No.432:年商2億8千万円が、3年で7億円に。建築工事業M社長は何をやったのか?

№432:年商2億8千万円が、3年で7億円に。建築工事業M社長は何をやったのか?

街から人が消えた夏、建築工事業M社長が当社に相談に来られました。
当時の年商は2億8千万円、社員18名、その社員の半分は大工です。
 
M社長は、言いました。
「私も専務も、毎日の見積と施工管理で手一杯です。この状況で何ができるのでしょうか?」
多忙だけど儲かっていない、そして、手詰まり感を持っての相談でした。
 
あれから2年半が経ちます。
「先生、順調に1億円級の案件が受注できています。」
移転から1年が経ち、馴染んできた駅前のオフィスにM社長が居ます。
「次は、大工を量産する必要があります。」と言い、購入予定の社員寮の図面を拡げました。


事業とは、「一つの必勝パターンを大量生産すること」を意味します。
見込客を大量に集めます、そして、サービスを大量に生産し、顧客に提供します。
大量に売るからこそ、大きく儲けることができます。
 
そして、それをこなすための仕組みを整備します。
仕組みとは、「ある成果を大量生産するための仕掛け」と言えます。
その見込客、そのサービスを効率良く、作り出すのです。
それにより、より効率的に儲けることができるようになります。
 
これが事業の本質であり、これが事業の儲けの正体なのです。
(「相手合わせのビジネス」や「小さな事業を複数持つ」ことのマズさが解ります。)
 
ここから、企業は、大きくは二つの目標を持つことになります。
一つは、「何を量産するのか?」です。
「今期は、新規取引先を5社開拓しよう。」
「取り扱いアイテムを20%増やそう。」
「店舗を4店舗オープンしよう。」
こんな具合に、「何」を「どれだけ増やすのか(減らすのか)」の目標を持ちます。
 
もう一つは、「何を量産するための仕組みをつくるのか?」です。
「今期は、WEBからの集客の仕組みを確立しよう。」
「在庫管理のシステムを入れ替えよう。」
「店舗の運営マニュアルを整備しよう。」
これらの仕組みによって、量産を支えることになります。
 
この二つを言い換えると、「量的な変化」と「質的な変化」となります。この表現は、世の多くのマネジメント本に載っているものになります。


冒頭のM社の2年半前は、2千万円級の工事をメインにしていました。
そこで、M社長と一緒に確認をしました。
「目標の年商10億円に行くためには、何件の工事をこなせばよいのか?」
 
10億円÷2千万円=年間50件。
 
この数字を改めてみて、M社長は言いました。
「今でも手一杯なのに、この件数をさばくことはできません。」
 
そして、少し考え、続けます。
「仕組化出来たとしても、これだけをこなす大工も施工管理者も確保できません。」
今の2千万円という単価を追った先には、会社の未来は無いのです。
 
そこで、工事単価を大きくすることを決定しました。
狙うのは、「1億円級」の工事です。これであれば、年間10件の工事で10億円に進むことができます。
 
1億円級の工事を出すのは、やはり大手ゼネコンとなります。
そこで、ゼネコンを新規開拓することにしました。そのための整備を急ぎ、実際にM社長自ら動きます。半年ほど経つと、見積もりが取れるようになってきました。作った見積書を手に、M社長は思います。
「いままで見たことが無い金額です。取れたとしても、これを失敗すると被害も大きいだろうなぁ。」
 
そして、その後も粘り強く営業を続けると、念願の1件の受注に繋がりました。そして、その後も、数件の受注が続きます。
 
その状態になると、施工管理者が不足してきます。それも、いままでのレベルとは違います。2千万円級と1億円級では、そこで求められるものが違うのです。
 
次は、施工管理者を増やすことを目標にしました。
この時のM社の事務所は、山奥の田舎にありました。もう少し行けば、県境です。
「顧客を増やし、社員を増やす」という目標を実現するために、事務所移転を決意しました。
 
M社長は、その県で最も大きい駅の前にあるオフィスを契約しました。その金額に「払えるだろうか」という不安が過ります。
その移転には、社内からも反対の意見が起きました。また、同業者の業界からは、「M社の息子がバカなことをやっている」と噂になっています。
 
人材の採用の状況は、M社長の狙いどおり、大きく改善されることになります。1回の募集広告で、8名ほどの応募がありました。また、そのレベルも、断然高いのです。そのうちの2名を採用することにしました。
 
また、内勤スタッフの採用を進めます。それにより、積算、契約、安全書類などの分業のための仕組みづくりを進めたのでした。
 
その後も営業を続けます。新規開拓したゼネコンから、見積もりの依頼が安定して入ってくるようになりました。また、受注も続きます。この時には、同時に5、6つの現場が動いている状態になっています。
 
次は外注業者が足りない状態になりました。
M社長は、昔からの知合いや、取引先からの紹介先を当たっていきます。最初は相手にもされませんでしたが、熱心に通い続けていると、仕事を請けてもらえる先が出始めました。
 
今はなんとか確保できているものの、この「工事施工者の人手不足」の問題は、今後も続くことになります。この業界も、成り手の不足と高齢化の状態なのです。
 
そこで、M社長は、次の目標を大工にしました。
本腰を据えて、自社で採用し、自社で育成することを決めたのでした。
給与制度を見直し、初任給を大きく上げました。また、評価制度を取り入れ、処遇にも差をつけるようにしました。
また、アパートを一棟購入し、自社の社員寮を整備することにしました。本人、そして、親御さんに、安心してもらうことができます。
 
改革に着手し2年半が経過しました。M社は、今期、年商7億の着地を予定しています。社員数は25名、大工の人数は変わらず、施工管理や内勤の社員が増えています。
そして、外注業者は、3倍以上になっています。
 
 
M社長は、その時々に、目標を持ってきました。
そして、その達成と共に、すぐに次の目標を設定しました。
 
最初は、「1億円級の案件の量産」の目標を持ちました。
そして、その実現のための「ゼネコンへの営業の仕組み」の目標を設定します。
 
それができると「取引先のゼネコンを増やす」という量産に本格的に取り掛かったのです。
そして、順調に「1億円級の案件の量産」を進めていきます。
 
次は、「施工管理者の量産」です。
そのため、「施工管理者を採用するための仕組み」と「施工管理者を動かすための仕組み」の整備を進めます。
また、内勤者の量産、とその内勤者を動かすための仕組みを整備します。
 
そして、「外注業者の量産」に移ったのです。
そのために、「外注業者と業務品質を共有する仕組み」と「その維持のための仕組み」を整備したのです。
 
いま、「大工の量産」に取り掛かっています。そのための仕組みを作っているのです。
 
 
M社長は、絶えず「何を量産しているのか?」と「何の量産の仕組みをつくっているのか?」の問いの答えを明確にしてきました。
そして、その目標を達成するまで、それに向かったのです。
その結果としての、この2年半という短期で大変貌を遂げられたのです。
 
事務所移転してから1年が経っています。M社長は言われました。
「1年でこんなに変わるものなのですね。」
 
今では、駅前のきれいなオフィスに、自分が通うことが普通になっています。そして、このオフィスもやや手狭になっています。そして、1億円級の案件も日常になっているのです。人間不思議なもので、すぐに慣れてしまうものなのです。
 
 
変革のスピードは、この二つの目標を明確に持つかどうかなのです。
「今、何の量産に取り掛かっているのか」
また
「今、何の量産の仕組みをつくっているのか」
 
この二つの目標を明確に持っているのであれば、自社は変化成長し続けていることになります。逆に、持たないのであれば、自社は向かう先を持たない、すなわち停滞の状態にあることになります。
 
社長が掲げる目標こそが、会社の成長スピードを決定するのです。

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