No.131:『社長』は間違っても『人財』なんて言葉を使ってはいけない
「矢田先生、人とは何ですか?」
ある懇親会で、寄ってこられた士業の方からのご質問、哲学的な話を振られているのかと思い、答えるのに困っていると、
「先生のコラムを読ませていただくと、「人」と表現する時と「人材」と表現されることが有ります。」
その方は、矢田のコラムの読者ということで、この使い分けについて、気になっていたとのこと。
ありがたいことです。そして、そこに気付いていただいたことを嬉しく思います。
私は、業務のなかでは、できるだけ『人』と『人材』を使い分ける様にしています。(優秀な人材、などの意図を持って表現する時もありますが)
『人材』という言葉の意味を確認すると、「才能があり。役に立つ人。有能な人物」とあります。
この条件を満たす人を、『人材』と呼ぶことができるのです。
では、「皆さんの会社で、この条件を満たす人が何人いますか?」と聞かれれば、多くの方の答えは、「数人」となることでしょう。
他の人たちは、やはり『人』となります。
ですから、「採用した人、いい人材を採れた」と使い分けることになります。
そして、私が年商10億のために提唱している視点が、下記のものになります。
「人」で回せる仕組み、「人」でしっかり儲かる事業 を目指してください。
「人材」でしか回せない、できない事業では、ダメ。それでは、その事業を拡大できなくなります。
また、多くの人を幸せにもできません。この人とは、多くのスタッフや顧客、取引先、地域を含みます。
「人」で回せて、儲かる事業こそが、事業なのです。
そして、『人材』とその事業の仕組みをつくり、その事業と仕組みが次の『人材』を生むのです。
その上で、「人材」をひとつの『材料』として観る必要があります。
「材料」という視点があるからこそ、その材料を「どう活かしたらいいか」という視点が生まれます。
人材を活かすために、必要な条件が2つあります。
一つ目は、「つくりたいモノ」です。
材料は、何かをつくるときに必要になる素材です。
社長は、自身が描いた事業設計やビジョンを達成するために、必要な『材料』を求めることになります。
その社長が描いたものが、大きく、世に珍しいものであれば、それに見合った『材料』が必要になります。
逆を言ってしまえば、つくりたいモノが小さければ、または、描けなければ、それだけの『材料』は必要ではありません。
自分一人と外注業者を上手に使えば今の世の中十分可能となります。
二つ目は、「適材適所」です。
『材料」には、向く向かないがあります。
それぞれの材料を、上手に組み合わせて使うことで、そのつくりたいモノをつくることができます。
高速道路やビルなどの、構造物をつくるときに、鉄筋コンクリートを使います。
鉄筋コンクリートとは、鉄とコンクリートで出来ています。コンクリートの特性は、「圧縮」にものすごく強いことです。
そのため、高速道路や建物の重量を支えるのが、コンクリートの役目です。
しかし、そのコンクリートは、「引っ張り」にはものすごく弱いのです。10tの圧縮に耐えても、1tの引っ張りで壊れてしまいます。
その引っ張りを担っているのが、「鉄筋」です。鉄筋は、引っ張りやひねりに対して、すごい力を発揮しています。
それぞれが補完し合って初めて、あれだけの強固な構造物ができるのです。
人材にも個性もあれば、適性もあります。
コツコツ研究することに向く人材、新規の企画に向く人材、誰とでもすぐに仲良くなる人材。
また、どんな人材にも、弱いところもあります。
そんな、強いところも弱いところもある人材を使い、自身の大きな構想を作り上げるのです。
圧縮に強い人材に、引っ張りの役を担わせればたちまち崩壊することになります。
人には、向き不向きが絶対にあります。
社長には、自分の描いた構想の完成に向けて、必要な『材料』を揃えていくという視点が必要になります。
そして、その『材料』の「良さ」を活かします。
多くの人の人生や社会に影響を与える社長には、その視点が必要になります。
そして、その視点を持つからこそ、今の『人』の中から「材料」となる『人材』を見つけることができるのです。
その「人材」は、今はすごくおとなしくて、「人」に見えているかもしれません。
でも、その「人材」は、頭のなかで、その業務の改善を絶えず考えています。
その「人材」を引き上げられるかどうかは、社長に「つくりたいモノと求める材料」と「材料を活かす」という視点が有るかどうかです。
私がお手伝いをさせて頂いた企業では、「土木作業員」や「女性パート」の中からも、『材料』が出てきました。
そして、その『材料』は、年商10億に向けての構築に貢献をしています。
その「土木作業員」は、現在、「請負額3億という、創業以来、最高額の工事を仕切っています」
「女性パート」は、1日の半分を現場に入り野菜を洗っています。もう半分で、業務改善やマニュアル作成を行っています。
「人材」や「人」を、『人財』と見てはいけません。
「財」という言葉の意味は、「値打ちのあるもの。有用な物資や金銭」とあります。
人材は、そのままでは何も生み出すことがありません、無価値です。
社長の「描いたモノ」と「適材適所」により、『値打ちのあるもの』となるのです。
社長によって初めて『人財』になるのです。
そして、その『人材』は、「財」のように、飾っておくものでもありません。
世の『人財』という言葉を使うコンサルタントなどの方の論調を確認すると、
「人を大切にするという考えを表した言葉」として、『人財』にしているというものがあります。
そして、「人材とは材料だから、使い捨ての考え方がある」という理由で、人材という表現を避けるように勧めているものもありました。
「人材」は「材料」だから、思いきりその材料が活きる環境で、使うことが必要なのです。
そして、その『人材』と、一緒に厳しい戦いをするのです。
それこそが、『材料』の喜びなのです。
世に貢献できる、自分の能力を余すところなく発揮できる日々にこそ幸せがあります。特に「人材」はそういう生き方を求めます。
その『材料』が、活躍できる場をつくるのが社長の役目です。
それに向かわない会社では、「人材」が「人財」になり、事務所に飾られています。
淡々と毎日「人」の仕事をやっています。
そして、ひどいと「人在」や「人罪」という扱いまでされています。
人材は『人材』であり、その通り活用させてもらう、
それが、社長の責務。
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