No.244:なぜ、ほとんどのベンチャー企業が、消えていくのか。その理由は、事業にあるのではなく、〇〇にあります。
人と人のたわいもない話の中から、一つのアイディアが生まれます。そして、「その場やその時」の力もあり、事業を起こそうということになります。
そのようにして、多くの新たなビジネスが生まれます。いま世の中にあるすべてのサービス、すべてのビジネスは、誰かのアイディアが具現したものです。いまの大企業も、社歴百年の会社も、昔はベンチャーだったのです。
その一方で、多くの企業が、その数年以内に無くなります。その理由は、実は「外部」にはありません。その理由は、「内部」にあります。
ベンチャー企業の多くが無くなる理由は、内部分裂にあります。その内部分裂が起きる理由は大きく二つあります。
一つは、相性です。人と人の相性の問題があります。
人間の個性は、大きく分けると「攻め型」と「守り型」に分けられます。その日本人の割合は、攻め35%と守り65%です。
攻め型と攻め型の二人は、似たもの同士となります。そのため、出会ってすぐに意気投合します。波長が合います。お互いに、ガハハと笑って盛り上がります。そして、一緒にやろう!やろう!となります。
相性が良いので、立ち上げもすごい勢いがあります。二人とも、アイディアマンであり、行動力があります。しかし、時間が経つと問題が起きてきます。ルーチン的な作業や、マニュアルなどの標準化、経費処理など、内部業務が後手になってきます。二人とも、細かいことや繰り返すことが苦手なのです。
そして、お互いの嫌なところも目に付いてきます。そして、「やっぱり、やめよう」と言って、その事業は終わりを迎えます。または、一人が引き取る形で、もう一人が出ていきます。この時も、お互いサバサバしています。(守り型と守り型では、そのまま不仲の状態でダラダラ続くことが多い。)
よく似ているからこそ、相性が良い。だから、勢いよくスタートが切れる。その一方で、相性が良い分、補完関係にはならないのです。
事業には、攻めの要素も守りの要素も必要です。攻めと攻めでは、事業を続けるという面では、相性が悪いのです。続けるためには、攻め型の自分には、守り型の相手が必要になります。守り型の自分には、攻め型の存在が助かるのです。其々の持つ個性のままに、自然と役割分担が進むことになります。
世の中では、相性が良くて、沢山の新しい事業が起きています。そして、相性が「悪すぎ」て、沢山の会社が分裂をしています。
この個性という相性の壁を乗り越えると、次の分裂の試練が待っています。それは、「考え」の違いです。
お互いに異なる人間です。其々の歩んだ人生、其々の経験、価値観、そして、一つの言葉の意味でも持っているものは、違うのです。ですから、絶対に「合う」ことはありません。自然に合うことは無いのです。
これを聞けば、誰もが、「それはその通りだ」と思います。異を唱える人はいません。しかし、実際には、どうでしょうか。異なることを前提に、お互いの考え方を、すり合わせるということをしないのです。
多くのベンチャー企業では、そのための行動をとりません。事業の向かう先をすり合わせていません。規模感やそのスピード感のイメージを、書面にしていません。宣伝広告の使い方、サービスの品質レベルなど、それらを方針書にしていません。
そのため、バラバラになっていきます。正確に表現すれば、もともと「バラバラ」だったのです。「創業の熱」や「お互いの新鮮さ」で、それを楽しめていただけなのです。しかし、いざ事業を始めると、困難だらけです。すべてにトライ&エラーです。そして、お金はどんどん無くなっていきます。ズレを試されることばかりです。個性の相性が良くても、乗り越えられるものではないのです。
事業では、「誰かの自己犠牲」が必要であるということは、頭では解っています。しかし、我慢ができなくなります。相手に対する不信感や不満だらけになります。相手の一つひとつの言動が気に障る様になります。そして、コミュニケーションを避けるようになります。
いよいよ崩壊の時を迎えます。
組織は、色々な異なる人間が力を合わせることで、すごい力を得ることができます。そのためには、向かうところを一緒にする必要があります。また、方針や価値観という考え方をすり合わせ、会社のものとして昇華することが必要です。それにより、より力を得られます。分業が機能します。相乗効果が生まれます。
しかし、多くのベンチャー企業は、それをしないために、崩壊をしていきます。何もしなければ、崩壊は約束されています。うまくいくのは、本当にすごい確率です。多くのベンチャーが万に一つの「偶然」を信じ、何もしないで崩壊に突き進んでいきます。
スタート時の、人と人の相性でなんとかなる時間は、一瞬で消化されます。その後を支えるのは、合意された方向と考え方となります。それが有るからこそ、役割分担も機能するのです。役員メンバー内も部課も、その他のメンバーを信じ、自分の受け持ちに邁進できるのです。
今日も、多くの「素晴らしい事業のアイディアを持ったベンチャー企業」が設立されています。その一方で、多くの「昔のベンチャー企業」が崩壊をしていっています。
その崩壊は、事業のアイディアの良し悪しが原因ではありません。事業においては、最初から「良いアイディア」などありません。やってみて修正していくうちに、磨かれ、モノになっていくのです。
その崩壊は、そのプロセスで起きています。組織で事業を行うというプロセスの良し悪しの問題なのです。
ほとんどのベンチャーが「組織のプロセス」で崩壊をしていっているのです。
事業アイディアが良くても、その組織のプロセスが悪ければ、その事業が日の目を見ることはありません。大きくなる可能性は限りなくゼロに近いのです。逆に、アイディアはいまいちでも、そのプロセスが良ければ、その可能性は高くなります。
多くのベンチャーには、組織としてのプロセスが欠落しています。
企業同士の協業や、社内の新規事業立ち上げでも、プロセスを起因とする崩壊だらけです。
父と子、身内での経営でも、プロセスの問題なのです。
向かう先、考え方の共有無しに、どんな相手とも協業は成り立つはずがないのです。組織での活動は、あり得ないのです。
会社とはプロセスそのものです。プロセスこそが組織であり、全てなのです。そのプロセスこそが、事業を成長させるのです。
プロセスを築く力が無い社長には、どんなアイディアも、どんな相性のよい相手も、どんな優秀な社員も、宝の持ち腐れになります。
逆に、プロセスを構築する力を得た時には、新規事業も立ち上げることができます。どんな事業でも大きくすることができます。別の会社の社長になったとしても、経営ができます。そこそこの能力の社員、ある分野だけが強いスペシャリストを使い、大きな成果を生むことができます。
自分以外の人と協業する、自分以外の人に動いてもらい成果を出すプロフェッショナルとしての自覚が必要です。それが社長です。年商10億を目指すということは、その能力の獲得をすることです。社長自身の興味の対象を、事業だけではなく、そのプロセスにも拡げなければならない時なのです。
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