No.209:5年後、10年後の我社はどんな評判を得たいのか!その逆算で、宣伝広告をガンガン行う。
「矢田先生、100年企業を作りたいのですが。」
事務所にご相談に来られた2代目社長です。
『それはいいですね。』
「そこで先生、教えていただきたいのですが。」
『はい、どうぞ』
「100年企業って、何ですか?(笑)よく100年企業って言いますが、条件みたいなものがあるのでしょうか?」
私もつられて笑ってしまいました。
宣伝広告の目的は、大きく二つあります。
一つは、「売るため」です。
直ぐに売りたい、または、見込客を獲得したい。
自社の商品・サービスを買う可能性のある人に、メッセージを送ります。そして、寄ってきた人に対し、働きかけを行い、購入の意思決定まで導きます。
または、今後の販売に繋げるためにリストをつくります。そして、何かしらコミュニケーションを重ね、関係性の構築と顧客教育を行います。
そして、二つ目は、「認知強化」となります。
ターゲットとしているセグメント内(ある価値観を持つ人、業界など)には、まだ当社の商品やサービスを知らない人がいます。
「ああ、こんな便利なサービスがあるのだ。」と、知ってもらいます。そして、繰り返しその広告に触れることで、その認知を強化していきます。そのセグメントに、刷り込んでいきます。
その刷り込みの結果、その人達の頭の中では、「〇〇と言えば、□□!」という連想が形成されます。脳内の占有率一番を目指します。
この2つが宣伝広告の目的になります。この2つの目的を持って宣伝広告に費用と手間をかけていきます。
残念なことに、多くの企業では、一つ目の「売るため」にしか目的を持っていません。そのため、宣伝広告費は、「集客のための経費」となります。そして、「一人当たりの獲得費用」という指標で測る効果のみになります。
そこでは、どんなセグメントに対し、どんな認知を形成したいのか、という意図が絶対に必要です。そして、そこには、どんな市場で№1になるのかという長期的な展望が必要になります。
宣伝広告とは、「5年後、10年後、自社はどんな評判で市場から評価されたいのか」という長期的な展望からの逆算で、打たれるものなのです。
今日の宣伝広告費の1万円、10万円は、10年後に続いているのです。
今現在の貴重な金と手間という資源を投じて、10年後の資産を形成しているのです。
私たちの頭の中には、すでにいくつもの「連想」が形成されています。
「100人乗っても大丈夫!イナバ物置」
物置の上に沢山の人が乗っているあの映像が浮かびます。
「法人で使用するグループウェアと言えばサイボウズ」
他のグループウェアの商品名が一つも浮かびません。
こんな質問もしてみましょう。
「貴方の住んでいる市で、結婚式場と言えば?3つ挙げてください。」
どこ、どこ、どこと3つ思い付きます。この3つに入らない結婚式場はアウト!となります。
我々が身を置く経済では、「新しいビジネスをどこよりも早く立ち上げ、そして、それをいち早く広げる」という戦いが日々行われています。
我々もこの「連想」を意図して作っていきます。
・あの〇〇風の住宅ステキ!このデザインは□□工務店よね。資料請求しよう。
・工場内での〇〇設備の移動と据え付けが必要になった。設備移動を専門としている□□重機に相談しよう。
・〇〇学校新設の申請を手伝ってくれる行政書士と言えば、□□事務所しかないぞ。実績も断トツに多い。
これこそが商品やサービスの企画となります。
これこそが、自社の戦略であり、事業定義になります。
どんな人に、どのような評価軸で選ばれたいのか。
どのような欲求を持った人に、どのような当社のイメージを持ってほしいのか。
もし、すでにその市場で強力な先行占有者が存在するのなら、少し考える必要があります。真っ向勝負は避けます。違う評価軸で、その大きな市場の一部分から削っていきます。そして、その一部で認知の占有率を高めます。
その市場で、自社のポジションを固めるために、一貫したメッセージを発信し続ける必要があります。
「〇〇風の住宅と言えば□□住宅!」、「〇〇設備の移動と言えば□□重機!」、「〇〇学校の申請といれば□□行政書士事務所!」。
そこにブレはありません。刷り込み!刷り込み!刷り込み!です。
連想が出来上がったとき、それは「ブランド」となります。
この事業定義が無い、または見込客(セグメント)に刺さらないと、広告の費用対効果はすごく悪いものになります。集客はもちろんのこと、刷り込みもできません。
そして、一貫性は無くなり、宣伝広告は場当たり的になります。自ら市場のイメージを崩壊させることになります。
そして、その状態は、組織にも悪い影響を与えます。明確なイメージ(特色)のない会社には、どっちつかずの社員が集まります。そして、内部の仕組みもぼやけたものになります。
特色がある会社、すなわち「〇〇と言えば□□」というメッセージは、その価値観に合致した社員を集めます。集まった彼らの能力も意欲も高くなります。
そして、内部の仕組みもそれに特化したものになっていきます。
5年後、10年後、どういう人達にどのように認知されたいのか。
それを決める必要があります。
5年後、10年後、ある市場で圧倒的な一番の占有率を獲るつもりで、事業を創るのです。
100年企業は、一貫したイメージ持っています。
「〇〇と言えば□□」という認知を積み上げています。その市場の中でポジションを作り、それを守り抜いてきた会社だけが、100年続いているのです。
100年企業や業界のリーディングカンパニーは、成長期にやることをやってきました。
・ある課題や欲求を持った人たちが、本当に喜ぶ商品・サービスを創り上げました。それも、いち早く。
そして、
・ある段階で、宣伝広告費を打ちまくりました。打って打って打ちまくりました。それも、まだ状況は流動的なうちからです。その宣伝広告費は、その当時のその会社の年商からすると「可笑しい」ほどの額です。いち早く認知を広めるためにです。
宣伝広告に大きな投資をしなければ、セグメントに対しイメージを刷り込むことはできません。早く刷り込まないと、他社に負けてしまいます。もっと資本のある大手に奪われる危険性もあります。早くポジションを取って、そして、さらに強固にする。それを恐れずやってきたのです。
彼らは、早くに売れる商品をつくること(市場をみつける)。そして、巨費を投じ刷り込むことをしたのです。
このどちらもが必要です。
多くの企業が、売れる商品を見つけられません。正確には、見つける前に日常を優先してしまっています。同様に、多くの企業が、その見つけた売れる商品に、十分な宣伝広告費をかけないために、他社に追い抜かれることになっています。
100年企業は、次の社長に『資産』を引き継ぎます。
「〇〇と言えば□□!」という資産。
これが、その会社の最も重要な資産となります。
次の社長は、その評判を守ります。そして、より強固なものにするために、宣伝広告を続けます。時代の変化に対応するために、その評判の中で改良を続けます。
そして、その評判は、また次の社長に引き継がれます。
その結果が、100年なのです。
世の100年企業の事業を観ると、どこも非常にシンプルです。解りやすいメッセージ、絞られた分野、数少ない商品。
その自社の成功の理由を忘れてはいけません。
それを忘れて、むやみに異なる「評判」や「イメージ」を発信してはいけません。メッセージである宣伝広告や商品に一貫性がなくなれば、たちまち、そのメッセージの受け手である市場やセグメントは、迷うことになります。
そして、その企業や商品の存在を忘れることになります。
世の中の変化が激しいからこそ、変わらない評判が価値を持ちます。情報が溢れる社会だからこそ変わらないポジショニングが力を発揮するのです。
宣伝広告を社員や業者に任せすぎると、メッセージが変わってしまうことがあります。社員は、捨てることができません。そのため「万人受け」になびき、安くしたり、取り扱い品目を増やそうとしたりします。また、広告制作会社は、見栄えの良さを重視したデザインやコピーに作り変えてくれます。
その結果、メッセージはぼやけることになります。
このメッセージの一貫性の重要性が解っている社長は、宣伝広告物を最後まで手離すことはありません。どんなに会社の規模が大きくなっても、すべての広告物に目を通し、自ら赤ペンを入れます。他の多くの業務を社員や管理者に移管しても、宣伝広告にはしっかり口を出します。自分が社長を退く時まで続けます。
事務所にご相談に来られた冒頭の2代目社長の言葉です。
「私の会社には、先代から引き継いだ一貫したメッセージや評判のようなものは、ありません。しかし、その何もないことが、今の我社の最大の資産かもしれません。お陰で、私の代でいくらでも作ることができます。」
変化すべきこと、変化してはいけないこと、その見極めが社長には求められます。
我社の5年後、10年後の評判を、社長はいまこそ創らなければなりません。
その逆算で今日があります。
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