No.298:変革には、明確な順番がある。間違っても組織に向かってはいけない。事例:観光関係サービス業T社

№298:変革には、明確な順番がある。間違っても組織に向かってはいけない。事例:観光関係サービス業T社

T社は、観光関係のサービスを展開しています。年商6億円(粗利率は30%)ありながらも、典型的な職人社長の会社です。「名ばかり管理者、指示待ち社員ばかり」とT社長は嘆いています。
 
12月初旬、相談に来られたT社長は言いました。
「今年は、過去最高益を達成しました。しかし、これが限界です。これ以上は大きくなりません。」
 
コンサルティングを開始してすぐに、市場が悪くなってきました。
この4月、売上げは遂にゼロになりました。
 
「しかし、社員のやる気は過去最高なのです。」T社長は、この期間に変革を遂げようとしています。


年商数億から年商10億への変革で、取り組むべきことは決まっています。そして、その順番も明確です。この順番こそが変革の要所と言えます。
 
事業:年商10億円になるビジネスの条件をそろえる。
多くの会社が「社長」しかできないビジネスをしています。クリエイティヴがあるために社員では売れない、出来ないビジネスになっています。また、その手間と単価が見合っていません。そのため、忙しい割に儲かっていません。
 
仕組み:誰がやっても、同じ結果が出るように仕組化する。
ノウハウや情報が、個人の頭の中にあります。そのため、誰か休むと混乱します。誰か辞めると、自社のノウハウが無くなります。そして、仕組みが無いために、人が育つのに時間がかかります。仕組みが無いために、一つひとつの改善が積み上がっていきません。
 
組織:仕組みを改善し続ける組織をつくる。
営業部は営業に関する仕組みを作り変えます。製造部は、製造に関する仕組みを改善します。それが組織です。その組織が無いために、すべての対策が後手になります。売上げが少し増えると、すぐに問題が表出します。その問題を解決するために頭を使っているのは社長だけという状態です。
 
この順番が大切です。すべての変革は、この順番でなされます。過去に、例外は一つもありません。
 
 
世の数億企業は、この逆をやっています。その結果、その頑張りの割に成果がでないのです。
 
最初に「組織をつくろう」とします。それらは、具体的には次のような施策になります。成果がでないために、これらの取組みに、社長も社員も疲弊していきます。
 
・社員教育:社長による理念教育、外部講師による研修、その一時は活気づいても継続はしません。必要なのは、訓練なのです。訓練をするためには、その基となる仕組みが必要です。その仕組みが無いのです。
 
そして、その仕組みは、「効果的な戦略」があってこそ本領を発揮します。年商数億円の戦略が無ければ、仕組みが整備されていても、結果はでません。
 
・新卒採用をしても、育つのに時間がかかります。仕組みも訓練体系も無いからです。そして、生産性の低い事業モデルのため、給与を上げることもできません。新卒採用のコストも育つまでの時間も、大きな負担になります。本人も将来に希望が持てないために、数年で去っていきます。
 
・右腕の獲得に力を入れても、それだけの人材は採用できません。本当に能力の高い人は、仕組みの無い会社であることを見抜き、近寄ってきません。また、採用できたとしても、やれることがありません。事業も業務も属人的なのです。最初の数か月はいろいろ社長に提案してくれますが、1年後にはいなくなっています。
 
 
事業ができていなければ、これらの取組みの多くは無駄になります。また、仕組みがなければ、社員を活躍させることもできません。優秀な人を受ける器がないのです。
 
事業を、まずは年商10億のそれに見合ったものにします。そして、それに合わせて、仕組みを整備します。その仕組みをつくる過程で、意図して組織をつくっていきます。
 
事業、仕組み、組織です。この順番です。


冒頭のT社も、いままでに多くのことに取り組んできました。T社長曰く、「世の中で良いと言われることはすべてやってきました」。
 
社員は、新卒から採用した者ばかりです。幹部のヘッドハンティングを行いました(すでにいない)。経営者の会に入り、経営計画書を作成しました。組織の閉塞感を打破するために、組織風土改革のコンサルタントも入れました。
 
その結果の停滞です。過去最高益を出しての、「この疲れよう」です。
T社長は言われました。「何が悪かったのでしょうか?」
 
1月、コンサルティングが始まりました。
T社長はさかんに気にします。「社員を、どこから巻き込めばよいのでしょうか。」
私は、答えます。「このプロセスに、社員が関わることはありませんよ。」
 
T社長も、世の中から洗脳を受けています。『会社を大きく変えるためには、社員をどうこうする必要がある』という間違いを刷り込まれています。
 
最初に、取り掛かるのは事業の再構築です。
事業の棚卸をすると、4つの事業があることが解りました。一見すると、一つの「観光関連のサービス」ですが、4種類の顧客がいるために、全く異なる事業となります。
 
その中でも、T社の利益に大きく貢献していたのは、法人顧客でした。手間が少なく、単価が大きいのです。そして、T社の丁寧な対応という強みも活かせます。
 
それに対し、個人顧客は、おいしくないということが解りました。手間がかかり、リピートも期待できません。簡単に「値引き」を要求されます。
 
T社長は言われました。
「自社のビジネスを全く理解できていませんでした。」そして、「このビジネスでも、十分年商10億は行けることが解りました。」
 
2月、事業の各施策の設計に移ります。集客方法やサービスの内容、フォローの仕方など、すべてを「大きくなる前提」で考えていきます。それは、量をこなすことと、再現性を重視したものになります。
T社長、「本当に、事業とは全部が設計なのですね。」と言われました。
 
3月、決めたことを事業設計書にまとめます。
すでに、事業モデルも各方針も大筋は検討を終えています。それを、文章にまとめます。この過程で、更に細部まで検討されることになります。この時に社長のなかで、大きな変化が起きます。文章に向かう過程で、社長の思考が整理されてきます。また、信念が出来てくるのです。
「これが本当の経営計画書なのですね。いままでと全然違います。」驚いてばかりのT社長です。
 
4月、仕組みづくりに移ります。
いよいよ社員に手伝ってもらう時が来ました。出来上がった経営計画書をもとに、方針発表会を行います。例年はホテルで盛大にやってきました。今年は、Zoomでの開催となります。「いままでやってきたことは会社ごっこでした。今回は、最高に充実した会にできました。」4月には、売上げがゼロになりました。
 
 
5月、町は静まり返っています。
モニターに血色の良い社長の顔が、映っています。
そして、その社長の後方に、ここ数か月間、見えなかった社員の働く姿があります。私はお聞きしました。「仕事が戻ってきたようですね。」T社長は、「いえ、全然です。」笑って答えます。
 
社員は、すべて在宅勤務の体制を取っていました。先の経営方針発表会から、各部門で仕組みづくりに着手してもらっています。その中で主要な社員から申し出がありました。「仕組みづくりを進めたいので、出社させてほしい。」。T社長は、それを認めました。
 
5月も案件がほとんどないために、会社全体で仕組みづくりに集中することができました。すごいスピードで仕組みが整備されていきます。そして、すごいスピードで会社が変わってくることを感じることができました。
 
T社長は言われます。
「前期は、過去最高益を出しても不安しかありませんでした。今は、売上ゼロでも、安心していられます。」
 
T社長は、この最悪の5か月間で、会社をがらりと変えてしまったのです。
 
 
これは、T社長の信念と行動力があったこその結果です。
また、正しき順番を愚直に守ったからこその結果です。事業-仕組み-組織です。
 
過去もT社長には、かわらず行動力がありました。
良いと思ったものには、飛びついていきます。それは、いままでも、今回も、変わっていないのです。
 
いままで成果が出なかった理由は、実に明白です。
取り組んできたことが悪かったのです。そのため、社長の頑張りも、成果に結びつかなかったのです。
 
そして、間違った選択をしていました。『組織』に手を付けてしまっていたのです。
そのため、多くの時間とお金、そして、社員の人生という資源を無駄にしてきました。
 
 
社長のすごい行動力も、正しい選択があってこそなのです。
社員のやる気も高い能力も、正しい意思決定があってこそとなります。
 
それがそろったときには、すごいスピードですべてが変わることになります。
自社を取り巻く世界は、大きく変わることになります。
そこに例外はありません。

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