No.329:管理者に選んでいい人、悪い人。その明確な基準とは?

№329:管理者に選んでいい人、悪い人。その明確な基準とは?

M社長は、私に書類の束を手渡しました。それは、複数名の適性検査の結果です。
「矢田先生、優秀な管理者を採用したいのですが。」
 
私は、適性検査の見方をお伝えしました。管理者を観るポイントは、3点です。
 
そのうえで、私は、本当に重要なことをお伝えします。
「御社には、まだ、管理者は使えませんよ。」
 
M社長の大きな目が、更に大きくなります。
私は、念を押します。「はい、絶対に使えません。」


仕組みとは、「再現性」と言えます。
その再現性を担保しているのが、『基準』となります。
何かしらの基準があるからこそ、再現性が得られるのです。
 
その基準に沿って人は動くことになります。
すべきこと、すべきでないこと。そして、考え方や方向性。
基準に照らし合わせることで、自分で判断し行動するができるのです。
 
会社は、その人の働き具合を、基準と照らし合わせることをします。満たしている、満たしていない、もう少し。これが評価となります。
そして、その基準の差異を本人と共有することで、より一層の習熟を手助けすることができます。
 
人を動かすためにも、人を育てるためにも、基準が必要となります。
その基準によって、我々は、再現性と共に、改善性を得ることになります。
どのような訓練プログラムにするべきか。はたまた、どのような人を採用するべきか。
 
仕組みづくりとは、基準づくりなのです。
基準づくりのことを、見える化と言うこともあります。
 
基準を設けない、ということは、仕組み自体を放棄することを意味します。基準無しには、絶対にうまく行くことは無いのです。
それに取り組まないことは、永続性を求めるという組織化の目的自体を、否定することを意味します。当然、組織ができるはずが無いのです。
 
すべてに基準を設けること、これが全てのスタートになるのです。


私は、M社長に、「管理者の人選基準」をお伝えしました。
その基準は、2つ プラス1つ です。
2つは、「実行力」と「ロジック力」です。プラスの1つは、「前向き」となります。
 
管理者には、実行力が必要です。
これは、逆を考えると解ります。社長として、一番困るのが、「実行されない」という状態です。決めた方針や目標が実行されないと、いつまでも答えが出せない状態になります。管理者には、「よく解らないが力ずくで形にする」という力が必要になります。
 
また、論理性が無ければ、仕組みをつくることが出来ません。方針を実現するための仕組化には、ロジックが必要です。問題の原因追求もロジックです。業務を分解し、部下に作業指示を与えるのもロジックです。ロジックが無ければ、これらすべてが「感覚的」で「曖昧」になります。
 
実行力とロジック力です。
これは、管理者の役目を見ても、明確です。
管理者の役目は大きく二つ。一つは、「部門目標の達成」です。もう一つは、「仕組みの改善」です。この基準を達成するためには、実行力とロジック力が不可欠なのです。
 
そして、プラスの1つが「前向き」となります。
主体性とも、言えます。前向きに、会社に協力するということです。
社長の意見を、前向きに受け止める。問題が起きたときに、自分のこととして考える。プラスアルファの働き方。この心構えとも言えるものが有って初めて、上記二つの能力が活きることになります。
 
逆に、二つの能力が有りながら、「後向き」であれば、最悪です。論理的な意見で社長に詰め寄ってきます。その実行力で、周囲の社員に強い影響を発揮します。会社の風評を広め、社内を崩壊に向かわせます。
 
 
私は、M社長にこの管理者人選のポイントをお伝えさせていただきました。
 
M社長は、感想を言われます。
「これからは、このポイントを見抜くことを意識して、面談もするようにします。」
 
そして、私は、冒頭の言葉をお伝えしました。「御社には、まだ、管理者は使えませんよ。」
 
M社は、コンサルティングの初期の段階です。まだ、組織づくりは、手を付けていません。管理者を動かすための仕組み、すなわち、基準がまだ無いのです。
 
管理者を動かすための基準、もっとも大きな仕組みは、経営計画書になります。これは、組織づくりのツールでもあるのです。
 
経営計画書には、方針が載っています。そして、自部門の役目と達成する目標が書かれています。今期の仕組みの改善目標もあります。
 
そして、その実行を支えるための行動計画書とその確実な運営があります。行動計画書により、行動の優先度やスピードという基準が、明確になります。そして、会議の場で、「満たしている」、「満たしていない」のずれが修正されます。
 
これにより、管理者は、管理者の役目を全うすることができます。
経営計画書とその運営があるからこそ、『管理者』が成り立つのです。
 
経営計画書が無ければ、管理者が正しく機能することは、絶対に無いのです。
管理者は、自部門の業務を、何を基準に管理すればよいのか、知りようがありません。自分が何の仕組みを直せば良いのか、解りません。PDCAという計画・実行・修正というサイクルも無いのです。
 
私は、敢えて少し強くお伝えさせていただきました。「御社には、まだ、無理なのです。」いま採用できたとしても、その管理者を活かすことができないのです。唯の作業員と化すことは目に見えています。
 
もし、その採用した管理者が上手く機能することになれば、本当の不幸がやってきます。それは、偶々相性が良かっただけです。そこには、再現性が無いのです。
 
その一回の成功体験が、我々の目指す「再現性」から大きく遠ざけることになります。管理者を動かすための仕組みづくりに向かわなくなるのです。
また、その管理者が抜けた後、新たに採用した管理者が機能しません。
また、それ以降の管理者が育ちも機能もしない状態になるのです。
 
我々が、目指すのはあくまでも「再現性」であり、管理者の「量産」なのです。
我々は、管理者でさえも量産したいのです。管理者を採用し、そして、繰り返し戦力化したいのです。だから、事業を大きくできるのです。
 
M社長は、豪快に笑いながら返事をしました。
「また、同じ間違いをするところでした。(笑)いまは、目の前のことに全力で取り組みます。」
 
M社長は、その言葉の通り、その後、すごいスピードで組織づくり、管理者を動かす基準づくりを進めたのでした。
 
この時の選考した管理者の中から、本当に優秀な方が採用できてしまったこともあります。M社長は、「こんな何もない状態では、申し訳ない。」と、本当に急ぐ必要に迫られたのです。
 
 
基準というと、窮屈に感じるかもしれません。
しかし、その基準こそが、重要なのです。
 
お客様へのサービスにも基準があります。だからこそ、お客様は繰り返し、安心して当社を使ってくれます。
 
基準があるからこそ、社員は、自分で判断し業務をこなすことができます。
管理者も、基準に沿って、管理することができるのです。
 
基準が無ければ、これらすべてが無くなります。その結果、社長自身も現場から離れられなくなるのです。
 
御社に無いのは、基準です。
基準づくりに邁進する時です。

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