No.191:人に仕事が付く状態を招いている原因の一つが組織図組織図の正しい作り方とそのポイントとは!?

コラム№191

「矢田先生、私は、転職できるでしょうか?」
 
この日は、コンサルティング終了後、場所を料亭に移しました。
テーブルの上には、皿が並んでいます。
工業系商社K社長のその言葉に、私は箸を止めました。
 
「転職ですか?」
業績は順調、そして、年商10億以上の経営が掴めてきたK社長です。
 
「私に、他の会社に社長として採用されるだけの価値があるでしょうか?そして、そこで成果を出せるだけの力があるでしょうか?」


年商数億から年商10億に進む時に、組織を整備することになります。
その第一歩として、取り組むことが「組織図の作成」となります。
 
組織図を作成することにより、多くのことが見えてきます。
・この事業を行うために、どんな「機能」が必要であるか。
そして
・その「機能」をしっかり担ってくれる、どんな「材料」が必要であるか。
 
事業を回すためには、必要となる機能があります。
集客という機能、販売という機能、企画という機能、製造という機能、経理という機能など。
事業の設計ができると、自ずと、必要となる「機能」が見えてきます。
そして、その「機能」を「部位」に落としていきます。それを部門といいます。それを図として表現したものが、「組織図」となります。
 
「組織図」を観れば、どんな事業を行うのか、どんな事業に向かうのかが解るのです。(また同時に、どんな問題が起きるのかも予測できます。)
 
人の体と同じです。
口、手、肺、胃、大腸などの部位があり、機能があります。それぞれの部位が、それぞれの役目をしっかり担うことにより、私たちは毎日を生きることができます。
その時、各々の部位は絶えず状況を判断し、適切に対応をしています。
温度が変わる、湿度が変わる、供給される栄養素が変わる、心理状態が変わる、ウィルスなどが入ってくる。絶えず変わる状況に対し、各部位が察知し、判断をし、連携しながら対応をしているのです。その過程で、経験を積み、より強くなります。
 
そして、私たちは、その体の主(あるじ)として、命令を与えることになります。
「〇〇を実現したい、私は〇〇で成功したい、だから体よ、協力しなさい。」と。
そして、その実現のための行動により、その体はそれに向けて最適化されることになります。
 
マラソンに人生をかける人は、やはりマラソンに向けた体を得ることになります。エベレスト登頂を目指す人は、体型も思考もそれに向けて最適化されることになります。
その体の主が、強くそれを望むほど、そして、他の多くを捨てるほど、その体という組織は、それに向けて強化されることになります。
 
会社という組織も同じです。
各部門がしっかり分担された業務をこなすことで、通常の業務をこなすことができます。そして、各部門が変化する状況を適切に判断し、対応することで、お客様の個別の欲求やイレギュラーな事件に対処できるのです。
その時には、部門間も連携しています。その過程で、経験と再構築を得て、強靭になっていきます。
組織はその機能を維持するだけではなく、その主が望む「何か」の実現ために力を与えてくれます。


組織図を作成するときには、どんな事業を行うのか、それを主として明確に決める必要があります。そして、そのための機能と部門を書き出します。
販売の機能を持たせる営業部、製品をしっかり作る製造部、適切に材料を仕入れ在庫を管理するための購買課など。
機能から組織図を作成します。
 
そして、その各部門に、必要な材料を宛がうことになります。
創業当初は、すべての部門に同じ名前が入ります。社長に田中、営業部長に田中、営業担当に田中、購買課長に田中、経理課に田中、すべて田中です。
 
そして、人材(材料)を求め、その人材をそのポジションに当て込んでいきます。
売上げの拡大とともに、優先順位の高いポジションを補充します。その時には、適材適所が重要となります。徐々に、組織図から田中の名前がなくなっていきます。
 
それと合わせるように、分業が威力を発揮するようになります。
各部門が、日々の業務をこなしてくれます。日々起きる問題に適切に対応してくれます。経験を積み、より専門性を高めます。各部門がスピードを持って、進化を続けます。
この時には、田中は、本業に専念することが可能になります。
 
組織図を作成するときには、人の名前を先に入れることをしてはいけません。それこそが、「人に仕事が付く状態」を招くことになります。「仕事に人が付く」ために、機能で作成をします。
そして、その部門が機能するための仕組みを整備することに向かいます。
まずは、部門間で業務を流すための「横」の仕組みが必要になります。そして、判断機能のための仕組みが必要になります。
人を増やすことと同時に、その仕組みの整備をしないと、多くの不具合が発生することになります。「お客様からの要望が、営業から企画に伝わっていない」、「期限が過ぎているのに、外注への催促をしない。」などなど。
それは、まるで神経がつながっていない状態です。そして、各部位が機能不全を起こしているのです。


分業を機能させるための仕組みを整備することが必要になります。
同時に、適切な『材料』を調達する必要があります。
 
各部門に求めることは、ただ単に日々の作業をこなすことだけではありません。状況を適切に判断すること、そして、その仕組みをつくり変えていくことも求めることになります。
これを「縦」の分業と考えることができます。
作業をしっかりこなす作業層、適切に判断する主任層、仕組みを改善する課長層、そして、その部門全体を統括する部長。この「縦」の分業も機能させる必要があります。
この縦の分業を機能させられないと、問題が起きます。
イレギュラーな対応ができない、判断できないので社長に都度電話で聞く。対処ばかりで、根本的な業務の改善がされない。目標の未達成が常習化します。
 
縦の分業も仕組みの整備が必要となります。そして、ここにこそ適材適所が必要になります。
部長や課長という管理者のポジションには、やはりそれだけの能力が必要になります。その能力をしっかり観ることが必要です。
 
その管理者の人選をする際には、それだけの「能力がある人」を選ぶ必要があります。「能力がない人」を選ぶと、当然そこで機能不全を起こすことになります。
 
人選の間違いは、大きく二つあります。
一つは、「能力が無い人を選んでしまった」というもの、もう一つは、「潜在能力はあるが、まだ能力が無い人を選んでしまった」というものです。
 
この「潜在能力はあるが、まだ能力がない人を選ぶ」という間違いは、前者と同じくらい多い間違いです。そして、前者以上に不幸な結果で終わることが多くあります。
基本的な能力も高く、やる気もある、しかし、経験がありません。そのため、まだ管理者というポジションを担うことができません。管理者としての教育と経験を積ませる時間が必要になります。
 
しかし、ここに混同が起きた時に、大きな不幸が起きます。経営者が、その潜在能力と実際の能力を混同してしまうのです。
「優秀だからやれるだろう」という期待だけで、管理者に任命します。または、仕組みの構築などの難易度の高い仕事を与えます。能力はすぐに高まるものではありません。やはり、その期待に応えることはできません。
 
マラソンの潜在能力が高いことと、マラソンを完走できることは違います。ましてや、マラソンレースで上位に入ることも違います。
エベレストに登れる潜在能力があるのと、実際に登れるのは違うのです。
混同してはいけません。
 
潜在能力がある人に、そのための教育と経験を積ませる必要があります。
エベレストに登るためには、トレーニングと富士山などで経験を積ませることが必要です。徐々に負荷を大きくするのです。そして、その過程でアドバイスをしていきます。
大き過ぎる負荷をかければ、当然潰れます。適宜具体的なアドバイスをしなければ、自分で間違いに気づくことも、修正することも難しいのです。
 
潜在能力の無い人に、そのための教育と経験を積ませることも不幸です。
本人には、その基礎能力もない、そして、やる気もないのです。
基礎能力もやる気も無い人に、マラソンや登山はただの拷問です。
そして、当然、その期待に応えることができません。
 
管理者としての現在の能力と潜在能力を弁別して考え、伸ばす施策を行っていく必要があります。その相手の現状に合わせ、伸びる機会を適切に与えるのです。
 
トレーニングも経験もなく、管理者を担える人はいません。そこにあるのは、「潜在能力がある」だけです。これを読み間違えると、これから伸びて、活躍するであろう人材を潰すことになります。


社長という役割も同様です。
社長には、社長としての能力と潜在能力が、必要です。
創業当時は、潜在能力しかありません。そして、その一つひとつを学び、身に付けるしかありません。
そして、年商10億を目指すのであれば、それも、学び、身に付けるしかないのです。
 
たまにその潜在能力だけで、成功する人がいます。そういう人は、一度事業が崩れると再建できなくなります。
そこには学び、身に付けてきた理論や哲学が存在しません。再現性がないのです。
 
冒頭のK社長の「転職できますか?」という言葉に、私はお答えさせていただきました。
「はい、できますよ。多くの会社が欲しがるはずです。」
年商10億の事業モデルの作り方も解っています。どんな経営計画をつくれば組織を動かせるのかも解っています。再現させるだけの能力があるのです。
転職した先の会社では、その能力を余すところなく発揮することができるでしょう。
 
そして、K社長には、まだまだ潜在能力があります。
ご本人には、もっと学びたい、もっと会社を発展させたいというやる気もあります。重い責任を進んで背負うという気概もあります。
そして、今現在も社長というポジションで、その機能を果たしています。社長としての機能を担い、組織を動かし、成果も出しています。
 
営業担当が、営業の成果を出さなければ存在意味はありません。
製造課長が、業務の改善をし、品質の向上や納期短縮という成果を出さなければ存在意義はありません。
それと同様に、社長も「社長としての成果」を出さなければ存在意義はないのです。
それが分業です。分業の役目を果たすことが必要です。
 
組織図のなかに、唯一つ「田中」という名前があります。
そこは、社長という主(あるじ)の部位です。
主は、組織に命じることになります。
「〇〇を実現する。だから、協力をせよ、行動せよ。」と。
 
何を目指すのかを決めるのは主の仕事です。そして、何を捨てるのかを決めるのも主です。主が迷えば、当然全体も迷います。主が怠ければ、全体もすべての部門も緩みます。
良くも悪くも、組織が変わるのは、主が変わるからなのです。
 
社長という職業の、プロとしての自覚が必要です。
プロ経営者としての気概が必要です。プロ経営者としての能力が必要です。

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