が働き、より優秀な社員も集まるようになります。
 
その結果として、組織全体を変えることになるのです。取り組むことを間違えずに、粘り強く仕組みを整えれば、会社は大きく変わるのです。
 
進めていきましょう。
 
 
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矢田祐二
矢田 祐二

経営実務コンサルタント
株式会社ワイズサービス・コンサルティング 代表取締役
 
理工系大学卒業後、大手ゼネコンに入社。施工管理として、工程や品質の管理、組織の運営などを専門とする。当時、組織の生産性、プロジェクト管理について研究を開始。 その後、2002年にコンサルタントとして独立し、20年間以上一貫して中小企業の経営や事業構築の支援に携わる。
 
数億事業を10億、20億事業に成長させた実績を多く持ち、 数億事業で成長が停滞した企業の経営者からは、進言の内容が明確である、行うことが論理的で無駄がないと高い評価を得ている。
 
 

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