No.173:そもそも「組織をつくる」ってどういうこと?具体的に何をつくるのですか?

コラム№173

「矢田先生、何が起きているのでしょうか?」
 
年商6億、社員40名のIT系サービスS社長の言葉です。
この時、創業から5年、目標は上場でした。
 
社長は言葉を続けられます。
 
「会社の至る所で問題が勃発しています。昨年までは順調だったのです。何を間違えたのでしょうか?」
 
矢田はお応えしました。
 
「何を間違えたのかをあえて言えば、何もしてこなかったことです。」


組織とは何でしょうか?
組織をつくるとはどういうことなのでしょうか?
 
いままでこの問いを、多くの社長から頂きました。
そして、この説明を多くの社長にさせていただきました。
 
 
組織という言葉を辞書で調べると下記のように出てきます。
「一定の共通目標を達成するために、成員間の役割や機能が分化・統合されている集団。」
 
では、この組織をつくるとはどういうことでしょうか。
それを理解するためには、組織が組織として機能するために、何が必要かを正しく認識する必要があります。その出来によって、組織の能力が決定されます。
 
その組織の能力を決定づける要素は次の三つになります。
(1)資源 (2)システム (3)判断機能
 
この機能がある組織は強く、無い組織は弱い、という結果を生みます。
ホームページの作成会社を例にして説明をします。
 
(1)の資源は、お金や設備から、人やブランドなども含まれます。
これは、目に見えることもでき、その売り買いも容易にすることが可能です。
資源を多く持つ組織では、何をやるにしても選択肢を多く持て、それも大きな展開が可能となります。
ホームページ業者には、パソコンやサーバーなどの設備、そして営業担当者や制作者という人、そして、見込客を集める完成されたサイトという資源があります。
 
そして、(2)のシステムとは、「業務の機能的な流れ」を指します。
ホームページの問合せが来ると、まずは営業担当が訪問をします。そして、顧客から期待する成果や要望などをヒアリングします。それを社内に持ち帰り、制作の管理者と担当者と打ち合わせをし、引き継ぎます。成果を出すためにチームでアイディア出しをします。それを、デザイナーや外注業者に依頼し、成果の出るホームページに仕上げます。
この一連のプロセスのなかで、成果の出るホームページという価値が生み出されたのです。
 
企業は、何かしらの価値、すなわち付加価値を『自組織を通すこと』で生みだしているのです。その付加価値に、その会社の存在意義と稼ぎがあります。
このプロセスが良く出来ていれば、この先もより沢山のお客様に、成果の出るホームページを安定して提供することができます。
 
逆にこのプロセスが出来ていないと、次のような問題が起きることになります。
お客様の意向が制作に伝わっていない。チームで相乗効果が出せない。期限になっても外注業者から納品されない、それに対し催促を忘れている。
 
 
このシステムのなか、各担当は受け持ちの業務を遂行することになります。この各業務の中では、必ず何かの「判断」がされています。
営業担当は、「これをお客様に事前に伝えておいたほうがいいな」と判断し、その旨を伝えます。制作リーダーは、必要なタイミングでチームを招集し、打ち合わせをします。制作担当者は、外注先から提出されたデザインを見て、「これなら良い」と判断し、次の工程に渡します。
 
どんな業務でも、そのすべてに判断がされているのです。
この判断機能が弱い、または、無いと、下記のような怒れる事象を社長は毎日目にすることになります。
 
営業担当者は、お客様への説明の工程を勝手に省いています。チームリーダーは、自分の多忙を理由にチームを招集しません。制作担当者は、外注先からのデザインを「いまいち」と思いながらも人間関係を優先し、後工程に流しています。
管理者は、現場スタッフが間違ったことをしていても、注意をしません。
 
この(2)のシステムと(3)の判断機能が適切に整備されているからこそ、狙い通りの付加価値が生み出されるのです。
社長が狙った質とスピードでサービスを提供するためには、この2つの要素を組織として持つ必要があります。
 
(1)の資源は、必要なタイミングで補充することを考えることができます。
しかし、この(2)と(3)は一朝一夕にできるものではありません。日々、育てていく必要があるのです。ここにこそ、その企業の強さが宿るのです。そして、それが企業風土や文化と呼ばれるものにまでになってきます。
 
 
このシステムと判断機能のことを、総じて『仕組み』と呼びます。
ある目的に向けて、この仕組みと人が機能したときに、初めて『組織』と言えるものが誕生するのです。
 
これらを育てるために、我々のすべての取組みがあります。
経営計画書、方針書、マニュアル、データベース、そして、訓練制度、日々の会議や朝礼もです。
 
社内にあるものすべてが、システムと判断機能の強化のためにあるのです。
ここを正しく、それも強く認識して日々社長は取り組むことが必要となります。


創業当時の社員数名の小規模であれば、個人の能力で成果を出すことができました。これが、人数が増え、大きくなるにつれて個人の能力が、成果に与える影響は徐々に下がっていくことになります。
 
チームスポーツを観ればそれは良く理解できます。
テニスのダブルスでは、個々の能力が、結果に大きく影響します。
そして、6名で行うバレーボール、11名で行うサッカー、15名で行うラグビーと、人数が増えるほど、チームとしての力が必要になります。
その時、チームを支えるのが、全体をまとめる機能的なシステムと各ポジションの適切な判断機能です。これがチームの強い弱いを決めます。
 
個人の能力と組織の能力は一致しません。いくら優秀な選手を集めても、システムと判断機能がなければ、勝ちを得られないのです。
それが、組織戦というものです。
人数が増えるほど、個人の力が影響しなくなる、これを我々は、目指しているのです。
 
個人の力の影響が大きいという状態を残せば、それは、経営のリスクとなります。
社長や一部の優秀な社員がいつまでも案件に追われる。ホームページの出来にばらつきが大きい。スタッフが入れ替ったり、休んだりすると業務が混乱する。営業担当が、顧客を持って独立する。
 
この状態を早く脱したいのです。組織の能力を強めたいのです。
 
この組織の能力を高めることに取り組まないと、成長が停滞することになります。
これがよく言われる「組織の壁」や「〇億の壁」と言われるものの正体です。
 
いまは、組織の能力を高めるという目標を持って、システムと判断機能を高める時なのです。
これをせずに、社員の教育に向かうことや、右腕の獲得にすがるのは大きな間違いなのです。教育も右腕も、これは「個」に向かう行為です。
 
 
そして、年商10億以上を目指すのであれば、10億を捌くだけの人数を動かすシステムと判断機能の条件を織り込むことが必要になります。
 
また、その年商10億を瞬間点ではなく、今後も存続し、より大きく発展するために、変化成長を続ける仕組みを所持する必要があります。各担当が自分たちの業務を改善しない、マニュアルが更新されない、という状態では、ダメなのです。
それは、『時間軸で成長する』システムを導入することになります。


創業からこの5年間のS社の快進撃は、「個」が開発した一つの商品が素晴らしかったことにあります。
そのアイディアも完成度も高い商品は、すぐに業界に拡がりました。
 
今後より大きく稼ぐために、また、その年商を維持するためにも、その商品の改良と新商品を市場に投入し続ける必要があります。
そのためには、個の能力ではなく、組織として成果を積み続ける仕組みが必要になります。
 
個の生み出したヒット商品の勢いで、そのまま上場を果たした会社は多くあります。そのような企業は、その後組織的な問題で苦労することになります。
 
あのS社長との初会から、4年が経っています。
当時を振り返り、S社長は言われます。
「いま思えば、あのタイミングでいろいろ問題が起きてくれてよかったです。(笑)」
 
 
個の能力と組織の能力は、全く相関性はありません。
しかるべき時に、しかるべきことに取り組むこと、それをしないままでの拡大も成果も有り得ないのです。

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