No.471:正しく会社が成長している時には、社長はどんどん暇になる?という現象

№471:正しく会社が成長している時には、社長はどんどん暇になる?という現象

この日は、K社長との面談です。
5年前に、変革を見事にやり遂げ、会社を変貌させました。
 
絶好調のはずですが、そうでも無いようです。
K社長は、言いました。
「ここ2年、また停滞しています。」
 
今後の方針についての説明があり、K社長は次の言葉を言いました。
「忙しい毎日を過ごしています。」
 
その言葉により、私の中で停滞の理由の予測が固まりました。


儲かる商売の絶対条件は次のものになります。
『顧客に刺さっていること』
 
顧客はそのサービスを見て、「いいね、それがあると助かるね」と言ってくれます。
そのサービスを得ることのメリットを、その人は十分感じてくれているのです。
 
この状態にあるからこそ、相手の興味を引くことができます。
 
そして、そこに次の条件が加わると、強い商売になります。
『自社ならではのもの』
 
それを提供できるのは、自社だけです。(競合は多くはありません。)
自社が長年積み上げてきた何かや、自社だけが持つ何かが、必要です。
 
それにより、同類のサービスと比べられた時に勝つことができます。
 
顧客への刺さりが強いほど、かつ、それが自社ならではであるほど、その商売は儲かることになります。強気の値付けもできるようになります。
 
「刺さっていない」、「他にありふれている」、そんなサービスを買う人はいません。
 
まずは、自社のサービスをこの視点で見直すことが必要です。
自社のサービスはお客様に刺さっているだろうか?
自社のサービスはありふれたものになっていないだろうか?
この二つの問いに、自信を持ってYESと答えられることが、スタートになります。
 
このような話を、過去に何度も聞いたことがあると思います。
しかし、この条件を満たすのは本当に難しいことです。そう簡単に、これをクリアするアイディアなど落ちていません。
しかし、事業を大きくするためには、これを避けることはできないのです。見つけるしか先に進めないのです。
 
 
上記の二つに、もう一つ次の条件を付け加えます。
これは、抜け落ちやすい視点です。上記の二つを満たしていても、これが無いと儲けることはできません。
『その顧客は、金を払う準備があること』
 
「刺さっており、自社しかない」となれば、当然それを手に入れるためにその人は喜んで金を払う、と思われるかもしれません。しかし、そうではないのです。そこは全くイコールではありません。
それでも「払わない人」は沢山いるのです。
少なくない会社がその「払わない人」を「顧客」だと信じ、極めて効率の悪い営業をしているのが現実なのです。
 
下記がその一例です。
 
・スキル系の講座を個人に売っている。ビジネスをやっている人(それを使って儲ける、経費で落ちる)を相手にしていない。
 
・全部お任せの金融サービスを、「自分で勉強し運用したい人」にアプローチしている。
 
・セミナーで実務担当者を集め、具体的なノウハウや情報を提供している。そのバックエンドの商品は、社長の決済を必要とするのに。
 
・ホームページの無い会社(広告費を使わない会社)に、WEBマーケティングの提案をしている。
 
その人達は、心の底から感謝してくれています。「ありがとう、勉強になった」と、そして、「本当に良いサービスですね」と褒めてもくれます。
 
しかし、買わないのです。金を払うつもりは無いのです。
金を払う準備のない人を「顧客」だと見誤ってはいけません。


変革の最初に手を付けるのは、必ず事業モデルです。
その理由は明確です。事業モデルこそが会社の伸びを決定づけるからです。
事業モデルが良ければ、自然と伸びていきます。
コンバージョンも容易にとれ、実際にそれほどの労力無しに売れていきます。
 
逆に事業モデルが悪ければ、何をやっても伸びません。良くできた仕組みも組織も、その多くは「無駄」になります。
 
その事業モデルが良いことが確認できると、仕組みと組織に手を入れることになります。
その事業モデルを回すための、効率的な仕組みと最適な組織を作るのです。
 
その結果、会社は「シンプルになる」道筋を得ることになります。
一つの強い事業が自然と伸びることになります。それが売りやすく、儲けやすいのです。
そして、その一つの事業に向けて仕組みが作られることになります。組織も作られてきます。
その過程で、多くのものが捨てられることになります。事業、顧客やサービス、そして、仕組み、どんどん切り捨てていくのです。
 
変革後には、必ず次の現象が起きます。
「売上げの伸びに反比例して、社内はシンプルになっていく。」
 
これは必ず起きます。
お客様が増えていくほど、社内での議論は一つの事業に絞られていきます。
社員が増えていくほど、業務はタンタンとこなされて、職場は静かになっていきます。
そして、売上げが増えるほどに、社長の自由になる時間は増えていきます。
 
これが正しい変革の流れです。
 
もし、売上げの増加と共に忙しくなっているのであれば、それは間違いです。
何か余計なことをやっているのです。
何か間違ったことをやっているのです。
そこでは、「複雑化」が起きております。
 
絞ったはずのメニューが増えている。絞ったはずの顧客が広がっている。
その結果、自社の事業定義やコアコンピタンスは崩れ、ぼやけてしまっているのです。
 
そして、仕組みも組織も向かうところを見失っているのです。その結果、無駄な書類や不効率な会議が増えていきます。社員の思考も分散を起こしていきます。
 
 
冒頭のK社では、正にその現象が起きていました。
 
5年前に変革し、2年間は順調に成長を続けていました。当時年商2.5億がその2年後には倍になっていました。しかし、その時期から停滞が始まりました。
「複雑化」を起こしていたのです。
 
K社長は、言われました。
「利益も出て、社員も増え、いろいろなことを取り入れてしまいました。」
 
これは、変革を成功させた社長が犯す間違いの代表格です。
十分な利益が出ていると、何か使わなければいけないと思い、新規事業を始める。
優秀な社員が入り、彼らはどんどん意見を言ってくれる。良いものはどんどん取り入れる。
世間で目立ち始めるので、いろいろな業者が営業に来る。システムなどを導入をしてしまう。
 
これらは決して悪いことではありません。
しかし、そこで色々やり過ぎてしまうのです。その結果、複雑化を起こしてしまうのです。
 
変革が終わり、その事業が当たっており売上げが伸びている時です。その伸びている時には、「複雑化しない」、「できるだけ何もしない(伸びることに任せる)」ことを肝に銘じる必要があります。
 
その結果、K社長までが忙しくなってしまっていたのです。
改革が進んでいる時、また、事業が伸びている時の、正しい社長の在り方は、「時間が余っている」状態です。
 
会社は仕組みで回っている。幹部と管理者が中心となり、打つべき手は進められている。
自分の考えは経営計画書により伝えられ、組織としてPDCAが回されている。
 
だから、「時間が余っている」状態になるのです。
その時間を更に考えることに当てることで、更に時間は余っていきます。
その時間を視察やメンターや顧客との面談に使うことができます。
 
その時の思考の中心も事業にあります。
刺さること、自社ならでは、そして、金を払う顧客。絶えずそれを考えています。
 
時間の経過と共に、それは必ず「ずれ」てきます。刺さっているものも、刺さらなくなります。
自社のノウハウを真似する競合は出てきます。環境は変っていくのです。
その対応に遅れた時に、会社は衰退していくことになるのです。
 
社長は、次の変革のために、その空いた時間を使うのです。
その重要な意思決定をするのです。
その事業に対する、意思決定の正しさと速さにより、スピードある成長発展を続けるのです。
 
まとめです。
 
・変革が必要な会社は、事業モデルの見直しから手を付けること。
間違っても組織や人事制度という一番遠いところに手を付けてはいけない。
 
・変革が終わり伸びている会社は、複雑化を絶えず注意すること。余計なことをして、スピードを鈍化させてはいけない。
 
・売上げの伸びと、社内や社長の忙しさは反比例する。そうであれば、順調な証拠である。
逆に、売上げの伸びと比例して、忙しくなっているようなら、何かが間違っていると考えること。

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