No.146部門協力、コスト意識が薄い、顧客第一主義の喪失、、、組織病が起きる真の原因とは、ずばり!

コラム№146

事務サービス関連T社、一連のコンサルティングは終了し、運用の段階に移っています。
 
「おはようございます」という私の言葉に返ってきた第一声が、
「矢田先生、怒れちゃいます。聴いてくださいよ~」
 
T社長がお客様を訪問して初めて発覚したことがありました。
自社の営業担当が、そのお客様から「御社は、こういうことができますか?」という問合せに対し、
「申し訳ありません、当社では対応できません」と、答えていました。
 
創業者であるT社長からすると、「なぜ、もっとハングリーに仕事を取りに行かないのだ」、
そして、「お客様が困っていることに、真剣に対応しないのだ」と、怒れてしまうのです。
 
そして、少し落ち着きを取り戻したT社長は言われました。
 
「でも、その営業担当の対応が、正しいのです。彼は間違っていないのです。」


「分業」と「ノウハウの展開」という組織化を進めると、効率は良くなり、生産性は飛躍的に高まることになります。
その効果を享受するために、さらに売上を増やし、さらに分業を進めることになります。
 
それにより、益々効率と生産性を高めることができます。
 
しかし、その一方で、『組織だからこそ起きる問題』を抱えることになります。
その問題は、「大組織病」や「組織の硬直化」、「セクショナリズム」などという言葉で表現されます。
 
・部門間で協力するという意識が薄れる
業務に境界線を引き、他の部門に対し無関心や不干渉の度を強くします。
協力して、問題を解決しようという姿勢が弱くなります。ひどいと、責任を擦り付け合います。
また、ある部門は毎日残業でも、隣の部門は協力を申し出ることもなく定時で帰るという、小規模だった時代には考えられない現象が起きます。
分業とは「その業務について、責任を持たせる」という狙いがあるわけですから、これらは起きて当然の現象となります。
 
・コスト意識が無くなる
現金に触れるのは社内のごく一部の人間となり、社内の人間のほとんどが、「お金」と関わらなくなります。
営業担当でさえも、見積書などの書面上のお金しか目にすることはありません。製造や事務スタッフになると、全く触れることはありません。
そのため、「お金はどこからか湧いてくる」とでも思っているような言動が見られます。
そして、会社の業績に無頓着なスタッフを増産することになります。
これも起きて当然の現象です。
効率化以外にも、不正防止やミス防止のためには、スタッフには、できるだけお金を触らせたくないのです。お金に関わるスタッフを限定したいのです。
我々は分業を進めるほどに、お金と関わらないスタッフをどんどん増やしていきます。
 
・顧客第一主義が喪失
お金同様に、組織の中には「お客様」と直接顔を合わせないスタッフだらけになります。
そのため、毎日お客様といる営業部門と内部である製造部門では温度差が生じます。
ひどい状態になると、営業がとってきた仕事に対して「また仕事を受けてきたの」や「そんな急な対応できません」など、顧客第一主義や自分たちの存在意義を見失った発言まで聞かれるようになります。
お客様のことを悪く言ったりすることもあります。
数名の会社では、お金もお客様もすぐ近くに感じることができます。
それが、数十名の組織化(分業)された会社では、お金もお客様も多くのスタッフにとっては、遠い存在になるのです。
 
 
このように組織だからこその問題が起きます。
ここで私が言いたいのは、「組織としての問題は、組織である以上、起きることは決まっている」ということです。
起きないわけがないのです。
そして、その時に起きる現象も明確なのです。
 
だからこそ、それを事前に防ぐ対策(仕組み)を仕込んでおくことが必要になります。
 
その組織に伴う問題に対する対策は、ジョブローテーションの実施、経営計画書の作り方、会議の運営の仕方、管理者の態度など、至るところにすることなります。
 
組織化の効果を享受するということは、同時にその問題をも抱えることになるという、正しい認識を持ち、その構築と共に対策を施していくのです。
この対策無しに、組織化(スタッフの増員と分業)を進めれば、当然問題が起きます。
 
それは、火を見るよりも明らかです。
 
また、間違った対策をとると、その組織病を助長することになります。
例えば、「責任と権限の明確化」や「職務規定の制定」などの取組みです。
これらの取組みが悪いわけではありません、その組織というものの根本的な理解が無い状態で対策を取ることに根本の問題があるのです。
そして、この取組みに対し「待っていました」とばかりに、組織病にすでに取りつかれた各部門は、益々自部門の「都合」を強く主張することになります。
「規定に書いていないから、やらない」という具合にです。
まさに、火に油を注ぐがごとくです。
 
組織病に対しては、当然に起きるモノとして、その対策を施しておくことと共に、
「ある程度は起きてしまうものとして受け入れる。それでも儲かる、狙い通りにお客様を満足させられる仕組みをつくる。」という認識が正しいのです。
組織病とは、持病であり、問題とならない程度に、上手に付き合っていくことが必要です。


冒頭のT社では、組織化が確実に進んでいました。
そのため「顧客や現場の情報が、正しく社長に上がってこない」という組織化に伴う問題を抱えることになりました。
その対策の一つとして、「社長が直接顧客を訪問し、自社のサービスや対応をヒアリングする」という仕組みを回し始めました。
 
その結果、判明したことが「営業担当がお客様の要望に対し、お断りをしていた」という事実です。
ある意味、予定通りに起きた事件であり、社長の直接訪問は、狙い通りの成果があったわけです。
 
組織として機能し、高い生産性を得るためには、各部門や各スタッフが、「決められたことを、決められた通りに行う」ことが必要となります。
それにより、各部門、各スタッフが、高いパフォーマンスを発揮でき、また、分業が機能します。
もし、「決められたことを行わない」という状態であれば、高いパフォーマンスを得られない状況どころか、組織として機能しなくなります。
 
それを理解しているT社長は、だからこそ、「その営業担当の彼の対応は、正しい。何も間違っていない」と言われたのです。
自社のサービスを正しく理解し、お客様の声をよく聴き、丁寧にお断りしたのです。
何も非はありません。
 
また、事業というものは、顧客やサービスを「定義する」すなわち「限定する」ことで、力を得ることができます。
それは、イコール「断る」ことを意味します。
強い事業は、必ず顧客を選別します。断ることをします。
このことからも、やはり「その営業担当の対応は、正しい」のです。
 
その事件を受け、T社長は対策を施しました。
 
営業日報に新たな欄を追加し、「お客様から言われた要望や問い合わせは、すべてを営業日報に書くこと」としました。
これこそが、組織化するからこそ問題が起きるという前提に立った、正しい対策なのです。
 
そして、このT社長が「組織というものを根本的に理解している」からこそできることがあります。
それは、「すべてを営業日報に書くこと」としたところにあります。
「すべてを」です。
 
これを「必要なことを営業日報に書くこと」や「重要なことを営業日報に書くこと」という具合に社員に取捨選択をさせれば、社長が本当にほしい情報は上がってこなくなります。
 
組織化を進めれば、組織病は起きます。組織病が問題なのではなく、組織病に対策を施していない状態が問題なのです。

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