No.261:人事評価を間違って使っている会社は非常に多い。そんな会社では、決まって組織化が進んでいません。そこで起きていることとは?

№261:人事評価を間違って使っている会社は非常に多い。そんな会社では、決まって組織化が進んでいません。そこで起きていることとは?

「矢田先生、先月行った人事評価から当社の課題が浮き彫りになりました。」
住宅系サービスを展開するN社長は、興奮気味に話をされます。
 
「採用した社員の訓練期間が長すぎたようです。そして、その研修の意図を本人にも・・・。」
 
私は、相槌を打ちながら、N社長との最初の面談を思い出していました。あれから2年が経過しています。N社長の言葉が、10億企業の社長のそれに置き換わっていることを感じることができます。
 
最初の面談の時のN社長の関心ごとは、「人」にありました。
いまでは、全く興味が無いようです。


「教育」と「仕組み」は、全く逆の方向にあります。
 
ある一つの業務をこなすために、今は、レベル「8」の能力が必要だとします。
その業務を担ってもらうために、社員を採用します。その社員はレベル「5」です。
 
その社員のレベル「5」を、レベル「8」に上げようとする行為を『教育』といいます。
それに対し、今の業務のレベルを「5」に下げようとする行為を『仕組み(仕組化)』といいます。
 
我々は、この後者の取組みを選ばなければなりません。
仕組みにすることで、業務のレベルを「5」まで下げられれば、レベル「5」の社員で間に合うことになります。その分だけ、人の調達は楽になります。そして、その分だけ、事業の展開を早くすることができます。
 
そして、さらに仕組みに向かいます。次は、レベル「3」の社員でも、出来るようにします。または、システムや機械に置き換えることを目指します。
 
これが『教育』、すなわち、レベル5の社員をレベル8に上げる取組みに向かえば、沼に嵌ることになります。人はそう簡単に変えることはできません。そして、育ったころに辞めていきます。何も積み上がるものがありません。


この「採用した人を短期間で戦力化し、効率よく稼ぐ仕組み」の出来具合を評価し、改善するサイクルを回します。
そのサイクルを支えるものの一つが、『人事評価制度』になります。
・雇った社員が、予定通り〇週間で業務ができるようになる。
・新任の店長が、最低限のマネジメントのサイクルを回すことができる。
・現場のスタッフの退職率は、低く抑えられている。
 
定期的に社員の能力や業務の達成度合いを評価することで、仕組みの出来と課題を確認することができます。そして、その結果を受けて更に改善し完成度を高めることができます。
 
雇った社員の育ちが遅いのも、新任の店長がマネジメント業務をできないのも、現場のスタッフの退職率が高いのも、すべては仕組みの問題なのです。
今の仕組みがそのように出来ているから、その状態になっているのです。
 
冒頭のN社長は、半期に一度の人事評価を実施することで、二つの大きな課題を見つけることができました。
一つは、「営業担当の初期研修期間が〇カ月と長いために、本人のモチベーションが下がっていること」があります。もう一つは、「新卒採用者に、管理側に移った時に現場業務の経験が必要であることを、しっかり伝えていないために、その自覚が育っていないこと」です。
 
人事評価制度の結果を受けて、幹部数名と意見交換を行いました。また、トレーナー側のヒアリングも行いました。その結果、この改善点を得ることになりました。仕組みを変える機会を得たのです。
 
N社では、毎年このサイクルを回すことが出来ています。毎年、「人を採用し、戦力化する仕組み」や、「スタッフで稼ぐ仕組み」、「管理者でマネジメントサイクルを回す仕組み」を、強化しているのです。
 
N社長は言われました。
「当時は、人ばかりを見ていました。人を評価し、人を変えるための人事評価制度でした。面談では評価の結果を突きつけ、相手を叱ったこともありました。今思えば、なんでそんな発想をしていたのか不思議で仕方がありません。」


「仕組み」でなく、「教育」に向かってはいけません。
正しく「仕組み」に向かう会社は、人事評価制度を正しく使うことができます。
「教育」に向かう会社では、人事評価制度を間違って使うことになります。「人を裁くこと」、「人を選別すること」という、人事評価制度の4番目ぐらいの目的だけに使用します。
人事評価制度の本当の効果を得ることができないのです。
 
そして、そんな会社では、その人事評価制度を『組織』として運用が出来ていません。
・7月の評価実施の時期に社長が自ら評価シートを配ります。その時期に言い出す人はいません。社長が忘れていれば、そのまま実施されないことになります。
・面談のスケジュールを調整することも大変です。各部は、面談に対しても非協力的です。
・評価の結果から人事考課や給与の見直しなど運営のすべてを社長が抱えています。誰かに依頼することもできません。幹部は我関せずという状態で、人事制度の内容についても話し合うことはありません。
 
ここでも「仕組み」の発想がないため、または、仕組化が下手なために、『人事制度の運用』を仕組みにできていないのです。その結果、社長が抱えることになります。社長が言い出さないと何も進まないという状態になっているのです。
 
また、仕組みとして改善のサイクルをまともに回せていないために、人事制度自体も良くなることがありません。社長が手を付けた時にだけ、少し変わります。そして、幹部や管理者は、人事制度には「口を出してはいけない」と思うようになります。
それは、そのまま彼らの『人』という資源に対する興味の喪失に繋がります。
 
口では社長に合わせ「人がどうだか」と言います。しかし、実際には、それほど本気では無いのです。人事制度のサイクルに関わらせていないから、幹部までも、その対象である「人」に興味を失くしています。
 
この現象は、「金」でも同じことになります。
「仕組み」に向かう会社は、月次決算などで、お金の動きを観察することで、課題を発見することができます。「広告の効率が悪くなっている」、「原価率があがっている」。そして、改善をすることができます。そのサイクルを回すことで、仕組みを良くすることができます。
 
「教育」に向かう会社では、この「金」に関するサイクルを『組織』として回せていません。
そのため、幹部は、お金に無頓着になっています。「金」について、真剣に考えているのは、ここでも社長だけになります。
 
「人」でも、「金」でも、同じメカニズムなのです。
人事評価制度も月次決算も、仕組みの課題の発見のためにあります。仕組みを良くしていくためにあります。そして、その効果を確認するためにあります。
 
その意義を正しく認識する必要があります。
そして、その結果を正しく活かす必要があります。
 
 
人事評価の結果を見て、年商数億社長は、人を何とかしようと考えます。
年商10億社長は、仕組みを何とかしようと考えます。
すべての根源は、この社長の発想にあります。この差なのです。
 
正しき考え方を持つ、年商10億はここから始まります。

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