No.107:価格競争、値引き要求、原因は〇〇が正しく顧客に伝わっていないから
『うちの業界は値引き要求が厳しくて』
『競合との価格競争が激しくて』
とこの言葉を発しているようなら、自社の事業自体の見直しが必要となります。
正しく認識すると、「うちの業界」すべてで値引き要求が厳しいのではなく、「うちの会社」に対し厳しいのです。
我々中小企業は、必ず「価値」を売る必要があります。「価値」を提供することで、高粗利の価格設定ができます。
逆に、「モノ」を売っている限り、低粗利の価格設定になります。また、価格の競争に巻き込まれます。
例えば、フランス料理、一人1万円のコースを食べに行きます。
この1万円のコースに、それだけの価値があるかどうかは、料理だけではなく、そのサービス全体で判断をします。
サービスは、店選びの段階からスタートしています、妻との結婚記念日、誕生日のお祝いなどで使用する、そのために使える店であるかどうか。
電話で予約する時の印象も良く、安心できるかどうか。
そして、店の内装も、椅子の座り心地も、接客も、そして、会計まで、それら全てがサービスなのです、それら全てに対して満足し、お金を払うのです。
これに対し、食事だけを提供している店では、おのずと低価格になります。
牛丼、回転寿司、ハンバーガー、これらの事業体では、サービスの部分を省くことで低価格を可能にしています。そして、「どこの牛丼のほうが20円安い」ということがニュースにまでなっています。
我々の事業は、価格勝負の牛丼店ではなく、「価値」で勝負するフランス料理店である必要があります。
例えば、
・「ホームページ」ではなく、「集客できるホームページ」を売る
ただのホームページなら製作費50万円は高い、毎月、10件問い合わせが来るホームページなら、50万円は安い。
・「金属加工」ではなく、「スピード対応」を売る。
試作を大量につくるメーカーからは、「納期」しか訊かれない。
・「店舗デザイン」ではなく、「客単価を上げる店舗づくり」を売る。お酒がすすむ空間、そして、客の滞在時間を短くも長くもできる。
自社の事業を「提供する価値」で定義する必要があります。
顧客は、そのサービスから自分が得る価値を基準に評価するため、その価格を当然のこととして受け止めます。そして、値引きを要求しようとは考えません。値引きを要求する時は、それが「モノ」に見えているからです。ホームページを「作業代」と観るか、「月10件の問合せ」で観るかです。
まずは、自社の事業の価値変換が絶対に必要となります。
そして、その「価値」をしっかり顧客に伝える必要があります。その「モノ」自体を見せられても、その価値までを顧客は知ることも感じることもできません。
サンプルとして、ホームページの製作実績を見せられても「モノ」に映ります。そのホームページから毎月10件の問い合わせがきているという効果を見せられた時に、その「価値」を初めて理解することができます。
金属加工品のサンプルや保有する設備を観ても伝わりません、スピード対応のサービスが成文化された提案書を見て、納得ができます。
サービスというものは、見え難いものだけに、伝え難いのです。だから、多くの企業では、せっかく良いサービスを持っていながらも、顧客に伝えきらずにいます。
そのため、顧客からは「モノ」と判断され、他社の「モノ」と比較され、価格競争に巻込まれることになります。伝える努力が必要になります。
また、社長も社員も自分たちが何の「価値」を提供しているのか正しく認識していないケースも多くあります。
なんとなく認識している社長や一部の優秀な営業担当は売れるが、認識できていない営業担当はいつも「価格」を理由に断られることになります。伝わらなければ、ただの「モノ」になり、値引きの話になります。
また、働くスタッフからしても、サービスは見え難いのです。そして、サービスは「結果」を売ることですから、顧客からの要望もおのずと高くなります。
スタッフにも自分たちが何を提供しているのかを正しく認識させ、そのための訓練体制を整えなければいけません。
「我々は、集客できるホームページを売っている」
「我々は、最速の金属加工を提供している」
「我々は、客単価を上げる店舗づくりを提供している」
この「価値」を実現するための、仕組みを整備していきます。これにより、御社は、他社では替わりが効かない企業になります。戦いがなくなります。
「価値」を提供することは、「モノ」を提供するよりも圧倒的に難易度が高いのです。でも取り組まなければ、高付加価値の価格設定は出来ません。世の中の儲かっている会社は、みんな「価値」を売っています、意地でも「モノ」は売りません。
大手企業は、逆に「モノ」に参入します。
「モノ」は大量生産により原価を下げることで、粗利を確保することができます。「モノ」なので、広く大量に流通させることができます。また、「モノ」であるので、顧客も認識しやすく、売りやすいのです。
手間も多く市場規模の限られる「価値」の市場には参入しません。
まとめておきましょう。
「価値」を売るからこそ、高粗利の価格設定ができるのです。
「価値」を売るからこそ、強い営業もできます。
顧客は、社長や優秀なスタッフではなく、「サービス」を買います(社員は独立できなくなります)。
社員が「モノを売る」のではなく「価値を提供する」ことを目的に考えるようになります。そして、社員は自分たちの事業にプライドを持てるようになります。そして、給与も増えます。
事業の「定義」を見直すこと。事業内容は、「ホームページ製作」ではなく、「ガンガン集客を実現する会社」と。
事業の価値変換が出来ない限り、価格の競争は永遠に続きます。
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