No.609:年商10億になるとは「普通の会社」になること。その先の注意事項
建設業F社長の報告から始まります。
「先生、今期で、人事制度、経理の仕組みは整いました。」
私は、この分野について深く訊くことはありません。
沈黙で次の話を促します。
F社長は、もっと話したそうな顔をします(笑)
そして、用意してきた次の話をします。
「来期以降の方針を考えてきました。」
私は、座り直します。
「はい、ぜひ聞かせてください。」
年商数億の会社には何もない
どんな会社も「普通の会社」になっていきます。
人事制度を導入します。経理を整備します。管理部門がしっかりしてきます。
そうして、どベンチャーも、普通の会社になっていきます。
これは悪いことではありません。こうでなければならないのです。
年商数億円の時代には、何もありませんでした。
当然、資本はありません。持っている現金も数千万しかありません。
そして、話の通じる社員も僅かです。募集を掛けても数名の応募しかありません。そこから無理して採ることになります。銀行に対し、1、2千万円の融資をお願いします。
これが年商10億を超えると全く変わります。
毎年利益が出て、内部留保が増えていきます。各部門には管理者がおり、細かい問題や人間関係のいざこざは対処してくれます。募集を掛ければ、自分より良い大学や大企業出身者の応募があります。
そして、絶えず業者からの提案があり、新しい仕組みがもたらされます。銀行が飛び込みで挨拶に来ます。
年商10億超えると、世の中がちやほやしてくれる
年商数億の会社には何もありません。それが、年商10億を超えると、世の中がちやほやしてくれるようになります。そして、更に年商20億になると、メディアも寄ってきます。
すごく変わります。その状態を目指して、頑張ってください(笑)
私のお役目は、この年商数億の会社にあります。何もない会社、誰にも相手にされない社長をお手伝いさせていただいております。
当社のコンサルティングを卒業して、その後、更に飛躍する社長がいます。
その一方で、「あれ、まだその同じステージにいましたか?」という社長もいます。
その差は何か。
この先の注意事項を、今思いつくものをいくつか挙げておきます。ここを意識するだけで、かなり「停滞を防げる」はずです。
1.大方針を持つこと
重点方針と言った方が分かりやすいでしょうか。それは必ず『外向き』でなければなりません。顧客はどうするか、マーケティングはどうあるべきか。次は市場で何を試すのか。それを、掲げ、絶えず挑戦するのです。
そして、挑戦させるのです。そうでなければ、組織はすぐに「安住」するようになります。
大きくなった分、構成員は勘違いしやすくなります。また、ルールが整備された分、固くなります。
そこで、もし社長が内向きになれば、すぐに組織病を発症します。大企業病と言ってもよいでしょう。重点方針に「管理者育成」や「組織改革」という内向きな項目を挙げれば一発です。セクショナリズム、顧客よりも自社を優先する発言、言い訳ばかりで取り組まない社員。それらが、社内に蔓延することになります。
組織の特性上ただでさえ、内向きになりやすいのです。社長は外向きであり、外の目標を掲げるのです。
2.抑えるところは抑える
社長が、離れ過ぎる、まかせ過ぎると、各段に遅くなります。正しい目標設定や後追いというマネジメントの仕組み(習慣)が無い会社であれば猶更です。その目標も自ずと低く無難なものになっていきます。
また、現場の状況が分からなくなります。意図的に隠していないかと思えるぐらいな時もあります。
係数で管理すること、定期ウオッチの仕組み、そして、社長の年間・月間ルーチンの設計が必要です。顧客の声、現場と繋がる仕組みが必要です。
距離感を間違えないことです。世の中は言います「任せることが大事」「任せてくれ」と。確かに、それも大事ですが、これも大事だということです。
3.もう一段大きく考える
このステージになると、周囲は色々なアドバイスをしてくれます。それはありがたいことです。でも、その「良い」もの全てを取り入れると、徐々に悪くなっていきます。
事業は小さく細切れになっていきます。そして、わずかな売上をあげる雑多なサービス、そして、色々な社内の仕事が増えてきます。そして、いつのまにか、今、「何を取りに行っているのか」が分からなくなります。
もう一段大きく考えることです。もう一段ステージを上げることを考えるのです。
そう考えれば、その多くは、細かいことであることが分かります。切り捨てることができます。人は暇だと余計なことを考えだします。組織も同じなのです。
もう一段、自分の欲を上げてみてください。そうしたら、またワクワクしてくるはずです。
4.よりシンプルにする
小さい会社ほど複雑なビジネスをしています。逆に、大きい会社ほどシンプルなビジネスを大きく展開しています。彼らは、限られた領域で、分業により、儲けの最大化を図っています。
このタイミングで、間違っても、複雑にしてはいけません。次のステージを目指すための事業以外はいりません。年商数億の市場もいりません。次は年商30億を考えるのです。
社長の時間の多くをそれに向けるのです。財務や資金調達も、もちろん大切です。ただ、それを支えてくれる専門家や担当者はいます。残るのは、事業モデルであり、大方針の決定です。
また、内部では複雑化の圧力が高まっていきます。人が人の仕事を増やそうとします。「あったほうがいいデータ収集」「いたほうがよい会議と招集されるメンバー」が無限に増えていきます。
人間は、「自分の存在意義を守る」生き物です。そういうモノなのです。
「それは無駄」「それはダメ」「それはやめよう」。これをはっきり言わなければなりません。
普通の会社で終わらせない
年商10億円を超え、会社はようやく「普通の会社」になりました。
そこで満足してはいけません。
会社を普通にするのは、仕組みです。
その会社を、普通で終わらせないのは社長です。
次にどの市場を取りに行くのか。
どんな事業モデルで、さらに会社を大きくするのか。
それを決めるのが、社長の仕事です。
この規模でも、社長次第ということは変わりがないのです。
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矢田 祐二
理工系大学卒業後、大手ゼネコンに入社。施工管理として、工程や品質の管理、組織の運営などを専門とする。当時、組織の生産性、プロジェクト管理について研究を開始。 その後、2002年にコンサルタントとして独立し、20年間以上一貫して中小企業の経営や事業構築の支援に携わる。
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