No.351:会社を大きくする過程で、社長と社員のコミュニケーションのあり方は変わる

№351:会社を大きくする過程で、社長と社員のコミュニケーションのあり方は変わる

健康関連事業K社長からの本日一つ目の相談事です。
「先生、決めたことがなかなか定着しないのです。どうすれば良いでしょうか?」
 
私は、それに対し正しく答えました。
そして、次の相談事に移ります。
「二人の社員の仲の悪さが、職場の雰囲気を悪くしています。」
 
これに対しても、正しく答えます。
三つ目を話し始めた時には、私は遮りました。
 
「根本的に、今の御社は、小さすぎるのです。」


年商数億から年商10億に進む過程で、社長の主とするコミュニケーションの相手は大きく変わることになります。ウエイトが大きく変化するのです。
 
当初は、「作業層」とのコミュニケーションが主でした。営業や制作の担当者です。それは、案件の流れとその品質の管理を、社長自らがしているからです。
「あれを見せて」、「これはこうして」という具合に、作業層とのコミュニケーションは自ずと多くなります。
 
それが、仕組化が進むことで格段に減ることになります。
仕組化の目的は、「自己完結」にあります。自分達で進捗と品質を管理し、案件をこなす状態です。そうなると、社長と社員のそれらに関するコミュニケーションは必要がなくなります。仕組化のインパクトは非常に大きく、社長の社員とのコミュニケーションの7割は無くなることになります。
 
そして、次は、作業層が自分達で判断できるようにします。
「顧客からの新たな要望」や「外注の手配が間に合わない」というイレギュラーなことに対し、いままではその都度、社長にお伺いがありました。方針書などを整備することで、その判断が可能となります。班長や店長という、判断層を機能させることができます。これにより、社員とのコミュニケーションの2割がまた減ることになります。
 
そして、残るは、仕組化に伴うものとなります。
元々、社長自身が、作業漬けであり、仕組化の発想がありません。本来は、もっとも多いはずの、仕組化に伴うコミュニケーションが1割と少なかったのです。社員とのコミュニケーションの中で、これだけが残ることになります。
 
そして、この仕組化の推進を管理者に依頼することをします。
彼らに、「〇〇業務の仕組みをつくってください」と依頼します。彼らからその「案」が出されます。その案を元に、ディスカッションを行い、良いものに仕上げていきます。そして、その形ができたものを、彼らが現場に落とし込み、運用までを担ってくれます。
 
社員とのコミュニケーションの残った1割でさえも、その内容は、全く異なるものとなります。
 
その結果、社長は、社員とのコミュニケーションの時間を、「仕組みに集中できる」という状態にできます。他はありません。その時間は、非常に生産性の高いもので、密度の濃いものです。その時間を若干増やすことをします。
 
その結果、会社の成長は、格段に早くなります。
社長の社員とのコミュニケーションの時間は、以前の10分の1となります。
 
作業層とのコミュニケーションは、ほとんど必要がありません。(作業層とのコミュニケーションが別に発生する必要性については、また別の機会に。)
社長のコミュニケーションのすべてが、管理者または仕組みづくりに関わる社員とのものになります。


冒頭のK社長からの「決めたことが中々定着しないのです。」という相談に対し、私は訊きました。
「それは、書面となっていますか?そして、それが、定着するまで管理していますか?」
K社長は、答えました。
「はい、書面化は出来ています。先月ご指導いただいた通り、毎週会議でも確認しています。」
 
私は、気になったことを確認します。
「その問題の対象は、ある個人のことを指していませんか?全員では、有りませんね。」
その通りだったようで、K社長は、黙ってしまいました。
 
そして、次の相談事である「二人の社員の仲の悪さが、職場の雰囲気を悪くしている。」に移ります。
 
これに対しては、「方針書」と「仕組み」の存在を確認します。どちらも、まだ完全に整備できていません。これでは、そうなっても致し方無いと言えます。
 
そして、三つ目を話し始めます。
「採用した社員が、どうも育ちが遅い・・・。」
私は、失礼ながら、それを遮ることにしました。
 
私は、お伝えしました。
「社長、細かいことに囚われ過ぎです。」
 
これらの問題は、コンサルティングが進めば、すべてが解決することばかりです。
 
まず事業モデルの変革を行い、それを仕組化する。そして、その仕組みを改善し続ける組織をつくる。この大きな流れができれば、これらのすべての問題は解決します。その前では、これらは「小事」なのです。
限られたこの時間を使うことが、勿体ないのです。
 
私は、お伝えしました。
「会社が小さい限り、それらの問題はついて回るでしょう。御社のそれらの問題の根本原因は、会社が小さいことにあるのです。」


会社がなぜ小さいのか、改めて確認をしておきましょう。
 
1.事業モデルが弱い
特色がありません。そのために、集客に苦労します。
そして、販売に人間力が要ります。当然、売上げは伸びないのです。
 
そこに相手合わせの要素が残っていれば、それは「クリエイティヴ」となり、一部の優秀な社員しか、出来なくなります。また、社内は複雑化に見舞われることになります。
 
2.仕組化が進まない
事業モデルが定まっていないために、仕組化も進みません。
また、多くの顧客や多くのサービスが存在するため、取り組んだとしても、それが膨大な種類となっているのです。
 
事業モデルが弱いことが、根本にはあります。
事業モデルが弱い限り、何をやってもダメなのです。
 
そして、「事業モデルは弱く、仕組みも無い会社」では、どうしても「人」に頼る場面が多くなります。サービス提供に気づかいが必要になります。一つの業務に気づきが必要となります。部署間にコミュニケーションが必要になります。
 
事業モデルと仕組みの無さが、「人の要素」を強く出させてしまっているのです。
 
そして、そこに、「社長の仕組化の発想の欠落」が揃うと最悪です。
 
会社を発展させるためと、社員教育をします。
部署間の連携が悪いと、コミュニケーションの機会を増やします。
社員の教育や退職防止のためと、個人面談を強化します。
会社の業績が悪くなると、社員にアイディアを求めます。
・・・このコラムの賢明な読者の方々は、この無茶苦茶さにお気づきでしょう。私も書いていて、気分が悪くなります。
 
そして、優秀な人材の獲得に走ります。優秀な人材さえ獲得できれば、今の状況を脱することができると考えるのでしょう。もう狂気の沙汰としか思えません。
 
そして、当然、優秀な人材は採用できないのです。優秀な彼らが、そんな会社を選ぶはずがないのです。そんな「事業モデルに特色が無い」会社は、対象から真っ先に外されることになります。


小さい会社である限り、人に関する問題は発生し続けます。
そこに終わりはありません。
小さな会社ほど、それが、大きく出ます。事業モデルと仕組みの問題以外に、少ない人数、狭い空間に、いつも同じ人間がいれば、それはそう成っていきます。
 
大きくなる、すなわち、事業モデルと仕組化ができると、「人の問題」は、嘘のように減っていきます。それに費やしていた社長の悩みは、嘘のように無くなるのです。
 
人間社会ですから、それらが、完全に無くなることはありません。
しかし、それを、各部署の管理者や良識ある社員が、正してくれるようにもなります。社長の耳には入らないようにしてくれるようになるのです。
 
いま起きていることの問題の多くは、会社が小さすぎることにあるのです。
小さいから、直接、それが社長のところに来てしまうのです。
近いから、それが見えてしまうのです。
 
それを、長く続けていると、社長は「取り憑かれる」ことになります。
それが、K社長の状況です。ダメな社員や粗悪な部分が、やたら目に入るようになり、気になり過ぎるのです。
 
早く、大きくすることです。
 
そのためには、まずは事業モデルです。
特色ある強い事業モデルがあれば、社員がどんどん活躍するようになります。
そして、それに特化する形で仕組化も進みます。
 
社員とのコミュニケーションも、事業モデルと仕組みを良くするために、割り振ることができます。
 
そして、社長は、より自由に使える時間が増えてきます。
その時には、次の飛躍、例えば30億円を目指し動くことができるのです。

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