No.504:仕組化の重要性を社員に理解させたい・・・その正しいやり方とは?

№504:仕組化の重要性を社員に理解させたい・・・その正しいやり方とは?

マーケティング支援業N社長は万遍の笑みで言いました。
「先生、売れました。あの値段で売れました。」
 
N社長は、商品をパック化し、今までの倍の値付けをしました。
そして、実際に営業で使ってみると、驚くほどスムーズに契約が決まったのです。
 
N社長は少し落ち着いてから「次は仕組化を急ぎたいです。」と言われました。
そして、眉をひそめます。
 
私は次の言葉を待ちました。
「社員は仕組化の必要性を理解してくれるでしょうか。」
過去に仕組化に取り組んだものの、失敗した経験を持ちます。


変革には、恐怖が伴います。
それは当然です、いままで上手くいっていたやり方を捨てることになるからです。
 
年商数億の経営の延長に年商10億は無いのです。
 
そのやり方でいままで上手くやってこられたのです。しかし、この先に進もうと思うと、それではダメだということは解っています。
今の職人のような毎日でいいはずがありません。
事業も相手合わせでクリエイティヴが残っています。
社員も人は良いのですが、仕組みの発想がありません。
このままでは年商10億円どころか、少しも前に進むことは出来ないのです。
 
また、先を行っている知合いの経営者の皆が「やったほうが良いよ」と言ってくれます。
この先の世界を知っている彼らの言葉です。本当のことを言っていることも自分のために言ってくれていることも解ります。
 
ここで踏み出すか、踏み出さないか。
踏み出せば、人生が大きく変わるのです。しかし、何かを捨てることになります。
そこで生まれる恐怖を乗り越える必要があります。


冒頭のN社長は、半年前に変革に踏み出しました。
まずは商品のパック化を行いました。顧客が本当に求めるものを残し、その他の多くのものを捨てました。これでお客様は買いやすくなります。また、それにより内部をシンプルにすることができます。
「本当に、これでお客様に支持されるのだろうか」という思いが頭を過ります。
 
そして、値段の検討を行いました。
熟考のすえ、いままでの倍の値付けをしました。
今までと同じサービスです、それどころか、パック化した分クリエイティヴは下がり、工数は減っています。この値段で売れる自信はありません。
 
パック化、値決め、その理屈は、十分に理解はできています。
しかし、ここまで来ても踏み切れない自分がいます。
矢田に相談すると、「とりあえず次の見込客にぶつけてみましょう」と言われました。
N社長は、その言葉に背中を押される形で、翌週に入っていた新規の方との面談の際に使用することを決めたのでした。
 
そして、実際にそれを顧客に案内するとお客様からは「はい、それでお願いします。」と回答が来たのでした。
いままでのような見積もりをじっくり見られての値引きの要請はありません。また、「当社用のための具体的な提案」も必要ありません。するりと決まってしまったのです。
 
パックが売れたのです。倍の値段で売れたのです。
それも、驚くほどスムーズに売れたのです。
これであれば、社員でも売れるはずです。
N社長は、これを体験したのでした。


人は体験することで、本当の意味で「理解すること」になります。
N社長は、実際に売ってみるという体験をすることで、それを本当に理解するに至ったのです。それに対する恐怖も完全になくなっています。
 
体験することで理解ができます、体験しない限り理解はできないのです。
『新しいもの』とは、基本すべてがこれなのです。
 
・スマホが出た当初、今までの携帯電話で十分だと思っていました。
いざ使ってみると、これ無しでの生活は考えられなくなってしまいました。
 
・多くの経営者仲間からゴルフの楽しさは聞いていました。はまっている人を見ると「馬鹿だな」と思っていました。しかし、実際に始めてみると楽しいのです。
 
・先月はラオスに視察旅行にいってきました。そこでインフレを体験しました。
この国の良さ、そして、その恐ろしさは実際に現地に行ってみないと解らないことです。
 
N社長は、「パックを売ってみること」、「価値で値決めをして売ってみること」、その事業変革に取り掛かり、実際に体験したのです。
この一つの体験が、N社長自身の中に変革を起こしたのです。このノウハウは、N社長のモノになったのです。今となってしまえば、なぜあんなに恐怖を感じていたのかが解りません。
 
次に取り掛かるのは仕組化です。N社長は眉をひそめ言いました。
「社員は仕組化の必要性を理解してくれるでしょうか。」
 
この時のN社長の頭の中には、何人かの社員の顔が浮かんでいました。
彼らは、露骨にそれを出さないとしても、抵抗感は示してくると思われます。
 
私は答えました。
「仕組化を進めることは決まっているのです。一つひとつ進めていきましょう。」
案の定、一部の社員からは「忙しいので協力できません」や「仕事が増える」との声が上がりました。
 
N社長と仕組化の順番を決め、そして、巻き込む者を選び進めました。
その結果、半年ほど経つ時には、社内全体が少し仕組みで回るようになっていました。その頃には、営業担当者の手によって契約が決まっていきます。増える案件が仕組化の取組みを後押ししていきます。
N社長も自分で受け持つ案件や営業に呼ばれることも減っていきました。
 
それからまた6カ月が経ちます、変革に手をつけ1年半、仕組化に取り組み1年。
社内は完全に仕組みで回るようになっています。
 
N社長は、言われました。
「仕組化に非協力的だった社員が、今は一番活躍してくれています。」
元々頭の良かった社員らです。仕組みの恩恵を受け、そして、その仕組みを自分達で直し成果を出しています。彼らはそれを体験したのです。
 
よく社員にどう仕組化の重要性を説明しようかと悩む社長がいます。
また、社員に「やるかやらないか」の相談をしてしまう社長もいます。
そんなことを悩んでも、そんなことを聞いても仕方が無いのです。
 
彼らが本当の意味で仕組化の意味を理解するのは、それを体験した後です。
その恩恵を受けて初めて仕組化の重要性を知ることになります。
 
さっさと導入してしまう。それを体験させる。すると、彼らの意識が変わる。
これが正しい仕組化の進め方であり、正しい変革の姿なのです。
 
彼らの意識を変えてから導入、この流れはあり得ないのです。
それが通用するのは本当に優秀な社員だけです。(そんな社員であれば、元より仕組化の重要性を説く必要は無いのです。)
 
事業モデルを変え、実際にその成果を得るのです。
パック化、価値による値決めを体験するのです。
そして、仕組化を進め、その恩恵を得るのです。
仕事が楽になった、社員が辞めても混乱しなかった。それを体験するのです。
 
社長も社員も体験することでしか、それを理解することは無いのです。
早く体験することです。それにより今の恐怖を乗り越えることもできます。

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