No.112:父である社長、専務である息子、、、協力して頑張るための条件

「社長である父と最近ケンカばかりしています」
社員数5名、パート20名、装飾品加工。
息子である専務が先導を切って仕組化を進めています。
「これからは、後継者である息子の代。その思いで会社を作ってくれればいい」
コンサルティングを取り入れる際に、社長の合意を得ていたはずが、事あるたびにぶつかると言うのです。
専務 「会社を良くしようと色々やっているのに、社長が協力的ではありません。」
 
矢田は意見を述べさせて頂きました、
「今の専務のやり方を続ける以上、この先も社長の協力を得ることはできないでしょう。また、社員の協力も得られません。」


組織を組織としてまとめるもの、そして、組織を組織として機能させるために最も重要なもの、それはただひとつしかありません、それは、『目的』です。
組織とは、ある目的を達成するために集められた人のかたまり(集団)と言えます。その組織に参加しているメンバーは、その目的に合意をしているからこそ、組織としての機能を発揮するのです。
もし、そのメンバーが、その目的に合意していない、または、それぞれが勝手な目的を持っている状態であれば、すでにその段階で組織とは言えないのです。
 
これは、企業に限らず、すべての組織に共通して言えることです。
例えば、
・マラソンの同好会
この同好会では、マラソンに参加する目的を「観光」としています。遠方のマラソンレースに参加し、一緒にその地域の観光もします。また、42キロも知らない街をその地域の人との触れ合いを楽しみながら走ります。ここに「タイムを良くしたい」や「3時間を切りたい」という違う目的を持った人が来ると困るのです。
・経営者の集まり
「良い会社をつくる」という目的の会に、「会で顧客を開拓しよう」や「飲みたい」という目的を持った人が入るとおかしなことになります。また、その「良い会社」という言葉の定義でさえも、バラツキます。これもしっかり定義しておく必要があります。
 
共通の目的さえ持っていれば、それぞれの考え方や属性や個性が異なっていたとしても、その道筋は大きく逸脱することはありません、最終的にはその目的により意見を収束することができます。
しかし、もし共通の目的を持たないのであれば、その道筋が合うことはなく、必ずいつかは別々の道を選ぶことになります。それは致し方が無いことであり、その方がお互いの為となります。
 
社長は、組織を形成し、より大きく顧客に貢献するために、その目的を明確にし、その目的のために一生懸命に働いてくれるメンバーを集めることが重要になります。
そのため、社員を採用する時には、会社や事業の目的をしっかり伝える必要があります。役員でも身内でも同じです、協力業者に対しても同じです、その目的に合意してくれた人に協力を仰ぐのです。
そして、さらに、その目的をどう達成するのか、その具体的な方針やスケジュールも伝えます。
その規模感やスピード感も合わせておく必要があります。年商1億を5年で2億にするのと10億にするのでは、その人にかける負担は大きく違います。
 
また、ビジネスを展開するのは、近場であるのか、全国であるのか、海外であるのかでは、その人の人生設計にも大きな影響を与えます。その目的達成への具体的な道のりも伝え、賛同を得る必要があります。
目的とともに、このイメージの共有が出来てこその組織であり協力なのです。


矢田は、冒頭の専務に、今後事業と会社をどうしていきたいのか、そのビジョンや方針をまとめて頂きました。
専務は強い危機感を持っていました。多くの同業社が廃業をしている状態で、自社のこの先は見えません、自社が生き残るためにはどうすればいいのか、今の事業のままでは10年後には確実に自社は無くなっています。そのための戦略を考えていました。
また、仕組化を進め、より効率を高め、収益力を高める必要があります。現状は、完全な家族経営で、社員は黙々と体を動かすだけです、彼らにも改善に参加してもらい、その能力も発揮し、働き甲斐も得てほしいと考えています。
 
専務は、まとめた書面をもって、父である社長とそしてその社長を40年間支えた母に面談を求めました、当初許された時間は30分でしたが、3時間にも及びました。
専務は言われました。
「社長も母も解ってくれたようです、私自身も父と母の気持ちを聴くことが出来ました。二人は、息子である私に継がせることをまだ迷っていたようです。周囲の同業社が廃業や倒産をするのを何社も観てきて、このままこの厳しい状況で息子に継がせていいものか、そして、こんな家にきた嫁にも、申し訳ないと思っていたそうです。このままの現状を維持し、時を見てたたむことも考えていたと言うのです、父と母の気持ちが知れて良かったです。」
 
危機感は共通で持ちながらも、見ている方向が違っていたのです。危機感の共有だけでは、協力して頑張ることは無理なのです。
その後、専務は、その書面を正式な経営計画としてまとめ、まずは、主要な社員に説明をし、協力を求めました。
その期末を待って社長に就任、合わせて経営計画発表会を開催しました。


目指す方向が違えば、身内であろうとも、一緒に働くことはできないのです。逆に、目指す方向が共有出来た時に、その達成のための前向きな意見交換ができます。
社長には、目指すべき方向性、すなわち、その目的とその達成のための道筋を表明する責任があります。
それに賛同できる人に協力を求め、厳しいがやりがいのある道を選びます、より大きく貢献できる道を選びます、賛同できない人とは、別れることになります。
 
これはやったほうがいい、とかそんなレベルの話ではありません、社長としてやらなければいけません、やらなければその人の人生を使う責任を果たせません、間違って採用された人はその被害者となります。また、顧客に貢献できるだけの組織の力も発揮できなくなります。
 
経営計画発表会が終了し、片付けをしていると、ご両親に声をかけていただけました、
「息子がお世話になっています。息子の発表を聞き、少し安心することができました。」
 
発表をしたところで、すぐに大きく何かが変わることはありません、でも、ここがスタートです。社長が描いたもの、望むもの、その表明無しには、先には進めません。

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