No.228:成長過程に入ったクライアントから必ず出る相談はズバリ!「昔からの管理者〇〇さんの扱い・・・」
N社は、小型設備メーカーです。
矢田が訪問すると、N社長は、嬉しそうに話し始めました。
「矢田先生、先月お話しした工事案件は、大きな赤字を出して終わりました。」
新発売した設備には、工事が伴います。その工事の見積価格を、500万円で出していました。それに550万円かかったのです。販管費どころか、工事費だけで赤字です。
私も答えます。「良かったですね。」
N社長、繰り返します。「良かったです。会社として貴重な経験をすることができました。」
そして続けます。
「今回、今後を見据えた社員の棚卸もできました。」
年商数億の会社に、年商10億の条件が揃うと、驚くほどのスピードで売上げが伸びていきます。それに追われるように、人は増え、仕組みも整備されていきます。
その成長の過程で、人の入れ替わりが起きます。
多くの人が去っていきます。そして、それに代わって、多くの人が入ってきます。
このタイミングで、クライアントから矢田に相談があります。この相談は、例外なく、すべてのクライアントであります。
「矢田先生、管理者の〇〇さんをどうすればよいか、悩んでいます。」
成長する会社に、管理者が間に合わなくなっているのです。
今までは、真面目に作業をやってくれれば、それでよかったのです。しかし、次のステージでは、管理者に、マネジメントや仕組みをつくることが求められます。
それが、出来ないのです。
年商数億から年商10億へ変革する時、すべてが変わります。
まずは、『事業定義』が変わります。
いままで「ホームページ製作」を売ってきました。それが、「一つのパッケージ」を売る様になります。
「設備の設計から製造」をしてきた会社は、「〇〇の専門メーカー」になっています。
そして、その中で『社員の定義』も変わってきます。
いままでは「デザイナーの社員」がいました。いまは、「営業とプロデューサー的な社員」がいるだけです。制作の多くを外注に出し、そのコントロールをするのが社員の仕事です。
そして、当然のように『管理者の役目』も変わってきます。
社長と横一線の社員の文鎮型組織でした。管理者は、音頭を取りながらも、他の作業スタッフに交じり現場をこなすことが役目でした。
そこに階層が必要になります。管理者の役目は、「人を使い成果を出すこと」、より効率を高めるための「仕組みづくり」になってきます。
事業が変わるのに伴い、会社が大きくなるのに伴い、管理者に求められるものが変わるのです。『管理者、お前も変わってくれ!』です。
でも、そう簡単に人は変われるものではありません。いままで数十年、それでやってきたのです。それが、「成功パターン」だったのです。
管理者自身も悩むことになります。「どうしたらいいのか?自分は、何を求められているのか?」。
社長も悩みます。「どうやったら引き上げられるのだろうか」。研修に行かせたり、面談をしたり。
その悩みは、ある時期を過ぎると変わってきます。「どう扱えばいいのか?」。
若くて優秀で、より安い給与の社員が後から入ってきます。だからといって、そう簡単に入れ替えるということもできません。その管理者が、若い人が伸びるのに蓋をしているようにも見えてきます。
この相談は、すべてのクライアントから受けます。例外なくすべてです。
そして、その多くの企業では、その管理者は去っていくことになります。一方で、そうならない企業もあります。
割合は少ないですが、その管理者が、そのまま活きているケースもあります。
それは、以下のどちらかのパターンになります。
1.その今の能力でこなせる業務を与える。
建設業であれば、安全パトロールや協議会、元請けの挨拶回りの専任にします。その人柄とその年齢も「受け」が良いのです。役職名は、安全部長です。
ある程度のボリュームと切り分けできる仕事の確保が条件になります。
2.その人が、新しい管理者の能力を獲得する。
いままでの管理者の定義と経験を捨て、新たな管理者の定義と能力を、自分で獲得できる人が残っていきます。
これが、会社にとっても、本人にとっても、一番幸せです。
自分で自分を変えられる人、その環境に合わせ自分を変えられる人だけが残っていきます。
『勉強する』
その意味を調べると、「学業・技能などを身につけようと努力すること。」とあります。
この意味を見ると、「勉強」に必要なものが見えてきます。
『能動的』であることが絶対に必要です。その能動的とは、「自分から他へはたらきかけるさま。」となります。
勉強とは、「何かを身に付けるために、自分から自分へ、働きかけること」を意味します。
勉強する社員が欲しいのです。自分を変えるために動く社員が欲しいのです。
そんな人は、会社のステージが変わっても、自分を変えて付いてきてくれます。そんな人だけが残っていきます。
冒頭のN社長は、この案件を、今後の大きな展開に向けた試金石になるものと考えていました。
まだ、専門部署はありません。各部門から寄せ集めで、プロジェクトを進めます。なんとか受注に漕ぎつけ、いよいよ据え付け施工という段階で問題が起きました。
当てにしていた施工業者に、逃げられたのです。
社長は、粘り強く頭を下げました。それと同時に、他の業者にも声をかけました。
その結果は、調達できず。
N社長は、最後の手段を決めました。「自社の社員で施工しよう」。
社員に協力を依頼します。
その時の社員の反応は、大きく2つに分かれました。
一つは、「今後、この設備を展開するうえで、施工のやり方を自分たちが知っておくことは非常に重要になります。よい機会になります。」と答えました。
そして、このグループは、現場でも、意見と知恵を出します。遠征先のホテルに戻っても、翌日以降の段取りを話し合います。
もう一方は、口には出さないものの、面倒くさそうにするメンバーがいます。現場でも、気怠そうに動いています。夜は飲みに出ているようでした。
N社長は、自社の社員の意識の差の大きさに、驚きました。
前者は、前向きです。この機会をチャンスと捉えています。そして、自分達でいろいろ考え行動し、それを自分の経験として貪っていきます。
後者は、後向きです。その機会を面倒と捉えました。そして、指示を待っています。できれば、これ以上面倒事が増えないように身を潜めています。彼らの小言が耳に入ってきました。「これだけ苦労して赤字。やってもしょうがない。」
前者は、自分を変えることを選びました。後者は、自分は変わらないことを選びました。
工事が終わったタイミングで、矢田とのコンサルティングの日がありました。
矢田は、進言しました。「この経験を、会社のナレッジとしてください。」
N社長も、もう解っています。「はい、すぐに取り掛かります。」
N社長は、その後、プロジェクトメンバーを編成し直しました。
立ち上がるか解らない新規事業だけに、前者の「能動的に動くこと」、「自分を変えること」に喜びを感じるメンバーとしか、出来ないと考えました。
そして、そのメンバーと、工事の積算、施工手順書やマニュアル、治具の見直し等を行いました。展開に向けての準備です。
この一つの案件から、多くのことを勉強できました。事前に多くの問題に対策を打つことができました。会社として、能動的に動き、会社を変えるための機会としたのです。
個人が成長するためには、その本人が「自分を変える」ために、「能動的」に考え動くことが必要です。それにより、一つの能力を身に付けることができます。
その能力は、技となり、再現性を生むことになります。
それにより、この先も、同じように成果を得ることができます。
会社も、会社として、この勉強のサイクルを持つ必要があります。
「会社を変える」ために、「能動的に」考え動く組織をつくる必要があります。
それにより、一つの仕組みが作り変えられます。
そして、その再現性を持った仕組みが、大きな成果を会社にもたらしてくれます。
いままでの会社は、社長や一部の優秀な社員だけが勉強をしていました。その能力は、あくまでも個人が所有していました。
その能力を、個人のもので終わらせてはいけません。会社のものにするための取組みに進むのです。「会社の能力」イコール「仕組み」なのです。
その「会社の仕組み」を進化させ続けるために、「能動的で」、「自分で自分を変えられる人」が絶対に必要になります。このように考えた時、その目の前の管理者をこのまま残すべきかどうかは、自ずと出てきます。
また、社長自身が、何を勉強するべきなのかも、明確になります。
社長に、仕組みの発想がなければ、「能動的で」、「自分で自分を変えられる人」が居たとしても、その人材を活かしきれません。「仕組みにせよ!」という指示が出せなければ、それはその個人の能力のままなのです。
その結果、優秀な管理者には見切りを付けられることになります。「変われない社長」正確には「変わることを選ばない社長」の元にはいられないのです。
彼らは、自分が変われる環境を求めています。そんな環境でしか生きられないのです。その環境を提供できる会社に成る必要があります。
その環境を提供し続けられる社長で有る必要があります。
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