No.515:そもそもなぜ社員は辞めるのか?入社後〇か月でその理由を推察する
その日は台風の影響で夕方から電車が止まるとのニュースが流れていました。
そんな日に、「帰れなくなってもよいので」と販促物製作業M社長は、事務所に相談に来られました。
「昨日また一人の社員が辞めたいと言ってきました。」
事前に頂いていた資料にも「退職率が高い」の文字があります。
現在の構成は、入社3年未満の社員が8割を占めています。
私は「何に原因があると思いますか?」と御聞きしました。
M社長は天を仰ぎ考えます。
「人間関係が悪く、事務所の雰囲気は良くありません。それでしょうか。」
年商10億円に進むためには、次の三つの獲得が必要になります。
その1.事業
事業が10億円(粗利3億)になるだけのポテンシャルを持っている必要があります。
今の事業は、年商数億のポテンシャルであるため、その規模で止まることになっています。年商10億に進むためには、10億のそれに変える必要があります。事業が、年商10億円に進むための条件を満たす必要があります。
その2.仕組み
その事業を仕組みで回せるようにします。仕組化することで「誰がやっても同じ結果が得られる」という再現性を獲得します。そのうえで、訓練の仕組みを整備し、「短期間で決まったことをその通りに出来る」ようにします。更に仕組みを整備することで、効率を高めます。
その3.組織
その出来上がった事業と仕組みの改善を続ける機能が組織です。それらは、時間の経過と共に問題が生じることになります。また、更に良いアイディアが降ってきます。
それを改善し事業を強いものに変えていきます。また、その仕組みの再現性と効率性を向上させます。組織が「変化」を担うのです。
事業・仕組み・組織です。
この獲得無くして、年商10億円に進むことは出来ません。
この三つの獲得前では、どんな施策も意味を成し得ません。人・もの・金でさえも意味を成さないのです。
「社員が辞めていく」という現象も、そのどれかの不備から引き起こされます。
そして、その退職するタイミングでその問題の在りかを、推察することができます。
1.入社8カ月(一年以内)
このタイミングでの退職には、事業の不整備が予測されます。
営業などの場で「企画」や「応用」、「人間力」というクリエイティヴが必要です。そのため優秀な社員以外は、成果を出すことができません。
並みの社員は、売れない、つくれない状態が続き、会社を去っていきます。
2.入社16か月(一年半)
このタイミングでの退職の原因は、仕組みにあります。
根本的に、その職場には「仕組みの発想」がありません。そのため、その多くが仕組化されていないのです。
その結果、同じようなミスが繰り返し起こっています。そして、その対策は「人」になっています。また、職場のルールが不明確であるため、人間関係が悪くなります。職場には上辺だけのコミュニケーションが蔓延し、一部の社員は陰口を言っています。
その結果、社員は疲弊し会社を辞めていきます。
3.入社32か月(2年半)
組織が出来ていないと、このタイミングで中核となった社員が辞めていきます。
組織が無いために、根本的な対策ができていません。そのすべてが対処であり、もぐら叩きの状態です。
また、会社に「未来への設計図」があるわけでもありません。具体的な何かに向って組織的にPDCAが回されていないのです。
そんな先の見えない状態に、優秀な社員は元気を無くしていきます。そして新天地を求めて去っていきます。
こうして、「大多数を占める入社3年未満の社員と、ぱっとしない古株数名の会社」が出来上がるのです。
販促物製作業M社長にこの説明をすると、感想を言われました。
「人間関係の悪さも仕組みにあるのですね。」
そして続けられます。
「では、仕組みを整備すれば、人間関係も良くなると言うことですか?」
社内の人間関係に長年振り回されてきたM社長です。(人間関係に目が行き過ぎるのは良くない状態です。)
私は答えました。「はい、その通りです。」
M社長は、一年間のコンサルティングプログラムを見事にやり切りました。
販促物製作業というクリエイティヴを排除しにくい事業を、社員でも売れるものに変えました。個人でその多くの業務をこなす体制を、仕組化し分業を進めました。
そして、まだ完全でないにしろ管理者が機能し始めています。
会社は変ったのです。
M社長は言われます。
「人間関係の問題は耳に入らなくなりました。また社内は明るくなりました。」
そう言われるM社長の顔付きも本来の穏やかさを取り戻しています。
M社長は思い出したように言われました。
「先生、この一年間、退職者は出ていません。」
一年前に辞表を持ってきた社員は、将来の幹部候補と目を付けていた人材です。
M社長は、「変革を進める、だから少しだけ待ってくれ。」と頭を下げたのでした。
そして、本気のM社長の様子を見て、その彼も手伝うことを申し出てくれたのでした。今ではその彼が、実質のナンバー2になっています。
事業・仕組み・組織が揃うと、当然のように伸びるようになります。
売上は130%、140%で推移し、利益も十分出せるようになります。
社員は活躍できるようになり、人間関係は良くなり、職場も明るくなります。
一方で合わない社員が排除されていきます。
そして、良い人材が採れるようになります。その人材が更に会社を押し上げてくれます。
事業・仕組み・組織が揃っていないと、当然伸びないのです。
売上は昨年105%か同様で、利益も僅かなものです。
社員は活躍できないままで、絶えず彼らは晴れない状態で、人間関係も悪くなります。
その状況のなか、まともな社員から辞めることになります。
そして、高額を投じ募集をかけても「まともでない人」しか採れないのです。その結果、社長と残った社員の負担は益々大きくなります。
どちらかのサイクルを選ぶ必要があります。
事業・仕組み・組織を得るか、得ないかです。
そのために、動くか動かないかです。
事業・仕組み・組織の前では、金・もの・人でさえも問題にならないのです。
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