No.270:そう簡単には人は変われない、だからこそ社長が取り組むこととは!

№270:そう簡単には人は変われない、だからこそ社長が取り組むこととは!

地方空港で、迎えに来ていただいた車に乗り込みます。
「矢田先生、大変なことが発覚しました。」物販店舗を展開するM社長が早速話を始めます。
 
この数か月で在庫が倍増していたこと、そのために運転資金を借りることになったこと。
そして、言われました。
「以前に出した指示が全く守られていませんでした。やっぱり彼には、管理者は無理なのでしょうか。」
 
まぶしい景色から目を外し、矢田は確認をさせていただきました。
「本当に、指示は出していましたか?」
 
M社長は黙ります。すでに、この質問の真意が解るようになっています。


社長が決めたことを、できるだけ早く実現する。
その実現する早さこそが、その企業の強さだと言えます。早く実現できれば、それだけ市場のシェアを取ることができます。また、すぐにその施策の答えを得ることができます。
 
『自分のした意思決定を、すぐに現実に反映する』ために組織で取り組むことになります。組織で行うためには、相当の手順を踏む必要があります。それは、個人(職人社長)の時代では必要がなかったことです。
 
その手順は必ず、次の3段階となります。
 
設計:方針や手法などを決定します。その決定したことを、文章にします。
   ↓
依頼:それを実際に動き、実現する人に依頼します。完成形、動き方などのイメージを共有します。
   ↓
実行:実際に動いてもらいます。その進捗を確認し、それに応じ修正します。
 
この3段階をしっかり踏むことで、社長の意思決定が現実のものとなります。自分以外の人に動いてもらうことで、スピードを持って実現できます。個人の時よりも、大きなことを成し遂げることができます。
 
この3段階のどこかに問題があれば、進まないことになります。
設計、すなわち、意思決定が間違っていれば、社員や外注業者がいくら動いても、成果は出ません。または、その多くを共有出来ていなければ、動くスピードも精度も悪くなります。
 
そして、実行段階での適宜の進捗確認がないと、「目標への行動」は断ち切れになります。また、決めたルールが定着することもありません。
 
設計、依頼、実行、どれが欠けてもダメなのです。指示したことが、思わしくない状況であるのであれば、どれかに問題があるはずです。そのため会社として、何一つ良くすることができます。
 
会社としてのこの当たり前のサイクルを持たないと、「ものすごく弱い」会社となります。そして、いつまでも組織が出来上がることも、組織が機能することも無いのです。職人社長のまま、その後の長い時間を過ごすことになります。


私はM社長に、お聞きしました。「本当に指示を出していますか?」
M社長は、少し考えました。そして、素直に答えます。「すみません、指示として出せていません。」
 
コンサルティングが始まり6カ月、M社長の経営に対する考え方は、変わり始めています。そして、組織の動かし方を掴みかけています。
指示を出すということは、「文章にして、それを相手と共有すること」という認識ができています。
 
ちょうど方針書やマニュアルづくりに取り掛かり始めていました。しかし、仕入れや在庫についての方針書は、まだ作成ができていませんでした。そのため、指示、すなわち、依頼にはなっていなかったのです。
 
車を駐車場に止め、店舗の裏口から事務所に入りました。一人の管理者が、M社長に駆け寄ってきて、一枚の書類を手渡しました。M社長はそれを一目し、答えます。「後で、しっかり時間を作りますね」。
 
M社長は、力が抜けた様子で席に座ります。そして、その書類を私に差し出します。「仕入れ・在庫に関する方針書」と題名があります。
 
社長は、言われました。「いま二つの想いがあります。純粋に嬉しいです。そして、申し訳ないとも思います。」
 
「在庫を増やした管理者」が、方針書をつくり、社長に提案をしました。このようなことは、いままでのM社ではありえなかったことです。管理者自らが文章を書くことも、社長に提案することも、全く無かったことです。それが、M社長には嬉しかったのです。
 
しかし、その方針書は、本来社長である自分が作るべきものです。M社長は、それをしていませんでした。社長が作るべきものを、彼につくらせてしまったことを、M社長は申し訳ないとも思ったのです。
 
M社長は、変わり始めています。「人」ではなく、「仕組み」に向かうようになっています。問題が起きれば、「人」ではなく、「仕組み」の問題と考えるようになっています。
そして、そのM社長の変化に合わせ、会社も変わってきているのです。管理者の彼も変わってきたのです。M社長はそれをこのような形で実感することになりました。
 
 
人は、そう簡単に変わりません。だから、仕組みが必要になります。
仕組みの支えがあって、人は変わることができます。仕組みは、辛抱強くそこで人の「忘れる、怠ける、間違える」という特性を支えてくれます。
 
そして、人の本質も変わることがありません。誰もが持っています。これからも多くの人が入り、多くの人が去っていきます。
だから、仕組みをつくっていくのです。だから、仕組みを育てていくのです。
 
その仕組みを作る号令を出すのは、社長です。社長の出す指示により、それが進むことになります。社長が、人に向かえば、その仕組みは一生できないことになります。そして、社員は変わる機会を失うことになります。
 
人は、そう簡単には変わりません。
辛抱強く、坦々と仕組みをつくり、運用を続けるだけです。
 
同様に、社長自身もそう簡単には変われないのです。
辛抱強く、取り組むだけです。正しき先に向け頑張るだけです。
 
社長の意思決定と指示で、会社は変われるのです。

矢田祐二
矢田 祐二

経営実務コンサルタント
株式会社ワイズサービス・コンサルティング 代表取締役
 
理工系大学卒業後、大手ゼネコンに入社。施工管理として、工程や品質の管理、組織の運営などを専門とする。当時、組織の生産性、プロジェクト管理について研究を開始。 その後、2002年にコンサルタントとして独立し、20年間以上一貫して中小企業の経営や事業構築の支援に携わる。
 
数億事業を10億、20億事業に成長させた実績を多く持ち、 数億事業で成長が停滞した企業の経営者からは、進言の内容が明確である、行うことが論理的で無駄がないと高い評価を得ている。
 
 

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