No.505:大方針を決める:スピードある成長発展のために、社長がやるべきこと
今日は、システム業S社の3か月に一度のコンサルティングです。
いつも通りこの3か月の振返りを行い、次の3か月で取り組むことを確認します。
我々は、それを終えると急いで側の居酒屋に場所を移しました。
暑さもあり、夕方になると喉が渇いてきます。(笑)
S社長は、最初の一杯を喉に流し込むと言われました。
「先生、このペースはきついですね。」
私は頷きます。
「そうですね、きついですね。」
「でもすごい勢いで会社が変わっているのを感じます。」
そう言うS社長の顔は自信に満ちています。
その時々において『大方針』を明確にする。
これにより、スピードある事業の成長発展が可能になります。
『大方針』とは、「それを実現することによって、自社を大きく前進させるほどの方針」のことを指します。
重点方針や重点目標と言ってもよいでしょう。それよりも「この瞬間においては、更に重要度が高い」というニュアンスを強めるために、私は『大方針』という言葉を使っています。
単年度の方針と目標は、『現状の延長』と『未来からの逆算』から導き出されます。
今ある問題を解決するために今期やることを決める、これが『現状の延長』になります。
5年後、3年後を描いて、そのプロセスを分解し今期やることを決める、これが『未来からの逆算』になります。
その両方から考え、単年度の方針と目標を決定します。
経営においては、この両方が必要になります。
『現状の延長』からの取組みだけでは、大きく飛躍することはできません。それどころか、時代に取り残されることになります。
『現状の延長』の取組みをしながら、『未来からの逆算』に挑戦していくことで、初めて、飛躍もできれば、時代を先取りし競合に勝つこともできるのです。
その両方の視点がぶつかっているのが『今』となります。
『今』というこの瞬間は、『現状の延長』と『未来からの逆算』の両方の活動が混じっている状態と言えます。
今日または今週という時間に、必ず『未来からの逆算』の取組みが入っている必要があるということです。
当然、繁忙期や緊急時にはそれが無くなることも仕方がないことです。
しかし、3か月というスパンで見た時に、それが無いという状態は、企業としては明らかにマズいのです。
あるスパンにおいて、我が社が絶対にやり切らないといけないことを『大方針』と言います。
大方針を明確に持っていますか?
社長やその幹部は、これに自信を持ってYESと答え、「大方針は3つあります。一つは・・・」と即答できる状態が必須なのです。
「明確である」とは、具体的な文章で表現されている状態を指します。
文章になっていないのはダメです。文章にすることで、初めて組織としての「意思決定」になります。そして、それは、行動がイメージできるほど具体的である必要があります。
具体性こそが、力なのです。
その具体性が管理者や社員に、行動への意欲を起こさせます。そして、彼らに対しプレッシャーにもなります。
曖昧な文章は、逆です。
その文章を読んでも、行動のイメージが持てません。
そのため管理者や社員はポカーンとしています。そして、自分には関係ないと思っています。
スピードある事業の成長発展において、重要となるのは『3か月』というスパンです。
1か月では短く何も成し遂げられません。その取組みは、どうしても小さなものになります。
それに対し、6か月は長すぎます。これでは、人やそのチームの意識や気力を保つことはできません。
『3か月』という期間であれば、そこそこ大きな目標の達成も、基幹となる仕組みの改善もすることができます。
また、その担当者や部門が集中力を保つことができます。
頻繁に「大方針の期間はどれぐらいで考えればよいですか?」と質問を受けます。
その期間は、1年でもよければ、1か月でも問題ありません。あくまでも、それをやれば大きく前進できれば良いわけです。
しかし、先の理由から、最も使い勝手が良く、効果的なものは『3か月』になります。
3か月に一度、大方針を管理者や社員と確認をします。
そのA4一枚には、次の3か月の方針と目標が書かれています。
1年に一度の経営計画書では、そのスパンが長く、どうしてもその粒度が大きいものになります。単月の目標では、そのスパンが短く、その粒度も細かすぎるのです。
丁度いいのが「3か月」です。3か月に一度、彼らに明確に示すのです。
「これが、次の3か月で絶対に成し遂げなければならない方針と目標である」と。
それは、ちょうど『四半期』となります。
S社長は、四半期の最後の月の中旬に、私との面談を入れます。
その面談で、この3か月の取組みと成果を確認します。そして、次の3か月について意見を求めます。必要であれば思い切った方針の変更もします。
また面談を入れることで、自分へ強制力を与えることもできます。
人に意見を求めるために、事前にしっかり考え書面に纏めることをします。
そのために、大きな視点、すなわち長期的な視点で方針の見直しをします。
S社長は、矢田との面談を「自分への怠け者対策」にしているのです。
この面談を入れないと、自分が日常に埋没してしまうこと、考えることや見直しをしないことを知っているのです。気づくと、数か月、1年という時が過ぎています。
四半期に一度、その方針書を持って、管理者と社員に説明をします。
そこには超具体的な方針と、誰がいつまでに何をするのか、目標が書かれています。
それは、『未来からの逆算』であるため、その実行もその実現も、やはり楽ではないものになります。
S社長は、ビールを飲み干し言われました。
「このペースはきついですね。」
3か月に一度、方針と目標を明確にする。そして、その取組みを追っていく。
これは、管理者や社員もきつければ、社長もきついのです。
それどころか、一番きついのは、社長なのです。
「未来からの逆算」だけにあって、その殆どに社長が関わることになります。
「でも、すごい勢いで会社が変わっているのを感じます。」
S社長の顔から自信が満ち溢れています。
そこには、やってみた者だけが知れる世界があります。
いままでが何だったのかと思えるほどのスピードがあります。
管理者や社員が動いて成果を出してくれます。
どんどん自分を取り巻く世界が変わっていくのです。
スピードある成長発展をしている会社は、必ずこれをやっています。
「やるべきことを決めている」
そして「それをやっている」のです。
それを愚直に続けているのです。3年もすれば、はるか先に行ってしまっているのです。
スピードの遅い会社は、これをやっていません。
やることを決めていません。決めているつもりでも文章にも、具体的にもなっていません。
その結果、誰も追い込まれていないのです。
その結果、それに手を付けられていないのです。3年前とそう変わっていないのです。
3か月のスパンでの大方針を明確にしてみてください。
A4一枚にまとめてください。
最初は、社長としての意思決定の苦しさ、「具体的」という文章の難しさ、を感じると思います。
それを乗り越えると、全く別の世界が待っています。
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