No.521:社員に当事者意識を持たせたい、そのために何度も言う・・・無駄です。

№521:社員に当事者意識を持たせたい、そのために何度も言う・・・無駄です。

コンサルティング開始半年で、不動産業N社の売上は伸び始めました。
それに合わせ問題が起きていました。
 
「先生、当社の社員には当事者意識がありません。自分の目の前で問題が起きていても我関せずの姿勢なのです。」
私は手元でメモを取り続けます。
 
N社長は、声に力を入れて話を続けます。そして、一つの結論を出しました。
「先生、私は決めましたよ。彼らが当事者意識を持つまで、言い続けることにします。」
 
私は目線を上げ、柔らかい口調で言いました。
「N社長もう少し待ってください、そろそろ彼らにも当事者意識が芽生えてくるはずです。」


年商数億円から年商10億円に進む時に『組織』を獲得する必要があります。
これは何度も私の書籍やこのコラムでお伝えしてきた通りです。
 
それは言い換えると次のものになります。
『個人でやっていることを、組織でも出来るようにすること』
 
私たちは、個人として大きな二つの軸(サイクル)を持っています。
一つは『目標に向かって進む』という軸です。自分の人生で何がしたいのか、今自分が成し遂げたいもの、それを持って生きています。年に一度二度それについてしっかり考える時間をつくります。
 
そして、もう一つが『問題が起きたら解決する』という軸です。自分の目標を達成する過程で問題が起きます。また、人間関係のことや災害など大なり小なりの問題が起きます。それについて原因を分析し解決の方向性を決めます。
 
上記の二つの軸から考え、行動計画を立て、実行していきます。毎月や毎週など、その過程で進捗を確認し次の行動を決めます。そして、本当の重要事項に毎日少しでも取り掛かります。その際には、手帳に「ビジョン・目標・方針・価値観・ルール・行動計画」などを記し、絶えず目の届くところに置いて、忘れないようにします。
 
こうして、我々の人生は充実したものになります。また、心の安定と人間としての成長を得ることになります。
 
このような習慣(サイクル)を持つ人は、正に『成功者』だと言えます。
ほぼ全ての社長は、自分が勤め人であった時や創業当時には、こんな習慣を持っていませんでした。それが社長としての年月を積み上げていくと獲得するに至るのです。それと同時に、日々の充実と事業の成果を得るようになるのです。
 
まだ「自分はそこまでに至っていない」としても、これらの習慣が良いものであることは容易に想像ができることでしょう。特に、絶えず自分の理念・信念が問われる社長という人種には、このサイクルが必要になります。
 
この個人としての『成功』の習慣(サイクル)を得た後は、個人同様に『組織』として回せるように取り掛かります。
『目標を持つ、問題を解決する、そのための計画を立て実行していく。』
これは、組織として当たり前のサイクルです。
このサイクルこそが組織だと言えます。この組織の獲得こそが、年商数億円企業にとって最重要となるのです。


個人の成功サイクルを、組織で回せるようにすること、
これは、すごく当たり前のことのように聞こえます。
しかし、実際には多くの会社はそれを獲得できていません。
・社長だけが目標を持って動いており、社員は日々同じ作業を繰り返している。
・組織としての行動計画はなく、思い付きのように方針や指示が変わる。
・問題が起きると社長がその対処を指示する、管理者までもが指示待ち状態である。
全く『組織』として出来ていないのが実情なのです。
 
冒頭の不動産業N社も正にその状態でした。
コンサルティングが始まり最初の3か月で事業を再構築しました。それにより売上は増え始め、半年の時点で、昨年対比120%で推移するようになりました。
 
事業の次は組織づくりに取り掛かりました。それは「仕組みづくりの主体を社員にすること」でそれは実現されます。
ここで間違えを犯す社長が多くいます。仕組みを社長自らが作ってしまうのです。その結果、仕組みはできるものの、その後その仕組みを任せる相手がいない状態になります。社員は、その仕組みの意味を解っていません。また、仕組みの作り方も知りません。その後も社員は、問題に気づけなかったり、改善のアイディアが浮かばなかったりの状態になります。そこにモチベーションも主体性も生まれようが無いのです。
社長が仕組みをつくると一見早そうですが、実は遠回りになります。
 
当社では、「仕組みをつくる過程で社員を巻き込み、仕組みを稼働させる方法」をお伝えさせて頂いております。これにより、その後も社員主体で仕組みづくりとその改善がされることになります。いままで考えなかった社員(達)が、考える社員(達)に変わるのです。それが組織づくりの第一歩になります。
これも当社のユニークで独特なノウハウだと考えております。
 
N社でも社員を巻き込んでの仕組みづくりが始まっていました。N社長はまだこの段階では「社員の主体性」を感じることが出来ずにいました。
焦るN社長です。その結果、出てきた言葉が「当社の社員には当事者意識がありません。」でした。
 
そして、その対策を口にされました。
「私は、彼らが当事者意識を持つまで、言い続けることにします。」
私はN社長に「もう少しでその効果は出てくるはずですよ。」とお伝えました。
 
彼らは何年も、社員によっては十数年も「考えない働き方」をしてきたのです。また、職場には「意見を言わない文化」が根付いています。人間そうすぐには変われないのです。
しかし、変わりだすとそれは大きな波となりやってきます。
 
再度説明を聴きN社長は頭をかきながら言いました。
「すみません、また人に向かってしまいました。全然癖が抜けなくて。」
 
社員の主体性を導きだす、社員に当事者意識を持たせる、
そのための方法は、一つしかありません。
それは、『巻き込む』ことです。
 
『目標を持つ、問題を解決する、そのための計画を立て実行していく。』この組織として当然に持つサイクルの中に、社員を巻き込むことです。
その中で、社員は考えることになります。社員同士話し合うことになります。そして、自ら実行することになります。その結果、当事者意識も生まれ、成長することになるのです。
 
この獲得がすべてなのです。社員の当事者意識も社員の育成も、このサイクルの中でされるのです。
社長が言い続ける、これは全く無駄なことです。彼らの心はより離れていき、より口を閉ざすようになります。
 
研修を受けさせる、これもダメです。全く無駄とは言いませんが、その効果は限定的になります。そこにある構造(環境)は何も変わっていないのです。数日は元気がよいのですが、すぐに元に戻ってしまいます。
 
人事制度(評価・給与)、これも同様です。彼らは「動かない」のではありません、「動けない」のです。彼らを責めても仕方がありません、責めるべきは仕組みです。人事制度は仕組みの一部であり、本来の組織の機能を補強するものとなります。
 
私は、沢山の会社を見てきました。そこで、社員の中からこれはという者が出てくるのを実際に目の当たりにしました。そして、会社は一瞬で変わるのです。
 
そのためには、本質的なことに取り掛かるのです。
間違っても補助的な施策に多くの時間と金を使わないでください。それは順番が違います。
 
まずは、必要なものを獲得するべきなのです。
「個人として当たり前にやっているサイクルを組織でも出来るようにする」
ここに真っすぐに向かうのです。

矢田祐二
矢田 祐二

経営実務コンサルタント
株式会社ワイズサービス・コンサルティング 代表取締役
 
理工系大学卒業後、大手ゼネコンに入社。施工管理として、工程や品質の管理、組織の運営などを専門とする。当時、組織の生産性、プロジェクト管理について研究を開始。 その後、2002年にコンサルタントとして独立し、20年間以上一貫して中小企業の経営や事業構築の支援に携わる。
 
数億事業を10億、20億事業に成長させた実績を多く持ち、 数億事業で成長が停滞した企業の経営者からは、進言の内容が明確である、行うことが論理的で無駄がないと高い評価を得ている。
 
 

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