No.111:一つの成功事例、、、を10個、100個と作ることを考える

『矢田先生、本日はありがとうございました。』
玄関口まで、忙しいはずの社長が見送りに来られました。金属部品の試作と量産を行っている年商20億を越える会社です。
『今日の先生の話で、当社の収益性の悪さの根本的な理由が解りました。また、社長としての本当の仕事が解りました』と


我々の事業には、日々、お客様から無理な相談が寄せられます。そして、それに応えるために必死であり、社内は常に混乱状態にあります。
お客様自身にもお客様があり、その高くなる要望に応えるために必死です、だから、取引業者に対しても、その分高い要望をせざるを得ないことになります。
当然、その質もスピードも高いものを求められるため、社内には、大変な無理を強いることになります。
 
そして、その無理な要望に応えた先には、自社は革新の機会を得ることができます。要望に応えるために、必死で調べ、必死で開発し、その結果、自社は新しい技術やサービスを得ることが出来るのです。
また、我々の事業は、その高い要望に応えた時に売上げを得ることができます。お客様の困りごとを解決しお礼を言われ、お金を得る、仕事の喜びがここにあります。
 
しかし、これと、自社の事業が今後大きく発展するかどうかは、まったく別の問題となります。
企業は「お客様の困りごとを解決すること」で、存続を許されますが、より発展するかどうかは、その後の『その案件の扱い』で、道が分かれてきます。
 
●発展しない企業
その案件をクリアしたことを喜び、次の寄せられた無理難題に取り掛かります。そして、それを繰り返し、業界内で「技術が高い!」や「困りごとは〇〇に」というような高い評判を得ることになります。
社長も社員も、それを誇りに思っています。しかし、実は、それほど儲かっていません。忙しく動いた割に、お金が残っていないのです。
それに対し、 
 
●発展する企業
その案件を発見したことを喜び、その案件の展開に取り掛かります。世の中には、同じような課題を持ったお客様はあり、自社のこの提案はそのまま喜ばれるはずです。
見込客となりそうな企業情報を集め、営業をかけます。その結果、一つの成功事例で、2回、3回と売上げを得ることができます。
また、その案件を繰り返すことで、より効率的により成果を出すことができるようになります。その分野でNo.1のシェアを得ることも、メーカーになる選択も可能です、より大きく儲けることが出来るのです。
 
同じ無理難題をクリアした企業でも、その後の動きにより、その儲けに大きな差が出ます。
一方は1案件で1億、もう一方は1案件で10億。
そして、これが、そのまま社員一人当たりの稼ぐ効率(生産性)となります。前者は800万円、後者は1500万円と。
お客様の無理難題をクリアしたら、それを展開し、大きく儲けることを考える必要があります。納品して1回お金をもらって終わりではもったいないのです。


冒頭の金属試作量産会社のその日の会議でのこと、営業担当が誇らしげに報告をしました。
 
「A社の案件、無事納品をすることが出来ました。〇〇の加工を□□法に置き換えることで、時間あたりの生産量は4倍になり、不良の大幅な削減も実現しました、先方には大変喜んでいただけました。当社の技術担当と一緒にこの3カ月間連日残業し、やってきた甲斐がありました。皆さんのご協力ありがとうございました。」
一同拍手。
 
矢田、水を差すようで申し訳なかったのですが、このままでは・・・と、発言をさせて頂きました。
「今回、〇〇の加工を□□法に置き換えるという事例、他の会社にも提案できますか。同じような課題をもっている先はありますか。」
その問いに対して、社長が即答
「あります。絶対にあります!いくらでもあります。」
瞬時に質問の趣旨を理解したのは社長でした。
 
その後、社長の号令のもとに、提案書をまとめ、営業先のリストアップ、そして、訪問と、その一つの事例は、一つのサービスとして展開をされていきました。
その後、2カ月経過時点での成果で、4件の受注が確定。


一つの案件から、大きく育つ事業を見つける。一つの成功事例、、、を10個、100個と作ることを考える。
これが、日々「お客様の話を聴く」理由です。これは、どんな業種でも、どんな規模でも同じです。
 
・製造業では、お客様の改善要望から、大きく展開できる技術を開発します。
・設備業では、カスタマイズの設計の中から、専門機械メーカーになるチャンスを探します。
・文具メーカーでは、100の試作品から、1つの大ヒット商品を狙います。
・ソフトの開発業では、システム製作の中から、パッケージ販売できる商品を考えます。
・創業者は、「何でもやります」の営業スタイルから、自社の「これだ!」で勝負にでます。
 
御用聞きの中から 大きく展開できる事業の芽を探すのです。
この展開できるものを見つけられた時に、会社は大きく発展します。見つけられなければ、いつまでも発展することはできません、辛抱強く続けることです。
その日々の業務の中に、この「今の御用聞きは、大きく展開できる一つを探すため」という意図を持つことが重要になります。その意図を持っていないと、器用貧乏、貧乏暇なしという状況が続きます。


社長の一番の役目は、
・お客様が何を求めているかを知ること
そのために、自らお客様を定期訪問します。フェアなどに参加し、新たに自社に取り入れられる技術やサービスを探します。
ホームページからの問合せやお客様の営業担当への要望、お客様アンケートなど、外部の声には全て目を通します。
ここに社運がかかっています。
社長が事務所に居てはいけない理由はここにあります。
 
そして、決断です。
その複数の案件や情報の中から、大きく展開でき儲けられる一つを選びます。いいモノは沢山ありますが、限られた資源を集中させる必要があります。
また、この先、世の中や市場がどう変化するかは誰にもわかりません、それでも、社長の全身全霊を投じ取捨選択をするのです。
 
この選択が当たれば、繁栄  
外れれば、衰退
これが社長の「決断」です。そのための社長という存在です。

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