No.604:管理者が動かない、社員がやらない・・・その本当の原因とは?

№604:管理者が動かない、社員がやらない・・・その本当の原因とは?

特殊工事業S社長が、困った表情で言われました。
「彼を課長に上げたのですが、何もしないのです。」
 
S社はこの一年で、年商2億円から2億8千万円になりました。
そして、社員数も8名から12名に増えました。
 
そこで、最も経験の長い社員を課長に昇格させました。
「彼には、部下を管理してほしいのですが、何も変わりません。」
 
私は訊きました。
「その課長は、毎週、何をすることになっていますか?」

そもそも部下を管理する・・って何するの?


S社長は少し考えて答えました。
「部下を管理することです。もっと部下とコミュニケーションをとって、指導育成をしてほしいです。」
 
私は続けて訊きます。
「では、“部下を管理する”とは、具体的に何をすることですか?」
S社長は黙ってしまいました。
 
これが、管理者が育たない会社で起きていることです。
 
多くの会社では、管理者の役割が抽象的です。
「部下を管理する」「チームをまとめる」「売上をつくる」「部下を育てる」「リーダーシップを発揮する」どれも間違ってはいません。
 
しかし、どれも意味がありません。これでは管理者本人は動けないのです。
「部下を管理してください」と言われても、今日の朝、何をすればよいのか分からないのです。
「売上を上げてください」と言われても、何時に、誰に、何を確認すればよいのかわかりません。
 
社長は、「管理者なのだから、そのぐらい考えてほしい」と思っています。
しかし、それは無理なのです。そもそも管理者とは何をする人か、分からないのです。
 
管理者を任命するのであれば、まずは、「管理者は何をする人なのか」を具体的にしなければならないのです。

人が動くためには、「やること」と「やり方」が必要


人が動くためには、二つのものが必要です。
一つ目が、『やること』です。
 
やることとは、「何をするのか」です。具体的な作業や行動です。
営業課長であれば、例えば次のようなものです。
・週例で、チームを集め案件を確認する。
・朝礼では、各メンバーのその日の作業を確認する。
・毎日、〇〇をチェックし、必要であれば本人に確認をする
これが、「やること」です。
 
ここまで決まっていれば、管理者は少なくとも何をすればよいのかが分かります。
 
そして、二つ目が、『やり方』です。
やり方とは、「それをどうやるのか」です。
・案件進捗は案件管理表で確認する
・案件は「見込度」「次回行動」「期限」の三点を見る
・停滞案件については、原因を三分類する
・本人に答えを言う前に、まず次の行動を考えさせる
これが、「やり方」です。

多くの会社は、「やること」を飛ばしている


管理者育成がうまくいかない会社では、この順番が逆になっています。
または、飛んでいます。
 
例えば管理者研修に行かせます。
そこで、「部下とのコミュニケーションの取り方」、「リーダーシップ」、「目標管理」などを学びます。これらは、すべて「やり方」です。
 
しかし、実際には、自社で管理者が何をするのかが決まっていないのです。
この月に何をするか、月末や月初には何をするのか、この週は何をするのか、毎日何をするのか。
 
だから、研修から帰ってきても何も変わりません。
それを使う機会がないのです。本人も困っています。
「コーチングが大切なのはわかった。しかし、誰と、何について、どの頻度で話せばいいのか。」「PDCAを回せと言われた。しかし、どのタイミングでCをするのか。」
その結果、1週間もすれば、そのやる気も無くなっています。
 
そして社長は言います。
「研修に行かせても変わらない。」
 
当然でしょう。
やることが決まっていない人に、やり方だけを教えているのですから。

まず管理者の一週間をつくる


では、どうすればよいのか。最初にやるべきことは、管理者の仕事を具体化することです。
管理者の仕組みをつくる時には、まず「一週間」を決めます。
 
月曜日:全案件の進捗確認。目標との差額確認。
火曜日・・・
水曜日:新規見込客数と商談数の確認⇒社長と打合せ
木曜日・・・
金曜日:一週間の結果確認。翌週の重点行動の確認
 
これぐらい行動を具体化します。
ここまですれば、管理者の仕事が見えてきます。初めて管理者になった社員でも、まずはこれを行動することはできます。
 
その中で経験を積みます。
「この案件は危ない」「この社員には早めに声を掛けたほうがいい」「この数字が落ちると、来月の売上が落ちる」
この時に、「やり方」が問題になるのです。その「やり方」の習得のために、アドバイスをしたり、研修を提供したりします。
 
その結果、管理者が育つことになります。

人を育てる前に、仕事をつくる


管理者をつくるということは、役職を与えることではありません。
それは、管理者という仕事をつくることです。
 
そして、これは管理者だけの話ではありません。営業担当者も、施工管理者も、事務担当者も同じです。
 
多くの会社では、「もっと営業しろ」「現場をしっかり管理しろ」「先を読んで動け」と言います。しかし本人は、そもそも何をするのか=『やること』がわかっていないのです。
 
まず、『やること』を決める。
そのうえで、どうするのか=『やり方』を決めるのです。
 
やることが決まって、初めて、やり方を教えることができます。
 
人が動かないのではないのです、その多くは、やることが決まっていないのです。
人を育てる前に、まずその仕事をつくることです。
 
 
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矢田祐二
矢田 祐二

経営実務コンサルタント
株式会社ワイズサービス・コンサルティング 代表取締役
 
理工系大学卒業後、大手ゼネコンに入社。施工管理として、工程や品質の管理、組織の運営などを専門とする。当時、組織の生産性、プロジェクト管理について研究を開始。 その後、2002年にコンサルタントとして独立し、20年間以上一貫して中小企業の経営や事業構築の支援に携わる。
 
数億事業を10億、20億事業に成長させた実績を多く持ち、 数億事業で成長が停滞した企業の経営者からは、進言の内容が明確である、行うことが論理的で無駄がないと高い評価を得ている。
 
 

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