No.496:重要度は高いが、緊急度は低い。これに会社としてどう取り組むのか

№496:重要度は高いが、緊急度は低い。これに会社としてどう取り組むのか

システム開発業K社長が個別面談に来られました。
「先生、初めまして〇〇です。」
丁寧に頭を下げられます。
「やるべきことは解っているのですが、忙しくて中々手を付けられません。」
 
私は挨拶を返します。
「本日はありがとうございます。この個別面談は、御社の本当の問題を確認するための時間になります。よろしくお願いします。」
 
2時間後、K社長は感想を述べました。
「本当のやるべきことが解りました。この3年間頑張ってきたことが、全く間違っていたとは・・・」
多くの会社の停滞の理由が「やるべきことが間違っている」ことにあります。


会社は、大きくなるほど静かになります。
年商3千万円の会社よりも年商1億円の会社の方が静かです。
年商1億円の会社よりも年商3億円の会社の方が業務は坦々と回っています。
年商10億円の会社の社内は静寂に包まれています。
 
大きくなるほど、シンプルになります。
事業の数もメニューも減ります。すべてが仕組みで回るようになります。
その一方で、一つの部門、一人の担当の受け持ちの業務の範囲は狭くなります。
そして、それ以上に問題が起きなくなるのです。
 
いや、正確に表現をしておきましょう。
問題はあります。しかし、その問題に手を打てている状態になります。
各部署がその問題を解決するために、粛々と動いています。
その結果、突発的な問題も少なくなります。
また、起きたとしても、それに対処できる組織があります。
 
その突発的な問題の代表格は下記のものになります。
「売上が減った」、「社員が辞めた」、「メインの顧客に切られた」、「納期遅れが発生した」
年商数億企業はこのような問題に年がら年中追い回されています。
年商10億円の会社では、このような問題はなくなるのです。大きくなる過程でこのような問題は激減することになります。


なぜそうなるのか、その理由は明確です。
『やるべきことをやっているから』です。
 
時間管理の概念(手法)にアイゼンハワーマトリックスというものがあります。
業務を『緊急度』と『重要度』の軸で4つのグループに分け、管理する手法です。多くの人は『七つの習慣』でなじみがあるかもしれません。
 
第一領域:緊急度が高く、重要度も高い
例えば、「締め切りのある仕事」、「お客様からのクレーム対応」、「社員の退職」、「事故」。
先の「年商数億企業が抱える突発的な事象」に当たります。
当然、これは目の前で火事が起きているわけですから、何よりも早く対処する必要があります。
 
第二領域:緊急度は低いが、重要度は高い
「信頼関係づくり」、「準備や計画」、「研究開発」、「多くの仕組みづくり」。
緊急度が低いだけに手を付けるのが遅くなる傾向があります。そのまま時間が経てば、マズい状態を引き起こすことになります。すなわち、第一領域の事象が増えることになります。
第一領域の次に手を付けなければならないので「第二」領域になります。
 
第三領域:緊急度は高いが、重要度は低い
「突然の訪問」、「多くの電話やメール」、「多くの会議や報告書」、「無意味な付き合い」。
その多くは人からの頼まれ事となります。
一見、すぐに対応が必要なようですが、長期的な視点から見るとそれほど重要ではありません。やってもやらなくても影響はないのです。
 
第四領域:緊急度は低く、重要度も低い
「暇つぶし」、「単なる遊び」、「だらだらネット」、「その他意味のない活動」。
人の人生にとってはこのような時間も必要でしょうが、組織の成果という視点では、全く無駄なものになります。本来会社にはあってはいけないものです。
 
世の成功者と呼ばれる人達は、この概念の重要性を解っています。
「緊急ではないが、重要である」ことを選び、そして、それに手を付けているのです。
その結果、その成功とその名声を得ることになっているのです。
 
それに対し、第二領域には手を付けず、第三領域すなわち「頼まれ事」や第四領域の「暇つぶし」に多くの時間を使っていれば、その人の人生は平凡なものになります。
第二領域への取組みが、その人生の成果を決定づけるのです。
 
この概念は、個人だけでなく、完全に会社組織にも当てはまります。
会社として、第二領域に取り組んでいるかどうかです。
粛々と第二領域に取り組んでいる会社は、やはり大きな成果を収めることになります。そこに取り組んだ分、事業や仕組みは変っていきます。そして、第一領域の突発的な問題は少なくなっていきます。同時に、第三領域と第四領域は整理され、排除されていくことになります。
 
それに対し、第二領域に取り組んでいない会社は逆の状態に陥ることになります。
第一領域すなわち突発的な問題に対応する毎日になります。そこに多くの資源(時間・人・お金)が奪われることになります。
気づくと、社内は第三領域の業務だらけになっています。管理者や社員は、それを「大真面目」にこなしています。また一部の社員は、就業時間中にゲームやネットサーフィンという第四領域を行っています。
 
会社組織も個人と同様なのです。会社として、第二領域に取り組んでいるかどうかなのです。
第二領域に取り組んでいる会社は、確実に強くなっていきます。その結果、大きくなるのです。その結果、静かになっていくのです。
 
第二領域に取り組んでいない会社は、本質的に何も変わることはありません。一年後も何も変わっていないのです。その結果、社長はドタドタ、社内はてんやわんやになるのです。
当然、年商規模はそこで停滞することになります。その状態を何年も繰り返すことになります。


このコラムをお読みの賢明な読者の方々は次のことが解っていることでしょう。
 
自社の第二領域、すなわち重要度の高いやるべきことを選ぶ。
そして、組織として継続的にその第二領域への取組みを行う。
その中心にあるのが経営計画書であることを。
 
社長や経営者層は、現状と未来から考え、自社の方針と目標を決定します。
それを経営計画書に落とします。この「重要度が高く、緊急性がない」を記し、組織にその実現を明確に命じます。
 
そして、それを会社組織として定期的にチェックします。進捗と次にやるべきことを確認し、毎月確実に実行していきます。
それにより各部署各担当を、しっかり「やるべきこと」に向かわせることができます。それらは、第二領域の業務だけに「後回し」にされやすい傾向にあります。また、それらは未経験なものだけにその実現の負荷は大きくなります。
 
それをコントロールするのが、経営計画書なのです。
組織を、各部署を、各担当者を、第二領域に向かわせるのが経営計画書なのです。
それがなければ、管理者や社員が、第二領域が何か知ることはありません。また、進んでそれに取り組むことも無いのです。
 
第二領域に取り掛かるのは、個人同様に難しいものです。それを続けるのは更に難しいのです。いや、個人以上に組織で取り組むのは難しいのです。
 
私は、この「第二領域を選ぶこと」を『設計』という言葉で表現しています。
そして、その「第二領域に会社全体で継続的に取り組むこと」を『実行』と表現しています。
設計と実行、DESIGN&PROJECTです。


年商10億企業とは、第二領域をしっかり選ぶこと、第二領域をしっかり取り組むこと。その「やるべきこと」をやってきた会社なのです。
 
そして、その中心には、それに向かう社長がいます。
彼らは、第二領域をしっかり考える時間を作ります。年に一度か二度ホテルに籠ります。毎月、経営計画書を取り出し確認をします。
 
そして、それらを自分の手帳などで管理をします。そこには明確に、いつまでに何をするのかが書かれています。そして、毎週それを確認します。
そうでなければ、自分がそれらを後回しにしてしまうことを解っているのです。
 
そのサイクルの中で生まれた意思決定を組織に命じているのです。
その社長のサイクルに巻き込まれることで、会社全体が第二領域への取組みを継続することになるのです。
 
社長が、第二領域の取組みを決める。
そして、社長が第二領域の取組みの進捗を確認する。
だから、進むのです。だから彼らもやるのです。
 
冒頭のシステム開発業のK社長は、その重要性と自分の役目を解っていました。
また、そうでなければこのステージを抜けられないことも解っていました。
しかし、できないでいました。自身が案件にどっぷり浸かっています。
また、日々第一領域の対応に振り回されています。
 
そこで意を決し当社の面談に来られました。強制力を求めたのです。
 
面談が終わり、K社長は言われました。
「隙間時間をつくり、コツコツやってきた取組みも間違っていたとはショックです。」
 
K社長は、「社員教育」に力を入れていました。また、「新卒採用」もやっていました。
それらが今のK社にとっては『重要度』が低かったことに気づいたのです。
 
これは非常に多いケースです。根本的に間違ったことを第二領域として設定していたのです。そして、貴重な時間と労力を投じてしまっていたのです。
 
当然、それが成果に結びつくことはありません。
K社は第一領域だらけになりました。K社長はそれに対処する日々に陥っていたのです。
 
K社長、最後に笑顔で言われました。
「しかし、これで前に進むことができます。」
ゆっくりと頭を下げられます。
 
 
まとめです。
 
会社として、正しい第二領域を選ぶことが重要です。
長く成果が出ないのであれば、今やっていることを疑ってみることも重要です。
 
会社として、その第二領域に取り組むのです。
各部署や各担当をそれに向かわせることです。
 
そのためには、まず自分自身が考える時間を作ることです。
社長自身が第二領域の取組みをするのです。
 
社長がやるべきことをやる、だから、やるべきことをやる会社になるのです。

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