No.211:社員の会社や給与制度に対する不満、社内の人間関係が悪くなる・・・それらが起きる原因と社長がとるべき対策とは?

コラム№211

社員伝いで、休憩時間に他の社員が大声で会社への不満を漏らしているのを聞きました。
 
定期面談で、女性社員からある社員が嫌だから、部署を替えてほしいとの願いが上がってきました。
 
社長の耳に入れておきたいという前置きがあり、社内不倫の発覚を報告されました。
 
「先生、このような問題にどのように対処すれば良いでしょうか。」
このような相談は多いものです。
どの会社の社長も、内容が内容だけに、本当に悩まれています。
 
私は、根本的な説明をさせていただく前に、この言葉を使うようにしています。
「面倒くさいですね。」


仕組みづくりをすすめる、組織化をすすめる、その時には、必ず一緒に作り上げるべきものがあります。
それは、『チェック機能』です。
 
年商数億、社員十数名の規模までは、良くも悪くも社長が現場に近いため、「生」の情報を得ることが出来ました。
どのような案件を抱えているか、その難易度も利益率も。自社のデザインの出来はどうなのか。お客様からの要望で多いものは何か。どの社員が使えるのか、どの社員が不安定か。
 
年商10億に進む時に、「分業」と「仕組化」に取り掛かることになります。
営業は営業部、開発は開発部、経理総務は管理部にという横の分業と、作業層と判断層、そして、課長や部長という具合に縦の分業を進めます。
その分業により、会社として高い専門性と効率を得ることができます。
この分業を支えるための仕組みを作ります。すべての案件の流れを見えるようにし、業務の基準をつくります。この仕組みがあって初めて、これらの分業を機能させることができます。
 
この分業と仕組みは、多くのメリットを会社に与えてくれる一方で、大きな危険も持つことになります。その一つが、「情報が社長に届かなくなる」というものです。
縦の分業により階層ができます。そのため、現場情報や顧客の様子がわからなくなります。また、横の分業により各業務は分断されるため、一連で見え難くなります。そして、社内には業務を横断的に見る立場の社員は、経営幹部以外いなくなります。
 
そのため、「見え難くなる」のです。
今どんな案件が多いのか。利益率はどうなのか。顧客は本当に満足しているのか。若手社員は育っているのか。本当に、見え難くなります。
 
そのため、『チェック』の仕組みを同時に仕込んでいくことになります。
まずは、数字に機能を持たせます。数字は、我々で言う健康診断の値と同じです。生活習慣や体に何か変化があると、すぐに数字は教えてくれます。
年商10億に進む時に、チェック機能としての数字の捉え方が必要になります。それは、税務会計とは全く異なります。数字を「傾向」で捉えることが必要です。毎年の変化が解るように、数字を組み直すことが必要になります。
社員の生産性、儲けに対する在庫の割合や売掛や買掛の関係など。
 
また、定期的にお客様と直接話す機会を設けることも重要です。
「当社のサービスで不満なところは何かありますか?」、「どんなことでお困りですか?」と、直接聞いた時だけお客様は口を開いてくれます。
これを、アンケート用紙で代用することはできません。また、社員に任せることも、営業担当の報告を聞いてもダメです。それでは、絶対にお客様を「感じる」ことはできません。
 
また、社長は、工場や店舗を直接見に行きます。
現場に行けば、必ず、「乱れ」を発見することができます。
蛍光灯のチカチカが放置されている、スタッフの制服がよれよれである、テーブルの下の汚れ、営業担当の机の上に平済みされたファイル、どれもがシグナルです。景色に「色付け」されて、目に入ってきます。
 
案件の流れや品質について、何か異変が起きればアラームが鳴る様に、仕組みを設けます。見積もりの提出が遅いものがある、外注の仕事の出来が悪い、それらは、その個人で完結できない仕組みがあるので、必ず顕在化されます。
 
すべての仕組みに対し、チェック機能を埋め込んでいきます。
また、実際に「感じる」ことを実施します。忘れず定期実施するための仕組みもあります。
それらの仕組みが、社長の狙い通りの機能を発揮しているかどうかが解ります。また、改善の余地のある仕組みを発見することができます。そして、お客様が満足し、自社が適正に儲けていることに自信が持てます。
 
このチェック機能が無いと、怖いのです。
仕組みも組織も、何をしでかすか解らないのです。また、時代遅れになる恐れもあります。
チェック機能を持っていないと、夜もおちおち寝られなくなります。そして、知らないうちに、仕組みは狙いとは異なる結果を生み続けることになります。
社長が良しとしない対応を、スタッフがお客様にし続けています。
棚卸すると在庫が増えていることに驚きます。なんでもかんでも外注化し、粗利率が悪くなっています。優秀な若手社員が会社を去っています。そして、お客様は購入先を他社に替えています。それを、営業担当は、「景気」や「顧客先の失注」を理由に上げてきます。
 
社内の書類は増える一方です。また、会議もその参加者も増えています。
内部経費は増え、粗利率は悪くなり、鈍い業績の会社になっています。
 
社長の想いや考えを実現し、適正に機能させるための、システムが必要になります。人が持つクリエイティヴやホスピタリティという素晴らしい力を忌憚なく発揮してもらうための仕組みが必要です。また、人の忘れる、怠ける、ばらつくという弱い特性を補う仕組みをつくります。


社員の会社や制度に対する不満、社内の人間関係の良し悪し、そして、色恋沙汰。
これらが、無くなることはありません。
どんな規模の会社、どんなに立派な会社にも、あります。民間だけではなく、公の機関でもあります。
人間社会で、これらの問題が無くなることはありません。
 
多くの社長は、これを解っています。今回、その問題に対処したところで、また、次が起きることは目に見えています。だから、私の「面倒くさいですね。」の言葉に、賛同の弱い笑みを顔に浮かべます。
 
給与制度や就業規則が、法的に問題があれば以ての外ですが、一様に整備されれば完成となります。世間の同業同規模と比べ、少し上であれば問題ありません。
その場合でも社長のその想いに対し、考えを巡らせてくれる社員はごくわずかです。
隣の芝は青く見えるのが人間です。そして、ニュースからは、「この夏の賞与の平均は90万円」とびっくりした数字が流れてきます。大手を基準にしたそれにより、世の多くの中小企業の社員に、「私(夫)の勤める会社は、給与が低い」という刷り込みをしてくれています。
 
無くならないのです。これらの問題が、自社からも世の中からも無くなることなどないのです。
根本的な問題はそこにありません。その対応のために、どんなに制度化し、ルール化しても、何も解決することはありません。
ルール化すればしただけ、「こういう場合は、どうなりますか?」と質問が寄せられることになります。そして、また、文章が増えることになります。
そして、「ルールだからやってはいけない(書いて無ければやってよい)」と判断する幼稚な風土が出来上がるのです。
そこから、管理、罰則の強化という発想に繋がります。そして、また、社長が仲裁の場に引っ張り出されることになります。
 
 
根本的な問題は、「会社が小さすぎる」ことにあります。
小さすぎるから、社長にそれが聞こえてきてしまうのです。社員「個々」からも、社長が近すぎるのです。お互いに見えすぎるのです。
 
大手企業でも、手当に対する不満も人間関係の不満も、間違いなくあります。
しかし、その規模になると、そのような話は社長には上がってこなくなります。
各部門の管理者や一部の良識ある社員が、なんとかしているのです。ある時は諭し、ある時は説教し、ある時はその場の雰囲気で落ち着かせているのです。
 
また、人数が少ないと人間関係は「濃く」なります。
大手では、一部門に数十人います。そして、毎年ローテーションで誰かが入れ替わっていきます。自分も我慢すれば3年以内には、移動です。
小さすぎるので、人間関係も濃くなってしまっているのです。
毎日同じ顔触れで、狭い部屋にいれば人間関係は悪くなります。また、ローテーションもなく、この先も上下関係が変わらないと思えば、嫌になります。
 
社長が悪いのではありません。その社員が悪いわけでもありません。
小さいことが悪いのです。
 
人間社会とは、グレーです。白黒はっきりつけられるものは何一つありません。
そのグレーの間を、上手にバランスをとっていくことが大事です。
そして、その間に早く事業を大きくするのです。そんな気持ちが起きないぐらいのスピードで成長するのです。
そして、どんどん人数を増やし、組織の分業を機能させるのです。
 
その時には、多くの問題は、社長の耳に入らなくなっています。社長という役目に見合ったもののみが上がってきます。有難いことに社内の誰かが、それらに対応をしてくれています。
 
 
社長は、覚えなければなりません。
人間というものの理解、それを上手に使うことを。
 
仕組みで効率を高めるほど、人間のやる気や創造性の発揮の機会を奪うことになります。その対策が必要になります。
システムを導入すれば、人の繋がりは減ります。人間的な繋がりや、人と人との相乗効果は生まれ難くなります。その対策が必要になります。
 
仕組化する目的は、あくまでも『効果性』です。社員が創造性をより発揮し、高付加価値のサービスを生み出し、お客様にホスピタリティを持って提供することにあります。
人の素晴らしいクリエイティヴやホスピタリティを支えるのが仕組みです。
人のためのシステム、人のための仕組みです。そして、お客様のための人であり、組織です。
 
この世は、どこまで言っても「人間」社会です。
曖昧で、気まぐれです。それを嘆くのではなく、使うのです。
 
その曖昧で気まぐれさを、如何に合理的に使うか。そして、提供するか。その追求なのです。それを我々は覚えなければなりません。
曖昧で気まぐれというアナログを前提に、年商10億、20億に向けてロジックに仕組みと組織をつくりあげるのです。
 
早く大きくしましょう。早く次のステージに進みましょう。

●コラムの更新をお知らせします!
 下記よりメールアドレスをご登録頂くと、更新時にご案内をさせていただきます。メルマガ限定の矢田のショートコラムもあります。
 
メールマガジンへご登録いただいた方へ、当社で開催しているセミナーの冒頭部分(約12分)をまとめたセミナー動画をプレゼント中!
ぜひご登録ください。(解除は随時可能です) 

 

メールアドレス(必須)


名前(必須)

 

 

 
メールアドレス(必須)


名前(必須)

 

 

お問い合わせ

 営業時間/9:00-17:00
(土日祝除く)