No.422:新規事業を考えて良い会社の条件とは?そして、その新規事業に必要な条件とは?

№422:新規事業を考えて良い会社の条件とは?そして、その新規事業に必要な条件とは?

最近、新期事業の相談が増えています。
先週は、なんと4件ありました。この4件とも、当社のクライアントであり、「新規事業に取り掛かるための条件」を満たしています。
 
N社もその1社です。
「先生、今の事業では年商10億円には行けません。新規事業を考えていいですか?」
 
N社は、海外で不動産関係のサービスを展開しています。
そして、今期の売上は前年対比145%で推移しています。そして、それと逆比例するように、社内は「静かに」なっていっています。社長の自由な時間も増えています。
 
私は、お答えしました。
「はい、進め方を確認しましょう。」


新期事業は、やはり「今の事業」を基盤に考えることになります。
今の事業の「顧客の特性」、「単価の取り方」、「事業の流れ」という最大の資産を元に、次の事業モデルを検討します。
 
今の事業で顧客としている法人や個人や業界などについては、よく解っています。
ブランドショップを展開するA社は、〇〇を好む20代、30代の男性のことをよく解っています。どのような生活パターンをもっているのか、どれぐらいのお金を服に使うのか。
福祉業界にシステムを提供しているB社は、その業界の課題や予算の立て方などに精通しています。そして、どのような料金体系が稟議を通りやすいかも解っています。
 
単価の取り方も一つの特徴です。
スポーツジムC社は、短期のプログラムを売り、数十万円の単価を得ています。一方、総合スポーツジムD社は、毎月数千円の施設利用料を継続的に得ています。
 
集客から営業、そして、納品の仕方などの事業の流れも異なります。
通販会社E社は、ネットで集客して、物を販売します。その物の発送は、外注業者を活用しています。
美容系卸のF社は、見込客である店舗に、飛び込みで営業をします。そして、頻繁に訪問し、売り方などを提案し物販に繋げています。そして、その後も強固な人間関係を築いていきます。
 
このように其々の事業には特徴があります。すべての会社の事業に、何かしらの発明があり、何かしらの儲かる理由があるのです。
それは、その会社の社長が思っている以上に、特異性があります。
 
新規事業では、まずは、その特徴を活かすことを考えます。
顧客の特性や単価の取り方、そして、事業の流れ、それらをスタートとして検討をしていきます。それのほうが、成功の確率は断然高まります。また、仕組みの複雑化を防ぎ、社長の思考の分散を抑えることができます。
 
(稀に全く異なる事業を選ぶ社長がいます。それはそれで良いのです。会社としてリスクヘッジになる、という理由があります。それ以上に、社長としての「やってみたい」という欲があります。それで、社長自身が活き活きと生きられるなら良いのです。)
 
新規事業に取り掛かる時に、絶対に満たさなければならない条件が一つあります。
それは、「いまの事業よりも大きくなる見込みがある」ということです。
 
いま年商3億円であれば、年商10億円になる見込みがあること。
いま年商10億円であれば、年商30億円になる事業を考える必要があります。
新規事業で考えるべきは、次のステージに進む事業になります。
 
既存の事業と同じ規模にしかならない事業(市場の大きさや単価)をやってはいけません。それは、複雑化を招くことになります。ましてや、いまと比較して小さい規模の事業には手を出してはいけません。年商3億円の会社が年商1億円の事業をやってはいけないということです。
(これをやってしまって、「損はしていないが、大きく儲かってもいないし、大きくなる見込みがない事業」を複数抱えてしまっている会社は多くあります。)
 
これは、大手企業でも同じです。年商100億円の会社が、10億円の新規事業に手を出すわけには行かないのです。少なくとも30億円、理想は、100億以上になる事業です。そうでなければ、株主も黙っていません。
 
新規事業では、「いまの事業よりも大きくなる見込みがある」が絶対の条件になります。


不動産サービスを展開するN社は、前期の年商は1億7千万円でした。
今期は、昨年対比145%で推移しています。
 
N社長は、矢田に言いました。
「先生、今の事業では年商10億円はいけないと思います。何か、新規事業を考えたいのですが。」
 
確かにN社の今の事業では、市場の限界は見えています。その市場を独占したとしても、上限は知れているのです。
 
私は、N社長に、「10億円に関する考え方」の補足をすることにしました。これは、年商10億円を一つの目標にしている社長によくする説明です。
「総粗利3億円を20数名で気持ち良く超えられるかどうかが目安です。」
 
年商10億円というのは、あくまでも売上げです。そのため、すべての会社の目安(目標)になることはありません。やはり重要になるのは、粗利高になります。
その金額は、3億円です。これであれば、粗利率100%のコンサルティング業や粗利率50%のメーカーでも同じ指標となります。その粗利高3億円を20数名で稼ぐということは、一人当たりの生産性は一千数百万円になります。(目安である1200万円を超える)
 
N社長は、答えました。
「そこまでは、今の事業で何とか行けそうな感じはします。」
 
今の伸びで行けば、数年でその規模は見えてきます。また、生産性は、一人2千万を優に超えています。そして、その多くが仕組みで回るようになり、管理者も機能しています。
そして、N社長も社員も、「静か」に働けています。全員が、楽になっているのです。
 
この状態であれば、会社のステージをあげるための新規事業を検討することができます。それどころか、「今」から動かないと、いけないぐらいです。新規事業が形になるには、やはり時間が掛かります。少なくとも3年はかかるものです。今の事業の伸びが止まった後に動き出していては、遅いのです。
 
N社長は、矢田に言いました。
「どう進めればよいのか、解らないのですが。」
 
矢田は答えました。
「N社長は、すでにご存じのはずですよ。」
 
N社長は、この2年間で今の事業を大きく変革をされました。新規事業立上げの流れも、変革の流れと同じなのです。次の三段階を踏むことになります。
 
1.事業モデルをつくる。:誰かに刺さるサービスを作る。(大きくなる事業の条件を満たす)
 
そして、
2.それを、回す仕組みをつくる。
 
ここまでが終わればいよいよ展開に移れます。
 
3.その仕組みに人を載せる。
 
となります。
 
この流れは、新規事業でも同じなのです。違うのは、人や顧客がすでにいるかどうかです。
新規事業では、そこに社員も顧客も居ません。その分、早く構築することができます。
 
ここまでの説明を聴いてN社長は、言われました。
「何を作ればよいか、そして、そのつくる順番も、今なら想像ができます。」
 
これが、体系的に「ビジネスの構築の仕方」や「仕組みの作り方」を習得した経営者が、至る状態です。新規ビジネスを立ち上げる手順が解るのです。これは、最初の事業の立上げ時には、無い感覚です。一つの事業を軌道に乗せるのに10年かかったところを、今なら1,2年で駆け抜けることができるのです。
 
 
私は、N社長に次の提言をさせて頂きました。
「新規事業の立上げは、社長自ら行ってくださいね。そして、もう一人優秀な社員を既存の事業から抜き、専属で付けるようにしてください。」
 
新規事業というだけ有って、そこには多くの困難が伴います。そのすべてが、未知であり、その時々にジャッジも求められます。そして、何よりも、市場の大きさや顧客のニーズを体で受け止めることが必要になります。それを自らが得ているからこそ、大きな方針変更や撤退の決断ができるのです。
 
新規事業の立上げを、社員に任せてしまう社長がいます。これで、進むはずがありません。社員という立場では、自分でジャッジもできません。ましてや、大きな方針変更もできないのです。そして、その彼は、経営者として働いたことも無いのです。これでは、新規事業立上げが進むはずが無いのです。
そして、その社員の報告を聴いて、社長が確信を持った指示を出せるかというと、そんなことはあり得ないのです。
 
こんなとんでもない間違いを犯している社長が、世の中には多いのです。
そして、更にひどいと、「兼任」でやらせようとします。いまの業務をやりながら、新規事業もやれ、というのです。
 
その結果、新規事業の立上げは、遅々として進まないことになります。その多くが、形になっていかないのです。そして、中途半端な事業を抱えることになります。
 
世の新規事業の失敗の多くは、ここにあります。
 
一つのビジネスも仕組化できていない社長が、
自ら取り掛からず、社員にまかせる。(ひどいと兼任)
 
 
まとめです。
 
新規事業立上げの条件は次の通りになります。
・まずは、既存の事業を仕組化できていること(社長は現場を離れていること。組織として成長のサイクルが回せており、業績も順調に伸びていること。)
・その新規事業は、3億円を10億円に、10億円を30億円に、とステージを上げるポテンシャルを持っていること。
・それに、社長自ら、取り掛かること。
 
以上。

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