No.592:採用で会社を変えようとしてはいけない。順番を間違えると、優秀な人が辞める。
3年ぶりに、機械メーカーY社長が相談に来られました。
「優秀な社員が辞めました。」
Y社は、この数年採用に力を入れてきました。
採用ページを整備し、給与を見直し、面接も改善しました。その甲斐もあり、以前よりも優秀な人材が入社するようになりました。
「これで採用した5名全員が辞めてしまいました。」
Y社長は苦笑いしながら続けます。
「いまなら先生の言われた、“順番が大事”という意味が解ります。」
採用は会社を変える手段にはならない
優秀な人が入れば会社が変わる。
若い人が入れば活気が出る。
能力の高い人が来れば業績が上がる。
それを求め、多くの会社が、採用に力を入れます。
そして、一部の会社だけがうまくいき、その他多くの会社は散々な結果になります。
その多くの会社では、採用が会社を変える手段にはなりません。
なぜか。
次の3つがないからです。
事業、仕組み、組織。
この3つが揃った時、初めて人が活躍するようになります。
そこそこの人も、優秀な人も。
その結果、会社は急速に伸びることになります。
逆に、この3つが揃わなければ、人が活躍することはありません。
そこそこの人も、優秀な人も活躍できません。
この段階で求めるのは「向上心」である
事業、仕組み、組織が整ってくると、次に会社に必要なものが明確になってきます。
それは、「未来を変える力」です。
事業、仕組み、組織、を変える。その変化を一緒に担ってくれる人材が必要になります。
そこで人材に求めるものは、「向上心」になります。
向上心とは、「目の前にあるものを、より良くしようという意欲」です。
未来づくりには、正解がありません。
新しい商品をつくる。新しい市場を開拓する。新しい仕組みを考える。
それに対し、誰も答えを持っていません。試して作っていくしかないのです。
そこで必要なのは、「教えてもらう人」ではなく、「自分で考え、行動する人」なのです。
その根底にあるのが「向上心」となります。
組織は平均値で決まる
そして、ここで起きるのが、人の入れ替えです。
それを意図して、起こしていきます。
こういう言い方もできます。
「会社の成長とは、組織の平均値を上げること」。
事業、仕組み、組織が良くなる。
そして、採用力をつける。
すると、それに見合った人材が集まるようになります。
若くて優秀な人材が入ってきます。
向上心のある人材が入ってきます。
それにより、変化と成長が安定してきます。
その時には、会社の中の基準のすべてが変わります。
今まで許されてきた態度が許されなくなります。
管理者に求められる役割も変わってきます。
その結果、ついて来られない人が浮き彫りになってきます。
これは悪いことではありません。
企業の成長とは、そういうものなのです。
全員が上がっていくことはないのです。
人材の平均値が上がるから、会社が伸びるのです。
人を入れ替えなければ、平均値は上がらない
逆に言えば、人の入れ替えが起きなければ平均値は上がりません。
いつまでも同じレベルの人材を採る。
同じレベルの人材を残し続ける。
これでは組織は変わりません。
事業だけが成長する。
仕組みだけが高度になる。
しかし、人は低いままで変わらない。
すると必ず起きるのです。
「人が追いつかない」という現象が。そして、問題が頻発することになります。
会社は前に進もうとしているのに、人材が過去のレベルのままなのです。
順番を間違えてはいけない
冒頭のY社長は、3年前に、この状態を採用で解決しようとしました。
その時のY社には、その土台となる事業、仕組み、組織がありませんでした。
その結果、採用できた社員が活躍できなかったのです。
一時的に成果は出ました。社内の雰囲気は変わり、業績も上向きました。
彼らは、積極的に社長に提案もしてくれます。
その結果・・・最後の一人が退職しました。
この時のY社には、何も残っていません。
この数年、その優秀な人材を「仕組み」に向けることをしていませんでした。
それどころか、この3年で、社歴の長い社員も殆どいなくなっています。入れ替わりは起きていたのです。
採用とは、改革の総仕上げ
まずやることは事業です。
何を売り、誰に選ばれ、どう売上を伸ばすのか。
次に仕組みです。
誰がやっても成果が出るようにし、ノウハウを蓄積し、再現できる状態をつくります。
そして組織です。
事業と仕組みを改善するサイクルをつくります。
その後に、採用です。
向上心のある人材を採用し、その成長を確実なものにするのです。
この順番は絶対です。
採用で会社を変えようとしてはいけません。
採用とは、変わった会社をさらに成長させるための仕上げなのです。
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矢田 祐二
理工系大学卒業後、大手ゼネコンに入社。施工管理として、工程や品質の管理、組織の運営などを専門とする。当時、組織の生産性、プロジェクト管理について研究を開始。 その後、2002年にコンサルタントとして独立し、20年間以上一貫して中小企業の経営や事業構築の支援に携わる。
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