No.153:大きく稼ぐはずの営業所がお荷物になる・・・支店、営業所、店舗という拠点展開をするための3大条件

コラム№153

工業系商社T社、経営計画書の大きな方針に〇〇地方の売上拡大があります。
 
3年前、T社長は〇〇地方は拡大の余地が大きいと、T社初の営業所を設けました。
この時には、社員3名で売上2億という規模になっています。
経営計画では、この先3年後には、売上3億2千万円という目標数字が上がっています。
 
そこで、社長に訊かせていただきました。
「社長、〇〇地方の新規開拓はどう進めていますか?」
 
「よく把握はしていませんが、いままで紹介などが、ほとんどです。営業担当は、忙しそうに動いています。」
 
「それでは、この2億という年商が一つの壁になりますね。」


社長として、事業のすべてを設計する必要があります。
 
集客はどうやるのか?、新規の見込客とどう出会うのか?、その仕組みがまずは必要となります。
「フェアに出展する」、「ホームページからの資料請求」、「DM送付後のテレアポ」、
何にしろ、接点が必要です。沢山は必要ありません、自社として、繰り返し使える「これだ!」という集客の仕組みが一つでも有れば十分です。
それにより、営業担当は、初めて『自分の仕事をすること』ができます。
 
そして、その後の流れも設計が必要です。
その見込客との最初の出会いの後、どうするのか?、
フェアで自社のブースに来客がありました。その顧客に何と言って自社のサービスをPRするのか?、
そして、
その後、どうするのか?、
この自社のサービスをどういう言葉で伝えれば、見込客はこちらに興味を持ってくれるのか、
それも設計しておく必要があります。
そして、そのフェアの後、どう訪問につなげるかも設計しておく必要があります。
頂いた名刺に後日電話をしても、「わざわざ来てもらわなくても・・・」と断られてしまいます。
フェアの後、どう訪問に繋げるのか、その必勝パターンがほしいのです。
 
ホームページからの資料請求がありました。そのあと、営業担当がどのようにして訪問するのか、
資料をただ送るのではなく、訪問をしたい。では、電話ORメール、そして、訪問させてもらうための「理由」はどう説明するのか?、
ここでも、設計であり、必勝パターンが必要になります。
 
この接点、すなわち、自社の必勝パターンが必要なのです。
この接点の設計があって初めて、営業担当は自分の仕事ができるのです。
この接点の設計が無ければ、「新規で採用した営業担当はやることがない」ことになります。
また、営業所を新設しても、やはり「やることがない」となります。


そして、その次には、「その見込客に対し、定期的にアプローチする」という仕組みが必要になります。
その一度作った最初の接点から、実際に取引を開始するためのアプローチが必要になります。
どうアプローチし続けるのか?定期訪問、定期DM、メルマガ、イベントへのお誘い、何にしろ、これも決めておく必要があります。
これも設計です。ここでも、必勝パターンが必要となります。
 
また、ここでは、別に『時系列』を支える仕組みが必要になります。
「定期的にアプローチする」、「半年後に再度アプローチする」、「忘れずにタイミングを待つ」、
これを営業担当者任せにすると、当然、忘れる、怠けるという状態になります。忙しいと訪問しなくなります。
また、そこそこ売上が確保できると、安心して動かなくなります。
引き合いがあった案件だけ対応し、それ以上の営業活動をしなくなります。
 
結果、集客した見込客が、実際に取引に発展せずという状態になります。
1回小さな取引があっても、その後それ以上発展せず、いつの間にか消え去っているのです。
そして、ある規模(年商)になると、それ以上の伸びはなく、落ち着く(停滞)ことになります。
 
また、案件を受けた後の仕組みも必要になります。
案件が少ないうちはいいのですが、案件が多くなると、たちまち各案件の進みが遅くなります。
社長や管理者が、気になって担当に確認すると、
「先方からの解答待ちです」・・・・で2か月ホッタラカシ。
「見積もりを依頼されています」・・・・と2週間経過、という状態になっています。
 
その結果、抱えている案件は多いが、売上になってこないという状態になります。
そして、さらに悪いと、既存の顧客への対応まで悪くなり、既存顧客の売上も落ちてきます。
その結果、既存顧客が数年で入れ替わるということが常態化します。
 
営業担当をしっかり動かす、という仕組みが必要なのです。


新規の見込客を開拓する必勝パターン、
時系列で訪問を管理する仕組み、
案件を得た後の見える化と管理の仕組み、
これらをつくり上げる必要があるのです。
 
これらが出来て初めて、営業所をつくることができます。
これらの仕組み無しに、営業所を立ち上げても、期待しただけの成果を得ることはできません。
・新規顧客を開拓できず、営業担当は実はやることがない。
・営業活動は「短期戦」、その時に実にならなかったお客様はホッタラカシ。
・案件の進みが遅い。不具合、お客様からのクレームを報告しない。
という結果が待っています。
また、営業所の社員は、本社の目が届かないだけに、「のんびり」に慣れ切っています。
そこには、本社とは全く異なる、「ゆったりした空気」が漂っています。
 
営業所、支店、店舗など、新しく拠点を設けるためには、条件があります。
この3つがあって初めて、拠点展開という大きく儲ける次の段階に移ることができるのです。
 
その1.その地域で、新規開拓ができること
その2.その拠点で、安定してサービスを量産できること
その3.本部から状況が見え、管理できること
 
在庫が持てる量産型の製造業やネット通販などの事業は、本部で対応や生産が可能であるためこれらの仕組みは必要ありません。(拠点という意味では)
それに対し、「在庫が持てず」、その場で生産されるサービス型の事業では、この3つは絶対に必要になります。
 
この仕組みが出来ていないと、売上を大きく伸ばすはずの拠点が、ただのお荷物になります。
可笑しなことに「本部から仕事を回す」や「管理者が本部からわざわざ出向き、状況をヒアリングしている」という状態になります。


冒頭のT社、これらの仕組みが何も出来ていませんでした。
ある意味、これらの仕組みが無い状態で、それだけの売上を得ていたことは救いです。
戦略やビジネスモデルは良かったのです。
 
やはり、翌期は2億数百万円と微増で落ち着くことになりました。
また、社長自らその地域の顧客を訪問すると、「遅い」や「漏れ」のお叱りを多くいただくことになりました。
社長はその仕組みづくりに取り掛かりました。
その結果、今期の着地予測は2億6千万円とすることが出来ました。
そして、社長は言われます。
「矢田先生、次は□□地方を考えています。」
 
拠点展開に移るためには、その元となる『仕組みで回り、儲かる金型』が必要となります。
その金型さえできれば、その拠点を量産できるようになります。その結果、倍々ゲームで年商を上げることができるのです。
いまは、10%、20%の伸びを喜ぶのではなく、仕組みをつくるときなのです。

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