No.303:社内プロジェクトを立ち上げる時には、人を育てたいという邪な考えを持ってはいけません。

№303:社内プロジェクトを立ち上げる時には、人を育てたいという邪な考えを持ってはいけません。

肩を落としたT社長が、言います。
「2年近く続いたプロジェクトを解散することにしました。結局、そのシステムの入れ替えは、3か月前に管理部に入ったAさんに、お願いをしました。」
 
私は、そのプロジェクトの立ち上げから今日までの経緯を確認します。それらの多くで間違いを犯していることが解ります。
 
私は、失敗の原因を伝えさせていただきました。
「大きな原因は、二つあります。その一つは、社長自身に管理者としての能力が無いことが挙げられます。そして、もう一つは・・・」


管理者の役目は、大きく2つあります。
1つは『目標達成』です。そして、もう1つは、『仕組みの改善』となります。
 
自部門に与えられたその期の目標を達成するために、方針を示し、行動計画に落とし込みます。その状況を確認し、予定通りいかなければ、軌道修正します。それにより、目標を達成します。
 
課題があれば、仕組みを改善します。ルールやマニュアルを改定し、継続的に成果が上げられるようにします。また、将来を見越し、仕組みを立ち上げます。
 
この2つこそが、管理者の役目となります。この役目を果たさず、作業ばかりをしている管理者のことを、名ばかり管理者と言います。その発生原因と対策については、過去のコラムでも書いてきた通りです。
 
 
そして、この2つを達成するプロセスで、管理者はチームや部下に対しての役割を全うすることになります。
 
チーム内の信頼関係を作ります。そのために、情報の量やそのタイミング、そして、伝え方を駆使します。また、人間的な繋がりの修正もしていきます。チーム内の信頼関係が保たれてこそ、部門の取組みも進むことになります。
 
人の育成を担います。部門の目標達成と仕組みの改善のプロセスにより、人を育てていきます。未熟な社員には、基本を教え、当面の作業ができるようにします。見込みのある社員に、より難しい業務や目標を与え、人材に育てます。
 
このプロセスを一年間回すと、会社は目標とする業績を達成することになります。また、仕組みが良くなっています。会社が成長発展したことになるのです。
そして、その時には、人が育つことになります。
 
まさに、管理者こそが、会社の中核と言えるのです。管理者が、この自らの役目に全力をかけるからこそ、これらの成果を得られるのです。
――――――――――――――――――――――――――――――――――
T社長は、プロジェクトにおいて、いくつもの間違いを犯しました。
 
・本来どこかの部門が通常の業務として受け持つものを、プロジェクトのテーマとしました。今回のプロジェクトのテーマである「受発注システムの入れ替え」は、本来どこかの部門の業務のはずです。それをプロジェクトで取り組ませることで、「プロジェクトメンバーの責任感が生まれなかった」、「受発注システムは、どこの部門の仕事でもない」状態を作ることになりました。
 
・非常に難易度が高いものをテーマに選んでしまいました。受発注のシステムということで、「業務の全体が解っていること」、そして、「最低限のシステムの知識があること」が必要になります。また、不明確なことが多いのです。それを、推し進めるという「プロセスを構築する力」と「人間的な力」も必要になります。幹部級の人材でも、その実現には困難が伴うはずです。
 
・それを、間違った相手に依頼しました。プロジェクトのメンバーに、中堅および若手を選びました。その難易度に対し、相応しい相手ではありません。
 
・その相手に合わせた指示を出していません。力が無いメンバーであれば、それ相応の具体的な指示を出さなければいけません。しかし、それを行いませんでした。
 
・そして、そのフォローも適宜行われませんでした。相手の力とその難易度からすると、かなりのフォローが必要になるはずです。明らかに、「任せすぎ」でした。その結果、プロジェクトはたち切れ状態になっていたのです。
 
私は、ここまで説明させていただきました。
そして、もしやと思い確認をします。
「システム開発についての方針書はありますか?他に、企画書と行動計画書がありますか?」
 
T社長は、答えます。
「何の方針書が必要でしょうか?仕様書は業者が作成しています。行動計画書はありませんが、議事録はあるはずです。」
 
全く、的外れの答えが返ってきます。
方向性や手段の限定を書いた方針書がありません。基本の構想や機能をまとめた企画書こそ、プロジェクトで作るべきものです。時間軸を管理する行動計画書がなければチームで動くことも、役割分担もできません。議事録は、ただのその回の記録です。
このプロジェクトは、失敗するべくして失敗したのです。
 
社長自身に、基本的な「チームを動かし、何かを成すという力」がなかったのです。
これらは、基本的な管理者の役目であり能力と言えます。
 
管理者としての能力が、社長自身になかったのです。だから、プロジェクトで成果を出すこともできなくて当たりだったのです。
これこそが、失敗の原因の一つです。
 
 
肩を落としたT社長は、次の言葉を発しました。
「彼らを、育てたかったのです。」
 
もう一つの失敗の原因が見つかりました。
今回のプロジェクトは、かなりの難易度であり、自社にとっても非常に重要なものでした。本来、幹部級の人材がリーダーを務め、やる気も能力も高いメンバーを揃えるべきでした。完成された人材でも、やり遂げるのは困難だったはずです。
 
そこに、「人を育てたいという邪な考え」を入れてしまったのです。
「プロジェクトの成果もほしい」、そして、「人にも育ってほしい」。それは、がめつすぎるのです。一つでも難しいところに、もう一つを加えてしまったのです。
 
その結果、人選の軸が変わることになりました。
リーダーは、「幹部候補」です。素養はありそうですが、まだ経験も人間力もありません。そして、メンバーには、主に「育ってほしい人」が集められました。
 
残念ながら、この2年近く続いたプロジェクトは解散することになりました。遅すぎる判断です。
 
このシステムの入れ替えは、Aさんが引き継ぐことになりました。
中堅規模の会社の管理部から、T社に移ってきました。非常に優秀な方で、前の職場でシステムの入れ替えを経験していました。
そんなAさんでも、その完了までに、1年近くの時間が必要と予測をしました。
 
このプロジェクトの結果、そのメンバーの能力が高まることはありませんでした。良い経験には、なったかもしれませんが、正しいプロジェクトの進め方を体験することはありませんでした。そして、自信をつけることもありませんでした。
 
若いT社長には、良い教訓となったはずです。
 
 
社長は、プロジェクトを立ち上げ、動かし、成果を出させるという能力を習得する必要があります。それがあるからこそ、自分以外のものをリーダーに据えたプロジェクトから、成果を得ることができるのです。
 
そのためには、まずは『自社を一年間まともに回せる』必要があります。
今期の目標を立て、各部門に依頼し、PDCAを回し、それを達成する。
 
会社とは、一年間のプロジェクトの繰り返しです。
その一年により、目標が達成され、仕組みが改善されます。そして、そこでチームの信頼関係が強くなります。また、人が育っていきます。
社長は、自社の一年間というプロジェクトをまずはしっかり回すことです。
 
それができるからこそ、管理者を使って、成果を得ることができるのです。
そして、社員は、そこで機能的なプロジェクトの運営を体験します。方針書、行動計画、会議運営。その社長のやり方を見て、管理者が育っていきます。
社長が、やってみせることでしか、育たないのです。
 
社長は、自社の一年間のプロジェクトを回し、成果を得たとき、ものすごい達成感を得ることになるでしょう。経営をするということ、組織を動かすということが、初めて実感できることになります。

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