No.473:社員に依頼したことが一向に進まない、そんな社長の悪い癖とは?

№473:社員に依頼したことが一向に進まない、そんな社長の悪い癖とは?

この日は、設備業K社長とのコンサルティングです。
この一年、事業、仕組み、組織作りに取り組んできました。業績は順調に伸びています。
 
しかし、この日のK社長の表情は晴れていません。
「先生、社員に依頼していることが一向に進まないのです。」
 
私は、いつも通り、いくつか確認をさせていただきます。
まずは依頼事項が多すぎないか、そして、社長がしっかりフォローしているか。人選に問題は無いか。K社長は、特に「フォロー」に問題があることが解りました。
 
その指摘にK社長は答えます。
「先輩経営者から、社員に指示を与えたら口を出してはいけない、とアドバイスを受けたもので・・・」


経営に偶然なし。
 
経営に偶然はありません。
そこには原因と結果の関係が存在します。
 
今そこに問題が存在するのであれば、その原因は必ずあります。
それに対し正しい対策を行えば、必ず望む結果が得られるのです。
 
・売上げが落ちている。
この現象があれば、まずは「集客件数が減っていないか」と「成約率は落ちていないか」を確認します。そのどちらにも問題がなければ、「単価が下がっていないか」を確認します。または、「既存顧客のリピートのスパンが伸びていないか」を確認します。
分解することで、その原因が見えてきます。そして、より深い分析と具体策が打てるのです。
 
・営業担当と製作担当の関係が険悪になっている。
このような場合には、まずは「業務の流れ」に問題が無いかを確認します。業務の流れが曖昧である、業務の流れが見えないようになっている可能性があります。
そこに問題が無ければ、帳票類を確認し、情報の記録や引き渡しが機能しているかを確認します。
また、双方向のコミュニケーションの機会が設けられているかを確認します。
人間関係の良し悪しも、そのつくり次第なのです。
 
・管理者が機能しない。
管理者に任命した彼は、いままで通りの現場作業ばかりをやっており、部下を指導しません。
こんな時には、まずは「管理者のルーチンワーク」を確認します。管理者の「やることが決まっていること」、「やるタイミングが決まっていること」が大切です。
高い確率でその整備でこの問題は解決します。後は、管理者としての経験を積ませることになります。
 
起きている現象は結果であり、そこには原因があるのです。
その認識を間違えてはいけません。
その追及を諦めてはいけません。
 
経営に偶然はありません。
そこに有るのは科学です。
 
科学ということは、「同じようにやれば、同じような結果が出る」ということです。


冒頭のK社長は、「社員に依頼したことの進みが遅い」という問題を抱えていました。
 
K社長は口を開きました。
「先生、うちの社員はレベルが低いのでしょうか?」
 
私はその問いには答えず、定石の質問に入ります。
「単年度行動計画を見せてください。」
 
やはりそこには、沢山の目標が書かれています。
そして、その多くを「今月」やることになっています。
 
これで原因の一つが解りました。社員は依頼されたことが多すぎて、何をすればよいのか分からなくなっていることが予測されます。
その私の指摘にK社長は、「その通りだと思います。」と答えました。
 
そして、次に移ります。
「依頼した後に、次のアポイントを取っていますか?」
最初、K社長はこの質問の意味がすぐには解らなかったようです。
 
私は次の説明をしました。
依頼したら必ず、その場で、次回の打合せのアポイントを取ること。
それにより、その社員に「覚悟」と「やる気」を与えることができます。
「社長は本気なのだ」そして「自分一人でなく社長も協力してくれるのだ」と思わせることができます。このアポイントが無いと、社員の実行率は覿面に低くなります。
 
この「指示を出して、フォローしていない(ほったらかし)」社長は非常に多くいます。指示を出せば、「すぐにやってくれる」とでも思っているのでしょうか。そんなことは、絶対にありません。
 
社員は、指示を受ける時に、探っています。「社長は本気だろうか。これはやる必要があるだろうか」。彼らに、こちらの本気を見せなければなりません。
 
次のアポイントが無いため、その社員の中の、その依頼の優先順位は下がることになります。その後、社長から確認されることもありません。その依頼は消滅することになります。
 
こんなことを繰り返しているのです。
 
痛いところを突かれたという顔でK社長は言いました。
「先輩経営者に、社員に指示を出したら任せることが大事。口を出してはいけない、と言われました。」
 
これは、ある企業には正しいことです。しかし、ある企業、年商数億の会社には間違いになります。
我々年商数億の会社には、「指示を一回出したら、やってくれる社員」など居ないのです。そして、来ないのです。そんな社員が現れるのは、『仕組化後』の数年のタイミングの本当の成長軌道に入った時です。今のK社に居るはずがありません。
 
『仕組化後』には、優秀な社員がやってきます。指示を出せば「はい」と答え、実行してくれます。必要に応じ相談にも来てくれます。
 
その先輩社長の会社は、「仕組化後」にあるのです。K社は「仕組化前」にあります。
紀元前紀元後のように、仕組化前と仕組化後では、全くその前提が違うのです。
口を出さなければ何も進まなく、口を出して教育していくしかないのです。
 
 
そして、私は、最後の一つを確認させていただきました。
「それを誰に頼みましたか?」
 
単年度行動計画を見ると、そこには多くの社員の名前があります。
そんなはずはありません。
K社のような仕組化前の会社に、依頼できる社員がそんな人数いるはずが無いのです。もし居たとしても一人、二人のはずです。
 
K社長なんと、全員に依頼をしていたのです。
依頼しないと育たない、と思ってのことですが、その能力がない相手に依頼すれば、それは非常に時間も手間もかかることになります。
 
出てきたもののレベルに肩を落とすことになります。
修正のための打合せをしても、その飲み込みも遅いのです。会社とし、一向に進まなくなってしまいます。
 
こういう時は、「一番やる気も能力もある社員」を巻き込むのが鉄則です。
それは大概、今の役職者ではありません。若手のいち社員であったり、パートさんであったりします。その人材をプロジェクトなどの理由を付けて使うのです。
 
間違っても、一番大変なところ(感度の悪い)から入ってはいけません。
 
 
K社長は、すべての間違いを犯していました。目標が多すぎる、次のアポイントをとっていない、能力の無い人に依頼。
これでは、「社員に依頼していることが一向に進まない」のは、当然なのです。
 
私は、最後にK社長に提言をしました。
「まずは、一人の社員を使えるようになりましょう。」
 
社長は、人を使えるようにならなければなりません。その最初の一歩が、「一人の社員」です。
その一人に仕事を依頼して、成果を出すことです。
間違っても、その段階を飛ばして「複数の社員」で成果を上げようとはしてはいけません。
 
自分と自分以外の一人の社員と共に、仕組みづくりを進める、
これが年商数億社長の、最初の目標なのです。
これこそが、年商10億、仕組みで回る会社への第一歩なのです。
 
年商数億企業とは、
いままで一度もまともに経営が出来たことが無い社長と
いままで一度もまともに仕事が出来たことが無い社員の
組み合わせなのです。
 
そこから抜け出すのは大変です。しかし、そのやり方は明確にあるのです。
そこには、法則性があり、科学があるのです。
 
経営に偶然なし、
経営に科学ありです。
そこには、運やカリスマ性などの要素は関係ありません。
 
同じようにやれば、同じような結果が出る
まずは、それを身に付けましょう。
 
その力こそが、社長のこの先の経営者人生をより楽しいものにしてくれます。

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