No.163:社員と危機感を共有することは、どだい無理な話です。社員を動かすには、〇〇を用いることです。

コラム№163

『最近、社員と一緒に働くという意味が解ってきました』
クライアント、IT系サービス業T社長の言葉です。
 
席についての最初の言葉です。
矢田は、訊きました。
「何かございましたか?」
 
社長は、一枚のA3の紙を机の上に広げられました。
「今度の展示会の企画のために行ったマッピングです。」
 
手書きの文字、漫画絵、三次元でつながる線や矢印、ぐりぐりと強調された文字、熱のこもった検討会の様子が伝わってきます。
文字の特徴から、少なくとも3名がその場に参加したことが解ります。
 
「楽しそうですね」の私の感想に、T社長は「はい、楽しいです」と笑顔で答えます。


事業の成果は、大きく二つの要素によって決定されます。
この二つの積によって、成果が決定されます。
 
その一つが、「意思決定の良さ」となります。
そしてもう一つが、「実行の精度とスピード」となります。
 
「意思決定の良さ」とは、事業戦略や方針の部分になります。
・どういう会社をターゲット顧客にするのか。
・集客はどうおこなうか。値決めはどうするのか。
事業についてのすべてに対し「意思決定」をしていきます。
 
そして、「実行の精度とスピード」とは、この「意思決定」をいかに精度良く、いかに早く実現するかになります。
・製造部長が、今期の目標の不良率低減に取り組む。
・マーケティング課が、計画通りの販売促進を行う。
・現場は、マニュアル通り、顧客にサービスを提供する。
 
この両方が揃った時に初めて、高業績とスピードを持った成長が可能となります。
逆に、このどちらかが欠けた時には、停滞を迎えることになります。
 
「意思決定」の最重要事項である、戦略を間違えれば、営業担当が頑張っても売れることはありません。集客の方策を間違えれば、見込客を集めることはできません。
値決めを間違えれば、「顧客に価値が正しく伝わらない」、「忙しい割に儲からない」という状態になります。
 
また、「意思決定」が正しくても、「実行」をしなかったり、遅かったりでは、いつまでも成果につながることはありません。
・管理者は、忙しいことを理由に現場作業にどっぷり入っている。
・計画した販促策が、その時期になってもやられない、担当者は忘れている。
・現場では、マニュアルとは異なる方法で、サービスを提供している。注意しても、いつの間にか元に戻っている。
 
これでは、いつまでも結果がでず、その「意思決定」が正しいのかどうかも、判断のしようがありません。更なる改善もできないのです。
 
この「意思決定」と「実行」の両方が必要になります。
それにより、高業績とスピードを持った成長が可能になります。


この「意思決定」も「実行」も、年商10億を目指すのであれば、それに見合うモノが必要になります。
年商10億の戦略や方針には、それに見合った「意思決定」が必要になり、年商10億の「実行」には、それに見合った仕組みや組織が必要になります。
 
当社に、ご相談に来られるお客様には、必ず狙う「年商」をお聞きしています。
その狙う「年商」に応じた経営のやり方があります。
 
今現在、年商2億であり、年商4億を望まれるのであれば、それに適したやり方があります。現状の延長で考えることもできます。
 
もし、年商10億を目指すのであれば、それに応じた「意思決定」と「実行」の仕組みが必要になります。それも、スピードを望むのであればなおさらです。
 
その望まれる年商に応じ、そのための成長のステップを進言させていただいております。


冒頭のIT系サービス業T社長が、当社の事務所にご相談に来られたのは2年前になります。
その時、T社長が挙げた課題のひとつに次のものがありました。
 
「社員に危機感が無くて困っています。」
 
T社長は、変化のスピードが非常に速いIT業界だけに、近い将来、自社が取り残されるのではという危機感を持っていました。
また、日進月歩の技術革命により、自社のサービス(技術)自体がいらなくなることも予想されます。大手企業に真似をされる危険もはらんでいます。
 
いまのサービスで早く業界のシェアを取ること、その間に次のサービスを立ち上げることが必要である、と社長は考えていました。なんせスピードがほしいのです。
でも、社員は、のんびりしています。
 
そこまでお聴きして、矢田はお伝えさせて頂きました。
 
「社員と危機感を共有することは、できません。永遠に無理なことです。」
これには、T社長も驚かれていました。
 
 
社員は、「いつでも逃げられる状態」にあります。
自社が倒産しても、次に移ることができます。会社の業績が本当に悪くなれば、逃げればいいのです。
「社員」という雇用体系は、「逃げる権利を保証されている身分」と表現できます。
 
よく会社を「船」に例えることがあります。
会社は一艘の船であり、その船長が社長であり、船に乗ったのが社員であるというものです。
そして、その船を運命共同体として、協力して一生懸命働こうというものです。
 
しかし、この部分では、この「船」の例えは当てはまりません。
その船員は、いつでもその瞬間に船から消えることが可能です。
暴風に見舞われ船が沈没する時には、社員は船にいません。また、今後の天候が大荒れのようなら、降りることも選べます。
 
これが「社員」です。だから、社員は「給与」が安いのです。
それだけの「給与」しかもらっていないから、その権利があって当然です。
 
もし、本当に危機感を共有したいのであれば、まずはその「給与」を見直す必要があります。その権利を剥奪するだけの給与を支払う必要があるのです。
 
また、同じだけの情報を共有する必要があります。
社長が外に出ていき、得てきた顧客や業界の情報はもちろんのこと、会社の財務状況もです。これをやらない限り、社員はなぜ社長がそれだけ焦っているのか解りようがありません。
 
今現在が順調であればなおさらです。
船の食料は、まだ十分あります。そして、天候もよく順風そうです。
見える限り、危機は迫っていません。
この状況で、船員は危機感など持ちようがないのです。たとえ、船長が悪い予感を持っていたとしてでもです。船長が危機を語ろうとも、解ったようなふりをするのが精々です。
 
 
そして、彼らはしっかり理解しているのです、自分たちの役割を。
また、社長の役割をも理解しています。
 
現場のスタッフの役割は、いまの現場をしっかりこなすことです。
目の前のサービスをしっかりこなし、顧客を満足させる、その結果として、その日の稼ぎを出します。
管理者は、案件全体、部門の進捗を把握します。イレギュラーなことで、対応が必要であれば、解決策を示します。そして、計画を再度立て、軌道修正します。
また、現場スタッフがもっと効率よく業務ができるように、仕組みを改善します。
 
役職を言い換えれば、「この先の時間に対する責任」といえます。
現場のスタッフが責任を持つのは、その日その時となります。
主任は1か月先までを考えます。課長は1年、部長は2年先までという具合に、役職の高さが責任を持つこの先(未来)の長さといえます。
そして、社長は3年、、、未来永劫となります。
 
彼らは、自分たちの役目が、今をしっかりやることであることを認識しています。
今をしっかりやること、今の延長をしっかりやることであると正しく理解しているのです。
 
そして、合わせて、社長の役目は、「未来」を決めることであることも理解しています。社長は、自社の「未来」を全身全霊を持って創り上げてくれる、と信頼をしているのです。
 
社長の決めた「未来」をしっかり実現するのが、彼らの役目です。
社長が設計した「未来」を実現するために、管理者やスタッフが存在するのです。
そのために決定された「意思決定」をしっかりやれば、自分達も恵まれた生活ができると信じているのです。
 
 
この社長の「意思決定」こそが、会社の業績に大きな影響を与えます。
 
もし社長が船の行先という「意思決定」を間違えれば、社員がいくら精度よく実行してもその多くは無駄になります。
船にスピードがあっても、正しい方向を見いだせないのであれば、いつまでも楽園にはつかないのです。それどころか、確実に沈没に向かっていうことになります。時間の経過とともに確実に食料は減っていき、船は老朽化します。船員もこの瞬間も老けていきます。
 
「意思決定」と「実行」、どちらも必要ですが、「意思決定」のほうが断然その影響力は大きいのです。「意思決定」が正しければ、「実行」に多少問題があっても、確実に楽園に近づくことになります。
 
社長は、正しい「意思決定」をしなければなりません。
それに合わせ、「実行」を支える仕組みを作る必要があります。
それも、最短でです。


社員が、社長のように「危機感」を持つことはありません。
それは、夢の話です。
そして、それを望めば、社長自身の役割を放棄することになります。
 
危機感は共有できません。しかし、「目標」は共有することができます。
 
自分たちの船がどこに向かうのか、どうしてそっちに行きたいのか、そこにたどり着けば、どんな良い世界が待っているのか、それらは社員と共有することができます。
 
T社長は、自社が生き残るために、今後の事業の戦略と方針を立てられました。
そして、その実現のために社員や管理者に協力を依頼しました。
 
そのための一つの策が、今回の展示会への参加でした。
大きな出費となりましたが、新しいサービスへの投資として決断をしました。
その結果、社長は次の飛躍に向けた手ごたえを得ることができました。
 
そして、それ以上に、社員の巻き込み方、動かし方とその効果を実感することができました。
 
この展示会の成功のために、この半年間、社長と社員は、力を合わせ取り組んできました。真剣に意見を交わしてきました。
若いリーダーの台頭もありました。社員が、企画書からマニュアルの作成も行いました。
 
社長は言われます。
「2年前は、会議の8割は、私一人で話していました。今は、私が一番発言していません。最後に、決済を求められるぐらいです。」
 
 
危機感で社員は動きません。
社員を動かす時には、目標を用いることです。
それも明日からの行動につながるような具体的な目標をです。

矢田祐二
矢田 祐二

経営実務コンサルタント
株式会社ワイズサービス・コンサルティング 代表取締役
 
理工系大学卒業後、大手ゼネコンに入社。施工管理として、工程や品質の管理、組織の運営などを専門とする。当時、組織の生産性、プロジェクト管理について研究を開始。 その後、2002年にコンサルタントとして独立し、20年間以上一貫して中小企業の経営や事業構築の支援に携わる。
 
数億事業を10億、20億事業に成長させた実績を多く持ち、 数億事業で成長が停滞した企業の経営者からは、進言の内容が明確である、行うことが論理的で無駄がないと高い評価を得ている。
 
 

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