No.371:中小企業がつくるべき組織の姿。事例:古株の社員が変革についてこられない。

№371:中小企業がつくるべき組織の姿。事例:古株の社員が変革についてこられない。

クライアントM社長から質問がありました。
「創業メンバーであるA氏がついてこられなくなっています。」
 
M社は、ビジネスマッチング系の事業を展開しています。
この2年で、年商を3億から5億に伸ばし、社員数は20名から40名と倍増しています。
 
その過程で仕組化を進めてきました。その規模以上に、会社の中身は、大きく進化しています。そして、若く優秀な社員が、どんどん集まってきます。
 
M社長は、訊きます。
「先生、どうしたらいいでしょうか?」
私は、答えます。
「A氏には、成長していただくしかないですね。」
 
M社長は、私の目を見て次の言葉を発します。
「彼が、成長できなかった場合は、どうなるのでしょうか?」


組織は、四階層で出来ています。
経営層―管理者層―判断層―作業層。
 
経営層と管理者層の主な役目は『設計』です。
経営層は、自社のビジネスをどのように儲かるものにしていくのかを設計します。また、各方針を決めます。
 
管理者層は、それを実現するための仕組みをつくります。そして、目標達成のために、計画を立て、その仕組みを回すべき指示を出します。
 
判断層と作業層の主な役目は『実行』になります。
判断層は、日々現場で起きる問題に対し、適切にジャッジし、作業層に具体的な指示を出します。現場を仕切るリーダーです。
 
作業層は、まさに「作業」を担います。日々同じことを繰り返すことで、質と量を満たした生産を行います。
 
この判断層と作業層こそが、実際に「稼ぐこと」を担います。
 
この四階層がそれぞれ機能することによって、会社はまともに運営がされることになります。狙ったサービスが顧客に提供されます。また、PDCAが回され、目標達成と仕組みが成長を続けます。
 
 
これが出来ていない会社では、以下の問題が発生します。
どの層が出来ていないのかによって、その現象も変わってきます。
 
作業層が機能していない:生産現場にまだ「社長」がいます。または、一部の優秀な社員に案件が集中しています。他の社員は、補助的な作業をこなしています。
 
判断層が機能していない:何かあると、いちいち社長にお伺いがあります。自分の代わりに、現場で判断する社員がいないのです。判断を任せた時には、その多くは、望まない結果になります。
 
現場層で起きる問題の原因は、一つではありません。「事業モデル」、「仕組み」、「方針」、其々に何かが不足するから起きるのです。
 
管理者層が機能していない:管理者が名ばかり管理者になっています。彼らは、他の作業層同様に、現場で体を動かしています。計画を立てることもなく、仕組みの改善にも向かいません。
 
管理者に関する問題の原因も、一つではありません。「経営計画」、「方針」、「仕組み」、「PDCAサイクル」に、欠けるものがあるのです。
 
経営層:社長を初め、経営層が、未来の構想に向かっていません。それは、経営者としての能力不足か、または、現場に自分が入っているため、その時間が取れないことが、原因にあります。
 
この四層をつくり、機能させる必要があります。そのために獲得すべきものは、明確にあります。


冒頭のM社も、全く組織が出来ていませんでした。
社長と創業メンバーのA氏で、多くを担っていました。
 
それぞれの案件の進捗をその都度確認します。担当者が一つの業務を終えると、それをチェックし、OKであれば後工程に流すように指示を出します。
分業と言いながら、実質は「個人のコントロール」だったのです。
 
その状態で、売上げを増やそうと、頑張っていました。サービスを充実させ、そして、マーケティングに取り掛かります。その結果、問い合わせが増えます。
 
案件が増える分、より現場に囚われることになります。案件が増えた分、問題も多くなります。クレーム処理のために、社長が追われることになります。
その状況に広告を一度止めることをします。
 
結果的に、売上げは殆ど増えていないのです。そんな状態の年商3億円を、もう数年続けていました。
 
M社長は、「自分が組織の作り方を解っていない。それを身に付けなければ、これ以上は先にはいけない」と考え、当社の門を叩いたのでした。
 
 
最初の面談には、M社長とA氏が参加をされました。
その時に、M社長からは、A氏のことを「経営者」と紹介がありました。
 
コンサルティングが始まると、M社長は、ぐんぐん組織の作り方を身に付けて行かれます。自頭も良く、勉強熱心です。
すぐに理解し、取り組んでいきます。そして、すぐに実践投入にしていきます。
 
一年もすると、必要な仕組みが出来上がり、回り始めていました。
そして、会社は、確実に変わり始めていたのです。
 
まずは、狙った通りに、「分業が機能する」ようになりました。
これにより、M社長が現場から離れることが出来るようになりました。
 
その次は、「管理者が機能する」ようになりました。
拙いながら各部の管理者が中心となり、PDCAを回しています。そして、各部が受け持ち業務の仕組みの改善をしています。
 
四階層が機能しているのです。
M社長は、言われます。
「まさか本当に一年でここまで出来上がるとは思っていませんでした。自分でやっていたら3年、いや、5年はかかっていたはずです」
 
M社の快進撃が始まります。
3億の年商は、2年経った今期に5億になっています。
この先を見越した採用のため、社員は「多め」になっています。来期は7億を予測しています。
 
そして、いまのM社は、完全に選ばれる会社になっていました。
募集をかければ、多くの応募があります。いままでの採用難は、嘘のように無くなっています。
 
若く優秀な人を雇うことができます。それも、安い給金で、です。
会社の雰囲気は、活気のあるものに変わりました。
そして、彼らに「〇〇をどうしたらいいか考えて」と依頼すれば、提案があります。その提案も理にかなったものばかりです。
それに対して、追加の指示を伝えるだけで、形にしていってくれます。
 
この状況に、M社長は、久しぶりに「会社が楽しい」と感じることが出来たのでした。しかし、一つだけ気になることがありました。
それは、A氏の事です。
 
その会社の変化の中で、明らかにA氏だけが付いてこられなくなっていたのです。目標を設定したり、計画を立てたりすることが苦手です。問題が起きると、すぐに「人」に向かいます。解決のために「仕組化」するという発想が無いのです。そして、部下に対して、具体的な行動指示を出すことが出来ません。
 
A氏は、人は良いのです。しかし、ロジックさがありません。
いまのM社は、完全に仕組み、すなわち、ロジックで動いているのです。
 
M社長は、A氏と何度も話をしました。「現場に出ずに、管理者の役目を担ってくれ」と。
 
しかし、変わることができません。何か理由を付けては、現場に戻ろうとします。また、数件の顧客を手放そうとはしません。
 
M社長は、そのことを矢田に相談しました。
「彼をどうすればよいのでしょうか?」
 
管理者としての能力が無いのは、明白になっています。彼よりも、若くて優秀で、管理者の素養を持つ社員は、何人もいます。
 
これも、組織が出来る過程で必ず起きる現象の一つです。
昔からの管理者が、「管理者」でなかったことに気づくことになるのです。
正確には、「新しい組織の管理者」の定義には、合わないようになるのです。会社が変わってしまったのです。M社長が変わってしまったのです。
 
この場合の策は、二つしかありません。
一つは、「新たなポストを用意する」となります。
本業に大きく影響しないポストを用意します。
例えば、建設業であれば「安全部長」であったり、メーカーであれば「クレーム対応(頭をさげる)」であったり。店舗系ビジネスでは、各店舗を定期巡回する「サービス品質部長(店長やスタッフに声かけ)」があります。
 
もう一つは、「降格」です。
一時は、その管理者の下に、「仕組み担当」というポジションを設けることも有りです。しかし、そう長くは続きません。
それでは、下の若く優秀な社員の活躍を阻害することになります。また、本人も居心地が悪いのです。数年後には、その管理者のポストには、その役割に相応しい能力のある者が入ることになります。
 
M社長は、短く答えました。
「考えてみます。」
この日に、すぐに答えが出せるものではありません。
 
時間が、M社長の中で変化を起こします。いずれにせよ、しかるべき時は来るのです。
 
組織で起きる問題も、組織の作り方も、すべてに答えがあります。
それらは、ロジックなのです。
しかるべき手順を踏めば、誰でも同じように組織をつくることはできます。それを、早く身に付けることです。
 
しかし、ロジックが全てではありません。
そこには、心も必要になるのです。
それを、信念ということもできます。
 
ロジックと心をどう折り合いをつけて行くか。
そして、その折り合いを力に変えて、前に進む。
社長業の大変さはそこにあります。
 
文鎮型組織を四階層にする。四階層を機能させる。

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