No.172:ニュースレター、飲み、ゴルフはもうやめてもいいですよ。「人間関係」や「人間」を売らなければならない根本的な理由とは?

コラム№172

「矢田先生、私の生活はこれでいいのでしょうか」
 
その日のコンサルティングの資料を準備していると、T社長が口を開きました。
私は、驚いて顔を上げると、そこには少し元気のない社長の顔があります。
 
T社では、仕組みも回り、売上げも順調に伸びています。
社長、少し間を置き、言葉を続けられます。
 
「最近、夜もほとんど出歩かなくなりました。週3日4日は、家で家族と食事をしています。昔は、経営者仲間と頻繁に飲みに行っていました。」
 
T社長、この状態にかえって不安を感じていたのです。
矢田はお答えさせていただきました。
 
「それが、正しい姿です。毎日誰かと飲むこと自体がおかしいのです。それこそ、年商10億事業の仕組みが出来ていない現れです。」


年商10億ビジネスの条件は大きく3つあります。
一つ目は、「年商10億を売るビジネスモデル」、二つ目は「年商10億をこなす分業」、そして三つ目は「年商10億、20億に育つ組織」となります。
 
この3つが出来た時に、年商数億の事業は年商10億に向けて前進を始めます。
この「売る」「分業」「組織」の3つが出来て初めて、社長は現場を離れ、社長本来の仕事ができるようになります。
 
この中でも、特に重要となるのが、一つ目の「年商10億を売るビジネスモデル」となります。これが出来ていないと、年商数億の規模で停滞することになります。
 
この年商数億から年商10億になるための「売る」要素のなかでも特に重要なものが、「売るモノがあること」です。
 
年商10億以上の企業では、必ずそこに売るモノが存在します。
 
明確に「当社はコレが得意です」があります。
コレは、こういう人に使用してもらえれば必ず喜んでもらえます。
そして、こういう価値を得ることができます。
これらの内容を含んだコレの価格はこちらになります。
 
このように、自社の特色を商品化し、顧客に伝わり易く、かつ買いやすい形で販売をしています。それにより、社員も売ることができます。
 
それに対し、年商数億企業の多くでは、売るモノがありません。
 
明確な当社の特色が打ち出せていません。
ターゲットとなる見込客像も不明確です。
一つひとつの案件に対し、ヒアリングから行い、提案をしています。
そして、一つひとつの見積もりを作成しています。
 
相手に合わせ商品(サービス)をつくっているのです。
そのため、顧客には伝わりにくく、買い難い状態になっています。
その結果、社員では売れなくなっています。
 
そういう売るモノのない会社の「売り」は、どうしても下記のようなものになります。
 
「技術力」「提案力」「スピード&親切」
そして
「お困りごとをお聞かせください」となります。
 
 
そして、この時の売り方は下記のようなものになります。
 
定期的にニュースレターを送り、関係を維持する。
ニュースレターの内容は、社内のイベントや社員の紹介であったりします。
それにより、思い出してもらい仕事につなげる。
 
定期的に自社主催の勉強会やイベントを開催する。
そのテーマは、経営やカルチャーという本業とは関係ないものであることも。
それにより、当社との関係を強くする。ショールームを観てもらう。
 
経営者の勉強会に参加する。
それにより、商売につなげる。
 
ゴルフや飲み会に参加する。
それにより、新しい見込客と出会い、人間関係を構築する。
 
 
これらの取組みの根底には、「売るモノがない」という事業の脆弱性にあります。
その結果、自社の商品(サービス)ではなく、人間を売ることになります。
 
自社に明確な特色やPRできるものがない、そして、売るものがない。
だから、人間関係で売るしかないのです。
人間関係の中から、仕事につなげる。特色がないから、人間関係で選ばれる必要がある。という事業の戦略なのです。
 
 
決してこれがダメとは言いません。
「人間関係の強化」の取組みは、多くのビジネスで必須です。
特に、BtoBの大型商談やサービス特性の大きい商品を売る事業では、人間関係の構築なしには、取引は成立しません。
 
しかし、問題となるのは、この時「お客様は何を買っているのか?」ということです。
お客様は「社長」を買っている。または、「その優秀な社員」を買っている。
顧客は、社長の提案や真剣さを買ってくれているのです。
そして、うれしいことに、たまに見込客まで紹介していただけます。その時「紹介したい先があるのだけど」と、社長指名で来ます。
契約が取れ、取引の段階で社員にバトンタッチすると、「社長はこないの?」となります。
 
これが、自身が望み、その通り狙ったものであれば、これほど強いビジネスはありません。他社のサラリーマン営業担当が同じ土俵で戦っても、適うはずがありません。そして、この形態であれば、社員に顧客を持って独立される心配もありません。
 
しかし、年商10億を目指すのであれば、問題があるのです。
売上げが増えれば、そのまま社長が忙しくなるだけです。その結果、社長は益々現場を離れられなくなります。
 
そして、その結果どうなるかを私は多く見てきました。この続きは、生々しくて本にも書けませんでした。
 
この結果、多くの社長は、「健康を害されます」。
日常業務で多忙な毎日な為、徐々に目から光が失われていきます。仕事が嫌いにまでなってきます。一向に改善されない状況に、イライラと焦りが積み重なってきます。そして、経営という面での思考回路が失われていきます。
そのイライラを解消するために、飲食の機会を増やします。糖質、揚げ物、お菓子、、、これらの食べ物はストレスと相性が良いのです。そして、変な太り方をしていきます。そして、体を壊し・・・。


自社に、特色ある商品を持てると、顧客層も売り方もガラリと変わることになります。
 
いままでの顧客は「社長の知り合い」がほとんどでした。
顧客リストを見ても、どこもその社長や担当者様の顔が思い浮かびます。
 
それが、知らない顧客ばかりになります。
見込客リストを見ても、知らない会社ばかりです。たまたま見たリストの中に、知り合いの会社がいて驚くこともあります。
 
売り方も、ニュースレターが必要なくなってきます。
残したとしても、ニュースレターの内容は、「顧客の喜ぶ」ものとなります。それは、当社の商品の活用の提案や他社の事例などです。
決して、社員の紹介や社内のイベントという「人間」を売る必要はなくなってきます。
 
ゴルフも勉強会も、参加する動機が変わってきます。
いままでは、「何とか仲良くなって、会社訪問し、課題を聞き出し、提案につなげる」という思いを少しは持って参加していました。それをしなければ、新規顧客の開拓がストップしてしまいます。
それが、純粋にゴルフを楽しめるようになります。勉強会も、本当に必要なものだけに参加すればよくなります。
知人からの紹介も「ラッキー」ぐらいになってきます。
 
飲む相手も選ぶようになります。
事業として得になる、または、自分を高めてくれる相手とだけ飲みに行きます。
その方とは、半年に1回のペースです。
接待の飲みも、お付き合いの飲みも必要なくなってきます。
 
 
余計なモノがこそげ落ちてきます。
残ったものは、自信のある商品とシンプルな売る仕組みだけとなっています。
そして、その仕組みを社員が回し、社員が売ってきます。
やることが減っている分、早いサイクルでその仕組みを改善することもできます。
社長もやることが減り、生活もその思考もシンプルになっていきます。
 
年商10億の企業では、沢山の社員が、シンプルな業務をやっています。
年商数億の企業では、少ない社員で、多くのことをやっているのです。
 
年商10億を目指す第一歩が、「売るモノを作る」です。
売るモノを作らない限り、やることは減らないのです。
社員も活躍できないのです。社長は現場を離れられないのです。


現在、T社では、売る仕組みが回り、社員が売ってきます。
顧客とは、サービスで繋がる状態ができています。
昔のような「社長」で繋がっていることはありません。
 
T社長、2年前の状況を振り返り、言われました。
「私は、進展の無い状況へのイライラや不安を解消するために毎日のように勉強会に参加していました。当時は、勉強会に参加すること、経営者仲間と飲むことで安心を得ようとしていたのかもしれません。」
 
 
多くのあるステージを越えた社長を観ていると、日々の過ごし方に、いくつもの共通点があることが解ります。
 
・毎日5時に起き、重要な仕事を行う。そして、社員が出社する時間には、その日の経営者としての仕事は終わっている。
・昼は、幹部や業者と打ち合わせ。
・夕方に事務所を出て、スポーツジムに寄り18時帰宅。18時30分から家族と食事。そして21時過ぎに消灯。
 
年商10億社長は、「小食」、「運動」、「早寝早起」。
職人社長は、「大食」、「肥満」、「遅寝遅起」。
 
年商10億に向けての取組みは、事業構造のすべてを作り変えることであり、それは同時に、社長自身の考え方から生活、そして、体型と心までをも変えることになります。

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