No.254:製造部や施工部が、営業活動をガツガツやることは絶対にありません。その特性を上手に使って、成果を出すことを考えてください。

№254:製造部や施工部が、営業活動をガツガツやることは絶対にありません。その特性を上手に使って、成果を出すことを考えてください。

建設業N社長は、施工部の課長を連れて大手企業A社を訪問しました。
N社長自ら飛び込み営業をし、部長クラスとの面談に繋げることに成功しました。その面談での課長の態度に、怒れてしまいます。
 
「彼は、お客様の前で、ネガティブな発言ばかりするのです。今後のためには、少し大きいことを言うことも必要なのです。」
 
施工部の課長は、期待されるだけの品質と納期が達成できるのかを心配してのことでしょう。それに対し、N社長は、何としても突破口を得たいのです。
 
「先生、やっぱり営業マニュアルをつくり、徹底的に教える必要がありますかね?」


会社とは、仕組みの塊です。会社のすべてが仕組みであると言っても過言ではありません。
 
仕組みは大きな恩恵を我々に与えてくれます。
効率を高める、ミスを減らす、いちいち考えなくてよい、体が楽(らく)など。仕組みにより、「人をある行動に導くこと」をしているのです。
 
会社の至る所に仕組みを整備することで、全体としての統制を得ることができます。また、意図する方向に、作り変えることもできます。
 
壁紙の色:そこで働く人やお客様の気分を、沈めたり活動的にしたりすることができます。
役割分担:その業務を専門的に担ってもらうことで、その人や部門は、高い効率や専門性を得ることができます。
給与制度:会社として推奨すべき行動や成果を優遇することで、人の行動や思考をそちらに仕向けます。逆もあります。
人の割合:人の個性(攻め・守り)、男女比、年齢構成、雇用体系の割合をいじることにより、その場の雰囲気や特性などをコントロールします。
 
これらは、すべて仕組みなのです。会社のすべてに何かしらの意図があります。
社長は、その意図の実現のために、その仕組みを整備しているのです。


N社長に、進言しました。
「まずは、営業部と施工部を分けましょう。」
 
現在は、施工部が、営業活動も行っています。お客様から案件の引き合いがあると、施工部が打ち合わせをします。ホームページからの問い合わせ対応も、途切れた既存顧客のフォローも、施工部が行うことになっています。
 
この状態で起きることを予測することができます。
・施工が忙しくなると、営業活動がストップします。案件が薄くなると、営業活動を再開します。
その結果、「売上に波ができる」、そして、「売上は伸びない」という状態になります。そして、仕事の薄い時に、焦って安い値段で受注してきます。その安い値段が、その後の顧客のなかの基準になります。
 
これが、仕組みの効果です。その仕組みに導かれ、施工担当者の動きがその通りになっているのです。「技術的な営業ができる」というメリットはあるものの、「営業活動をセーブ(抑制)する」というマイナスな面は、必ず残るのです。
 
営業活動を、施工担当者に『やれ!もっとお客様をまわれ!』、『現場に居る時に、隣の現場も行くように』と言っても、やるわけがありません。案件を増やせば、自分達の首を絞めることになります。また、品質や納期を守れるかどうか心配です。技術屋としては、優先すべきはそれなのです。
 
施工部の課長が、お客様の前でも「ネガティブなこと」を言うのは、その理由です。この本能に近い心情を、マニュアルなどで手法を教えることぐらいで、変えることはできないのです。
 
やることは、「営業と施工を担う人を分けること」となります。営業部と施工部を分け、役割を明確にします。
 
営業部には、「新規顧客を〇件獲得すること」、「既存顧客からの受注高を〇億円確保すること」という、少し頑張らなければならない「売ること」の目標を与えます。
 
施工部には、「利益率〇%、粗利高〇億を達成すること」、「省人化の取組みを行うこと」という、コスト・納期・品質という「つくること」の目標を与えます。
 
これにより、会社を次の状況に導くことができます。
「営業部は、売ることの目標を達成するために、頑張ります。」
「施工部は、営業が取ってきた仕事をヒイヒイいいながら、頑張ります。」
この状態がつくれて初めて、会社は、大きくなっていきます。売らないと大きくなりません。追い込まれないと生産能力は高まりません。
これが正しい姿なのです。社長の意図が実現されていきます。
 
これは、マニュアルでやり方や考え方を教えても変わりません。「売れば売るほど、自分の首を絞める」という状況に変わりはないのです。
その取組みを強くすればするほど、逆に生産性を落とすことになります。「営業するフリ」をするのです。営業日報を大げさに書くようになります。営業外出が増えるようになります。
 
これは彼らが悪いわけではありません。そのように、仕組みで誘導をしているのです。


営業部と施工部を分けた後には、集客部をつくることになります。
その集客部には次のような目標を与えます。「ホームページからの問い合わせを、月に〇件ほしい。」、「年2回のフェアに参加する。新規のアポイントを〇件とる」。
 
集客部は、この目標を達成するために、頑張ります。営業部は、それにヒイヒイ言いながら対応します。そして、施工部がヒイヒイ言いながら納めます。
そして、その状態を脱するために、各部は仕組みを作り変えていきます。本気で業務改善を考えるようになります。その業務改善のテーマを会社全体のテーマにして、一緒に取り組んでいきます。
 
集客業務を営業部に兼任させれば、セーブ(抑制)することをします。集客すればするほど、自分たちの首を絞めることになるからです。
 
ここでも、分業という仕組みを活かすのです。その分業が機能し始めると、次の問題が起きます。
・各部門が自分たちの権利を強く主張するようになります。
・他の部門の業務に対し、無関心になります。
分業が、「分断」になってしまいます。
 
そうならないように、また、いくつかの仕組みを仕掛けることをします。
その中心となるものが、事業設計書となります。
事業設計書が、この分断にどう働くのかは、過去のコラムの通りです。
 
 
会社は、すべてが仕組みです。
仕組みで、すべてを動かすのです。仕組みで人の心を導くのです。
その使い方を覚えれば覚えるほど、より多くの人を動かし、大きなことができます。
 
だからこそ、社長には、『徳』が求められるのです。
志、正義、品格、それらを持つ人が、仕組みを使えば、偉人になります。多くの人を幸せにします。
我欲、悪、卑劣な人が仕組みを使えば、悪人になります。多くの人が不幸になります。
 
仕組みは、皆様のような方に使われる日を待っています。

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