No.357:事業家に最も必要なこと。マルチタスクを得意とする社長が、絶対に成功しない理由とは?

№357:事業家に最も必要なこと。マルチタスクを得意とする社長が、絶対に成功しない理由?

「先生、当社は進んでいるのでしょうか?」
販売促進会社T社長は、私に尋ねます。
 
私は答えます。「いいえ。」
T社長は、その言葉を聞いて落胆をしています。
 
当社のコンサルティングは、成功率80%以上を誇っています。
10名中、8名の社長が、会社をガラリと変えることに成功しています。
 
最近、その8名に共通することが見えてきました。
そして、同時に、残りの2名の失敗者に共通することも見えてきたのです。
 
それが有るか無いかが、この先の事業家人生を分けることになります。


組織の強さの源泉は、『分業』にあります。
 
営業は、営業部門が専門で行います。設計は、設計課が担います。経理は、経理担当が受け持ちます。
 
其々の部門が、「社内にあるその業務を一手に引き受けること」で『効率』が生まれます。
 
その部門は、その業務ばかりをやるため、いちいち段取り替えが発生しません。また、集中力が途切れたり、意識を練り直したりする必要がありません。
 
長い期間それを担うという前提があるので、その分野の習熟に向かうことができます。また、研究や勉強を続けることができます。
 
『分業』こそが、組織だと言っても過言ではありません。
 
 
そして、その部署に『目標』を与えます。
営業部には、「今期は、新規を10件開拓してくれ。」、設計課には、「設計の標準化に取り組んでください。」、経理担当者には、「交通費申請業務の簡素化をお願いします。」と目標を与えるのです。
 
『目標』があるお陰で、その部門や担当者は、それに集中することができます。
ルーチン業務をこなしながら、別の取組み(先の仕組みづくり)にも、計画的に、かつ、腹を据えて取り組むことができます。
 
『分業』や『目標』とは、フォーカスする先を明確にするということです。
それは、同時に、「他のことはやるな」ということを意味します。
他の部門や管理者に対しても、「余計なことを勝手に指示するな」と伝えることになります。
 
我々は、事業モデルにより、儲かる先にフォーカスします。
そして、その事業に合わせ、彼らがフォーカスできるように組織(分業)を設計します。
そして、その部署に、フォーカスすべき先を目標という形で依頼します。
 
これができているからこそ、早い展開と成長が可能になるのです。


この逆をやれば、すぐに組織の力を失うことになります。
一つの組織に、複数の事業を与えます。
一つの部門に、雑多な業務を与えます。
一つの担当に、沢山の目標を与えます。
 
当然、これらの状態は、『効率』を大きく下げることになります。
段取り替えが多くなります。一日に何度も集中力が途切れます。また、意識を練り直す必要があります。習熟度も上がりません。勉強や研究も、焦点が絞れません。
 
その状態を一言で表現すると『混乱』となります。『雑多』が、社内を混乱の渦に陥れているのです。当然、人は育ちません。
その結果、展開も成長も、遅々として進まない状態になるのです。
 
そして、彼ら社員の心を不安定な状態にすることになります。
向かう先が解らない、与えられたことに手がつけられない。全然、進まない。この状態は、心に、焦り、不安、疲れを生むことになります。
 
組織の構成員の心は、弱くなり、荒れることになります。職場では、陰口、他責の言葉、怠惰な行動が散見されるようになります。
 
 
冒頭のT社は、まさにこの状態だったのです。
職場からは信頼という基盤は、完全に失われていました。その替わりに、ルールやチェックシートが増えていきます。すると、社員は、益々「言われたことしかしない」状態になります。そして、更に管理を強化しての、繰り返しです。
 
この状態に、T社長は、完全に疲れ切っていました。
改革を決意し、5か月が経ちました。
 
T社長は、矢田に訊きました。
「先生、当社は進んでいるのでしょうか?」
私は、答えます。
「いいえ。進んでいません。」
T社長は、その言葉を聞いて、肩を落としています。
 
変わらずT社では、日々問題が起きています。納期遅延や発注ミス、社員の退職など。その一つひとつが、軽いものではありません。
 
しかし、そんな中でも、やるべきことに取り組むことが必要です。
仕組みも組織も無い形で、ここまで来てしまったのです。
T社には、対処ではなく対策、根本的なすべての作り直しが必要なのです。
 
事業モデルの再構築を行います。そして、組織構築に取り掛かります。
それらが、進んでいません。
 
その理由は、明白です。社長が手を付けていない、それに、集中して取り組んでいないのです。
T社長は自身のことを、「マルチタスク派」と言いました。
 
『マルチタスク』とは聞こえは良いですが、その本質は『無能』の代名詞なのです。「一度に複数の業務をこなす」ことなど、人間には不可能なのです。
それは、集中力が分散している状態を表します。
 
そのため、どれもが中途半端です。
提案書は、8割がた出来ていますが、実践投入されていません。経営計画書も、文字をつらねただけです、熟考はされていません。行動計画は作成したものの、月例会議によるPDCAは回されていません。
 
必要性を感じ、取り入れるが、やり切らないのです。
だから、形にもなりません。だから、成果にもならないのです。
そして、その間も、次のものが目に留まります。まだ別の何かを求め、本を読みます。人に相談します。そして、簡単にそっちに向かってしまうのです。
 
その状態に、心に焦りが籠るようになります。
何もできていない、やりたいことがやれていない、何かやらなければと、また何かを拾ってきます。
「先生、給与制度の見直しは必要でしょうか?」
「マニュアルの整備を進めていいでしょうか?」
 
私は、「ノー」と返します。
組織の出来ていない会社に、給与制度もくそもないのです。
仕組みの無い会社に、マニュアル運用はできないのです。
やるべきことをやる、やるべき順番でつくり、導入をすることです。
それらは、明確なのです。実際、多くの会社がそれで改革を遂げています。会社をガラリと変えているのです。
 
T社長自身も、それは十分に解っているのです。しかし、心だけが焦るのです。その心をコントロールできないのです。
T社長からは失敗者の臭いがプンプンします。
 
いろいろやり過ぎ、やり切らない、そして、すぐに次に移る。これが、失敗者の特徴です。
 
成功者の特徴は、完全に逆なのです。本当に重要な一つのことを選びます。それをやり切ります。形にするまで、それに坦々と向かいます。
 
私は、T社長に、その説明をしました。「どうでもよい仕事をいくら上手にやっても、成功はあり得ないのです。」
 
毎回のコンサルティングでは、取り組むべき一つの事を明確にします。そして、それを矢田に送る日を決めます。こうでもしないと、元の「怠けもの」に戻ってしまうのです。
 
 
あれから1年が経ちます。
T社は、ガラリと変わっています。強い事業が出来、昨年対比120%で推移しています。各部門の管理者が、仕組みづくりに取り組んでいます。
社員同士も、和気藹々と真剣に、ミーティングをしています。会社全体に、信頼という空気が流れています。
 
T社長は、言われました。
「私自身がいろいろやっちゃう人間だったのです。だから、組織も混乱していたのですね。」
 
マルチタスクの社長は、部署や社員にもマルチタスクを求めます。
そこには、「シンプルさの重要性」や、「複雑化の弊害の大きさ」の認識が欠落しているのです。簡単に取り入れ、簡単に振ります。そして、捨てることも下手くそなのです。
 
その結果、組織全体が、マルチタスクになっているのです。一つの組織で、複数の事業をやっています。一つの部門の業務が広いのです。一人の担当者に、思い付きのような指示が降ります。
それらが、組織の力の源泉である『分業』を崩壊させることになるのです。
 
シングルタスクの社長の下では、部署や社員にも、シングルタスクを求めます。
一つの事業、一つのサービス、一つの業務、一つの目標。
その重要性の正しい認識を持っているのです。また、「いろいろやりたい病」を自制する術を持っているのです。そして、捨てるという意思決定をします。
 
社員を集中させることの重要性を解っているのです。だから、彼ら社員の集中力を乱さないように環境を整えることをします。
その結果、会社は、スピードある展開と成長を得ることになるのです。
 
 
まとめ
 
成功者の絶対条件:一つを選ぶ、一つをやり切る。その正しき認識と強い自制を持つ。
 
失敗者は、沢山を選び、どれもやり切らない。その認識が弱く、自制も出来ていない。そして、焦る。そして、次に移る。
 
この一つ、この習慣を身に付けること。
この先には、素晴らしい事業家人生が待っています。

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