No.169:卓上カレンダーが大活躍している会社では、、、社員が業務改善をしない、報連相がない、決めたことが定着しない、という問題が起きる。
T社長からの相談です。
「部下に指示したことがされない。」
「期限を過ぎても報告がない。」
「決めたことが定着しない。」
そして、
「あれどうなった?と訊いて初めて「出来ていません。」と返ってきます。」
矢田は確認させていただきました。
「御社の社員は、手帳を持っていますか?」
T社長、やや困惑した表情です。
矢田は続けます。
「その状態から推測すると、彼らは、手帳を使えていません。そして、その代わりに、卓上カレンダーが大活躍していることでしょう。」
我々は、手帳により仕事の多くをコントロールしています。
手帳無しでは、一日でさえも業務を全うすることは不可能です。
手帳を持つ、手帳を使う目的は、大きくは以下の5つになります。
1.スケジュールを調整、管理する
月、週、日という単位で仕事を組み立てることになります。
「この月は閑散期だ、今期の重点課題をやろう。」
「今月の第三週に、重要なプレゼンがある。この直前はできるだけ時間を空けよう。」という具合に、我々は、手帳により、自分の仕事量の調整や段取りを行うことができます。
2.上司やお客様からの依頼事項を残す
指示を受けるときには、手帳にメモを残します。
依頼事項を確実に遂行するためには、指示の趣旨や相手の要望を正しく理解する必要があります。
メモを残すことで、忘れることなく正しく仕事ができます。
また、そのメモを取る姿を相手に見せることで、相手を安心させることができます。
3.重要な事項をメモする
朝礼の場で社長から説明があった新たな方針や会議の場で通達された事柄など、メモに残します。
「この半期の重点営業エリアは、〇〇市と〇〇市とする。」
「社外に出るときには、必ずボードに行先と帰社予定時間を書くこと。」
これらを、パソコンデータとしてメモに入れても、一瞬で忘れ去られることになります。
毎日開く手帳だからこそ、自然に目に留まり思い出すことができます。それにより、自分の行動を変えることができます。
4.TODOリストをつくる
その日に行う仕事のリストを作り、一つひとつこなしていきます。
また、今日やらないものは、明日や明後日、来週の〇曜日の欄に書き込んでおく必要があります。
このリストには、上司や外部に対する報連相も入れることになります。
「イベントの企画書作成の中間報告を15日に行う」
「明日、見積書のフォローの電話をする」と。
リストに、報連相の予定を入れておくことで、初めて報連相を忘れずに行うことができます。
5.アイディアをメモする
ある日突然、アイディアは降ってきます。また、業務をこなしていると課題を見つけることができます。
「あの業務は、こうすればもっと効率良くできるのではないか。」
「自社のホームページの写真は、スマホでは見え難いなぁ。」
明確な目標意識があるときには、さらに多くが降ってきます。
この瞬間に、メモとして残しておかないと、一生消え去ることになります。
これらが手帳の大きな役目となります。
一冊の手帳を使うのか、それとも複合的なツールを使い分けるのか、いずれにせよ、これらの「機能」をなんかしらに持たせる必要があります。
これらのどれかが欠けても、業務を全うできなくなります。
もし、これらの機能が業務上常に自分の身の周りになければ、下記の状態に陥ることになります。
1.スケジュールを調整できない、先回りで仕事の段取りができない。
2.上司やお客様からの依頼事項が漏れる。趣旨を取り違え業務を進めてしまう。そして、お叱りを受ける。
3.連絡事項を忘れる。そのため、ケアレスミスが多い、何度も同じ間違いをする。そして、定着しない。
4.TODOリストを作らない。そのため、一日の業務が計画的にこなせない。また、仕事の優先順位を間違える。そして、報連相の多くが抜け落ちる。
5.せっかく浮かんだアイディアが失われる。業務で表出した課題が、忘れ去られ、対策が取られない。そして、また再発する。
手帳が無いとこのような状態になります。このような状態になるのが、約束されているのです。
そして、その結果、その人の能力は高まりません。考える力も段取り力も、報連相の力も高まらないのです。そして、躾レベルのことも定着しません。
そして、その人は周囲の信頼を落としていきます。
手帳というものは、人が持てる能力を最低限発揮するツールであり、自分の能力をさらに高め、この先より良い仕事をするための最強のアイテムなのです。
この正しき認識が必要です。
そのうえで、訊かせていただきます。
「貴方の会社の社員は、手帳を持っていますか?」
そして、
「活用していますか?」
残念ながら多くの会社では、手帳を持っていない社員が大半を占めています。
そのため、上記のような問題が起きています。
「部下に指示したことがされない」、「期限を過ぎても報告がない」、「決めたことが定着しない」のです。
これら問題の根本には、「手帳を持っていない」ことがあります。
「手帳を持っていない」から、起きて当然の結果なのです。
では、なぜ手帳を持たないのか?
それは明確です、「手帳が必要ない」からです。
手帳が必要なくても困らない環境にいるのです。
手帳が必要になる状態を一言で表現するとこうなります。
『自分が、何かを変えるミッション(業務)を持っている』
上司からの指示を受け、ルーチン業務以外を実行しようとすれば、手帳が必要になります。
また、自分に与えられた課題解決のテーマがあれば、アイディアが必要になります。それも、月や週単位で計画的に業務を進める必要があります。
日常のルーチンをこなしながらなので、TODOリストが必要になります。
そこに、報連相が必要になります。
実際に、それを実行するためには、誰かとアポイントが発生します。
「何かを変えるミッション」を持っていれば、手帳は絶対に必要になるのです。
ルーチン業務だけでは、手帳は必要ありません。
手帳を持っていない社員は、実は「何かを変えるミッション」を持っていないのです。ルーチンだけなのです。
彼らは、目標達成も課題解決も求められていません。『新たなこと』に対して、考えることも、そのために人と会う必要もありません。
彼らの業務は、日々同じ作業の繰り返しです。
お客様の注文などの案件は、システムやエクセル表で進捗が管理されます。
在庫管理や伝票作成、請求書の発行などの月単位の業務は、卓上カレンダーで十分です。
工場では、不足する材料を数え、小さなメモ紙(裏紙)に数字を書き込みます。
その時その時に対応することは、ポストイットでデスクトップに貼っておきます。
会議や朝礼には、手ぶらで参加します。
これで十分、日々の業務はこなせるのです。
だから手帳を持つ必要がないのです。
逆を言えば、「何かを変えるミッション」が無ければ、手帳を持ったとしてもその多くは、空欄のままとなります。
その手帳は、「学生並」になります。
学生の頃の手帳には、「アルバイト」「歯医者」「テスト」の予定だけです。あってレポートの提出期限ぐらいです。当然、アイディアをメモすることはありません。
社員の多くが学生時代並の手帳との付き合いをしています。
そして、学生時代から手帳の使い方は進化していません。
「何かを変えるミッション」を持たない社員は、手帳を持ちません。そして、当然、使えません。その結果、「部下に指示したことがされない」、「期限を過ぎても報告がない」、「決めたことが定着しない」という状態に陥るのです。
すべての案件は、案件管理表でこなされていきます。
すべての情報は、伝票でやり取りされ、データベースに入れられます。
年商10億円の仕組みという意味では、これらは理想的な状態です。
何も間違っていません。
個人の能力や気配りというレベルでの業務をできるだけ排除することが、仕組みをつくる狙いです。
これらの仕組みが整えば整うほど、個人がペンを持って書く必要ことはなくなってきます。仕組化が進めば進むほど、個人のメモはいらなくなります。
そして、社長の望まない方向に益々進むことになります。
社長の望みが、「考えられる社員をつくる」、「決めたことがすぐに定着する」、「現場から改善案が出される」、「報連相がしっかりされる」状態であれば、不味いことになります。
仕組みだけでは、不味いのです。仕組化が進めば進むほど、社長の望みから、遠ざかることになります。
社員には、手帳を持たせましょう。
そして、「何かを変えるミッション」を与えるのです。
そして、手帳にメモをする癖をつけさせるのです。「浮かんだアイディアは書き込め」、「TODOリストに報連相の予定を入れろ」と。
ルーチン業務には、卓上カレンダーは非常に有効です。
それプラス、何かを変えるという仕事には、個人の手帳が有効です。
どちらも必要です。どちらも、儲かる10億を実現するためには必要なのです。
卓上カレンダーで許される環境に、多くの社員を漬けているのが不味いと言っているのです。
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