No.294:Zoomを導入して数週間が経過。そこで解った組織的な根本的な課題とは。
販促物作成をメインとするH社も、この状況で売上げは激減しています。
多くの社員が、自宅で仕事をしています。
さすがはH社長、この状況をチャンスだと考えました。
「ここ数年、売上げが急激に伸びてきました。その分、仕組みづくりは全くできていません。この機会にすべての仕組みを作り直します。」
全社の総力を挙げての仕組みづくりに取り掛かりました。
2週間後、H社長から連絡が入りました。
「先生、思った以上に進んでいません。」
H社長は、最初に「手を付けたいこと」をリストアップしました。
・動画マーケティングの全体を設計する。また、そのためのツールの調査。
・案件の流れを一元管理するためのシステム化
・外注業者との契約体系の見直し。および、契約書の電子化。
・就業規則の見直し。給与体系の構築。
といくらでも書き出せます。
手を付ける一つ目は、決まっています。
Zoomの契約と設定です。これがないと始まりません。
いままでは、本社一か所であるため、必要性はありませんでした。ぽつぽつと顧客からの要望も出てきたため、取り組もうとは考えていました。
また、導入したチャットシステムもクラウドサーバーも、中途半端な運用状況です。それらも、この機会にしっかり動かす必要があります。
Zoomの設定については、H社長自ら行うことにしました。そこで気づくことがあります。このようなシステムは、いままでH社長と業者でやってきました。そのため、社内に担当と呼べる人がいないのです。ルールづくりもH社長自ら作りました。
3日ほどで、社員全員が使える状態にすることができました。
そこで驚いたことは、家にパソコンが無い社員が多かったことです。事務所のパソコンを移動したり、一部は購入したりすることで対応できました。
そして、取り組むことを、社員に振っていくことにしました。
誰に何を依頼するかを書いていきます。そこでも、気づくことがあります。振れる社員が少ないのです。
今回、取り組みたいことは『仕組み』に関することばかりです。
社員の多くは、『案件』ばかりをこなしてきました。営業、企画、デザイン、制作。仕組みづくりの経験は、ほとんど無いはずです。
しかし、勉強の良い機会になるだろうと、依頼をしました。
「動画マーケティングの全体案をつくってほしい。また、そのためのツールの調査もお願いします。」
「外注業者との取り決めを、明確にしてください。」
数日後、H社長は社員に進捗状況を確認しました。すると、ほとんど手を付けていないことがわかりました。彼らは、「何をやればいいのか、解りません。」と答えました。H社長は落胆しました。
一部の社員からは、「なぜ自分がこのようなことをやらなければいけないのか。」という態度が見受けられます。
数名、文章になったものを出してくる社員もいました。しかし、それも頭を抱えるレベルです。
H社長は、反省しました。社員に案件をこなすことばかりをさせてきました。全く仕組みづくりに参画させていなかったのです。その結果、彼らの仕組みづくりの能力は、全く伸びていなかったのです。また、『仕組み』は、社長が考えるものという認識を持たせてしまっていたのです。
当然、管理者にあげられる人材も育ちません。気づくと、社内には職人ばかりです。彼らは「フリーランスのクリエイター」のような雰囲気を出しています。まるで、社内に『外注さん』がいるようです。
更に数週間が経つころ、H社長には、気になることが出ていました。
それは、「一部の社員が、何をやっているのかが解らない」というものでした。
頻繁にやり取りをしているはずの管理者に訊きました。
「(君の部下の)A君は何をやっているの?」
その管理者は答えます。
「え、知りません。社長が何か依頼されているかと思っていました。」
そのA君は、もともと仕事の進め方の上手くない社員です。報告や相談が無いと、注意をしたことも数回あります。オンラインで仕事をするようになり、更に見えなくなったのです。
H社長は、彼に電話をして訊きました。
「いま何をやっているの?上司からは何を依頼されているの?」
A君は答えます。
「いえ特に何もやっていません。少し直しの案件があるくらいです。〇〇さんからは特に何も言われていません。」
それを聞いてH社長は、「どうしたらいいか、〇〇さんに聞かなければダメじゃないか。」と言いました。すると、「すみません」と返ってきました。
H社長は、痛感することになりました。
・オンラインになるほど、仕事の進め方に力がいる。リアルで報連相できない人は、益々できない。
・そして、未熟な彼らをサポートするような仕組みが必要。
・組織内の指示命令系統ができていない。また、管理者が機能していない。
・全体的に、「具体的に指示を出す」、「期日を決める」、そして、「結果をチェックする」というマネジメントが弱い。
私とのZoomでのミーティングの場で、H社長は言われました。
「この状況になって初めて、組織の必要性がよくわかりました。」
H社は、事業モデルを変えてから3年が経過しています。
当時は年商2億円、社員数は8名でした。今期は年商4億8千万円、社員数は20名です。
急速に増える売上げにかまけ、仕組みづくりと組織づくりに、しっかり取り組んでこなかったのです。
「矢田先生、すみませんでした。何から始めればいいか、もう一度教えていただけますか。」
H社長はこの数週間、仕組みづくりをどんどん進めました。その過程で、組織づくりにも取り組みました。
会社に大きな変化が起きていると感じることができます。
営業部二人と制作部の二人が中心となり、業務フローの見直しを進めています。頻繁に、自分達でZoom会議を開いています。必要なら他の社員に参加を依頼しています。
管理者の彼からは、チャットシステムを使った案件の進捗管理の案が提出されました。今も彼が推進して、その仕組みの精度をあげる取組みをしています。
H社長は、笑って言われます。
「事務所に集まっていた時よりも、今のほうが会社の雰囲気はいいようです。」
数週間後には確実に、「自粛」が明けることになります。その時には、H社はより大きく動くことができます。止まっていた成長を更に早めることができます。これからは、社員とともに、推し進めることができるのです。
組織が無い会社は、弱い。
そして、こんな状況になると、更に弱い。
社長だけが考えているから。
組織が有る会社は、強い。
こんな状況になっても、成長を続けている。
多くの社員が考えているから。
この先も自社を取り巻く環境は変わり続けるでしょう。
だからこそ、強い組織が必要になるのです。
強い組織は、今日も成長しています。
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