No.274:職人社長は、やらなければならないと解っていても、やらない。その根本的な理由とは?

№274:職人社長は、やらなければならないと解っていても、やらない。その根本的な理由とは?

K社は、年商3億の販促支援の会社です。
属人的な業務を変えたいということで、コンサルティングの導入を決めました。
 
コンサルティング3回目、矢田は、K社長に厳しいことを言わなければなりません。
「社長、やることをやらないと何も変わりませんよ。」
 
K社長は、申し訳なさそうにしています。
「すみません、やらなければならないとは解っているのですが。」
これこそが職人社長の最大の特徴であり、年商数億円で停滞している原因です。
 
あれから3年が経ちました、K社は年商12億円になっています。経営者仲間からは「K社長は、早い!」との評判を得ています。


経営の成果は、次の2つで決まります。
一つは、「やると決めたことが、当たっていること」。
そして、もう一つは、「その決めたことを、実行していること」。
 
根本的に本当に重要なことを選ばなければ、成果には繋がりません。それは、どんな人にも当てはまります。
 
そして、その決めたことを、一つひとつ実行していきます。それは、いままでの慣れ親しんできた自分の行動を、置き替えることを意味します。意識してその行動を繰り返すことで、無意識に出来るようになります。習慣を置き替えるには、苦労が伴います。
 
「何が自分を飛躍させるのかを探し行動し続ける」、そして、「自分を変えるために継続的に行動が出来る」、そのような人だけが、人生から大きな成果を得ることになります。
 
 
当社は、「年商数億円の社長」に、この2つでお手伝いをしています。
年商10億円のための経営の考え方を提供しています。そして、年商10億円に向けた行動の継続の支援をしています。
 
年商数億円規模の経営をしてきた社長にとって、この道程は楽なものではありません。年商10億円の経営の考え方は、年商数億円の職人社長時代のそれとは全く異なるのです。一部は受け入れ難いものもあります。感動サービス、社員教育、クリエイティヴなど、いままで信じてきたものを壊さなければなりません。
 
そして、実際に、翌日から実行を迫られます。当然、すぐに出来るはずはありません。頭で解ったとしても、実際にできることはないのです。また、会社は今も回っています。社内の抵抗も付き物です。それも、実行のための手順と要所を知ることで、確実に進めることができます。
 
会社を変えるということは、「知って決めて、実行し定着させる」、その繰り返しなのです。このサイクルを、会社として獲得しなければなりません。しかし、実際には、会社どころか、その社長自身でさえもができていないのです。


職人社長は、次の特徴を持っています。
「やらなければならないと解っていても、やらない」。
 
冒頭の販促支援業を営むK社長も、その典型でした。朝起きると、その日使う見積もりを作成します。社員への指示は、口頭が基本です。その結果、何も積み上がっていませんでした。
 
矢田は、進捗を確認させていただきます。
「前回つくると言っていた営業時に使うヒアリングシートは作成されましたか?」
K社長は、バツが悪そうに答えます。
「すみません。出来ていません。」
私は、少し意地悪にお聞きします。
「出来ていないのか、それとも、手を付けていないのかどちらですか?」
 
ヒアリングシートは、非常に有効な仕組みです。
そのシートには、顧客に聞き取りしなければならない項目がすべて揃っています。営業担当は、お客様を訪問する際に、そのシートを持っていきます。そのシートのお陰で、漏れが無くなります。また、ヒアリングの流れの基本ができます。そして、熟練しかできないレベルの質問など自社のノウハウも織り込まれています。
 
今後も漏れが起きた時には、項目を追加していきます。そのシートに改良を積み上げることができます。そして、そのシートを使えば、新人を短期で戦力化することもできます。
 
年商数億の企業には、このヒアリングシートがありません。これだけ、効率を高め、営業の成果を約束されているものでもつくらないのです。
そのくせ、その社長は「現場を離れられない」と言っています。そして、「社員が育たない」とまで言ってしまっています。
 
営業ではヒアリングシート、工事では現場調査シート、システムでは仕様確認シート。そのシート一つで、格段に良くなることは解っています。
・・・でも、つくらないのです。
 
K社長も、ヒアリングシートの効果には納得をしていました。「これは便利ですね。つくってみます。」しかし、1か月経っても作っていません。これが職人社長なのです。
 
多くの職人社長が、仕組みの重要性は解っています。そして、仕組みを作らないと自社はこれ以上先には行けないことも解っています。そして、会社を大きくしたいとも思っています。しかし、やりません。
 
 
ではなぜしないのか?
その理由の1つは、『実際には体験したことがない』からです。
仕組みで、業務を回すことは、快感です。社員が自分達で案件をこなしています。
そして、問題があると改善をします。現場で社長がやることはありません。怒れることも滅多にありません。自分がいない間も、会社は成長しています。その結果、売上げも儲けも大きくなります。そして、社員も楽しそうに働いています。
 
この状態は、快感です。この状態になれば、なぜ過去にそんなやり方をやって来たのか、解らなくなります。この快感を知った今、もう昔に戻ることはできません。戻ることもありません。
 
この快感を知らないから、その「不効率」な状態を続けられるのです。ウォシュレットを知らない状態なのです。
 
そして、もう一つが、『それが習慣になっていない』からです。「仕組みにする」という習慣がありません。会社の方針は、口頭で社員に伝えてきました。ミスがあると社員を正していました。仕組化するということは、「紙にまとめてから口頭で説明する」となります。
 
この習慣に変えることが大変なのです。習慣にするためには、数か月は意識して継続する必要があります。それが定着する前に、多くの人が止めてしまいます。僅か数日しかもちません。
 
そして、ヒアリングシートをつくらず、朝から案件の見積書をつくっているのです。そして、変わらず「現場を離れられない」と漏らすのです。


私は、K社長の習慣を変える手伝いを、少しだけさせていただきました。
コンサルティングの終了時に、やることとその期限を再度確認しました。そして、数日以内に手をつけ第一案を矢田にメールで送ることの約束を頂きます。私の存在が、社長の強制力となります。
 
これにより、K社長の仕組化は、急速に進むことになりました。この体験により、K社長は、「どうやったら自分が怠けないか」を、習得することになります。
 
いままでの自分の習慣は、怠け心に負けるようなものでした。それが、すぐに手を付け終わらせるという習慣に置き替わったのです。
ここから、K社の変革が始まりました。K社長は、自分のそれを社員にも使っていったのです。私がやったことを、社員にやっていきます。社長自身が、社員の強制力となります。また、社員同士でも強制力を働かせます。
 
ここにこそ、コツがあります。
社員を動かすコツを覚えたことで、すべてのことがすごいスピードで実現していきます。決めたことが、数日のうちに展開されていきます。これはまさに快感です。
 
その結果、3年後に年商12億円になっています。今も快進撃を続けています。経営者団体の中では、「あの社長は、早い」と有名です。それは、イケイケという薄っぺらいものとは違います。K社長は、自分の技として会社を変えることができるのです。
 
 
社長は、自分の習慣を置き換えるというスキルを身に付ける必要があります。
 
残念なことに、世の多くの社長が、勉強する習慣はあっても、学んだことを自分の習慣とすることが下手なのです。
当然、社長自身がそのスキルを持っていないために、それを社員や組織全体に使うことはできません。その結果、会社は停滞しています。
 
社長がそれを習得した時が、会社の飛躍の始まりになります。すべてを仕組みで回せるようになります。その状態は、快感です。
 
社長にとっても、社員にとっても快感なのです。
 
年商10億に進みましょう。

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