No.354クリエイティヴやホスピタリティが必要な事業こそ、仕組化が必要。仕組化に向かわないと会社が崩壊します。

№354:クリエイティヴやホスピタリティが必要な事業こそ、仕組化が必要。仕組化に向かわないと会社が崩壊します。

美容系の店舗を6つ持つN社長が相談に来られました。
「先生、もう疲れました。事業を続けるモチベーションも下がっています。」
 
事前に頂いた課題一覧表には、「社員の退職率が高い」、「顧客を持って独立」、「社内の人間関係が悪い」とあります。
 
次に、経営計画書を開くと、「お客様に感動を提供する」という文字が見えます。N社長は、補足を入れます。
「社員とも、その想いは共有できているはずなのですが・・・」
 
私は、お伝えしなければなりません。
「社員に、お客様を感動させろ、は言っても良いのですが・・・」


現場スタッフに、クリエイティヴやホスピタリティが求められる事業こそ、仕組化の必要性は高くなります。
 
多くの接客業(美容・健康)、学習塾、システム開発、設備設計、建築、施工管理、コンサルティング業。
 
上記事業を持つ経営者からは、頻繁に次のような質問を受けます。
「当社のような、相手合わせの応用が必要なサービスを、仕組化する必要があるのでしょうか?」
そして、「仕組化が、出来るのでしょうか?」と続きます。
 
確かにこれらの事業では、どうしてもクリエイティヴが残ることになります。
・クライアントの要望を引き出し、そして、それに合わせ提案する。
・顧客の意向を読み取り、フォローの言葉やその時々の説明を行う。
 
サービスを提供するスタッフに、力が必要になります。
だからこそ、仕組化の必要性が高まるのです。
 
・業務の流れをコントロールするために、システムを導入します。
・作業のミスを減らし、かつ、熟練者の視点を共有するために、帳票類を整備します。
・作業手順と勘所を書いたマニュアルの改善を続けます。
 
これにより、会社として『均質化されたサービス』を保つことができます。
「どのお客様も同じサービスを受ける」、「どのスタッフも同じやり方をする」、という状態を得ることができるのです。
これこそが、サービス提供の『基盤』となります。
 
そして、この『基盤』の上に、『応用』が乗ることになります。
そのお客様の状況や感情に合ったホスピタリティを提供できます。
また、そのスタッフなりの、個性やクリエイティヴを発揮することができます。
・腰が痛そうなお客様に、クッションを薦めます。
・設備の掃除がしやすいように、コーティングされた部品を提案します。
 
あくまでも、『基盤』があっての、『応用』なのです。
基盤があるからこその、応用なのです。
・名刺交換の基本ができているからこそ、相手の表情や話の進め方まで、考えをめぐらすことができます。
 
『基盤』がぐらついていれば、ホスピタリティやクリエイティヴという『応用』は成り得ないのです。


それどころか、自社の『サービスの定義を乱すこと』になります。そして、最終的には、『会社を破壊すること』になります。
 
『基盤が無い』すなわち「仕組みが無い」ということは、言い換えれば次の通りになります。「それぞれが、自分の勝手にやって良いよ。」
 
こう表現すると、「そんなことはない」と多くの経営者は言います。しかし、実際には、「自分の勝手に」と言っているのと等しいのです。
・スタッフの彼は、「フレンドリーな話し方」でお客様と接しています。
・設計の担当者は、自社で取り扱いの無いものまで手配し、お客様の要望に応えようとします。
 
「勝手にやって良い」とは、「悪い態度、悪い手順」でもOK、と言っている状態なのです。そして、「どんなことをしてもお客様を喜ばせれば良い」ということなのです。
 
当然、お客様が「悪い」と感じるサービスは問題外です。同様に、「良すぎるサービス」も、ダメなのです。そのお客様にとって、そのサービスが基準になり、他の社員のサービスでは満足できなくなります。
 
「勝手にやって良い」とは、『自社のサービスの定義を壊すこと』になるのです。社長が現場に立ち、目の届く範囲の時には、その都度修正することが出来ました。社員も、社長の振る舞いから習うことができます。
 
大きくなる過程で、それを仕組みに持たせる必要があるのです。
仕組化の取組みとは、言い換えると、『自社のサービスの基準を、社長の替わりに、スタッフに伝え、保持する機能』となります。
 
間違っても、勝手にさせてはいけません。仕組みが無ければ、自社のサービスは壊れ始めます。社長が現場から離れれば、それは加速していきます。
 
・自社は、どのようなサービスを「良い」とするのか。何をやってはいけないのか。そして、どれぐらいの対価を頂くのか。
会社として、それを決めること、そして、そのばらつきを無くすことを追求するのです。
 
自社の狙ったサービスと顧客満足が、会社として仕組みにより、安定して提供されていることを我々は、理想とするのです。間違っても、それが、社員の力量によって成されていることがあってはいけないのです。
 
あくまでも、お客様は、『会社のサービスにつく』という状態にするのです。
お客様が、いちスタッフに付くことがあってはいけないのです。
そのお客様に「なぜ、当社を選んだのですか?」と訊くと、その回答が「〇〇君の対応が素晴らしい」や「〇〇さんの提案が良い」では、ダメなのです。
 
そのお客様からすると、その会社である必要はありません。お客様は、当社から恩恵を受けているとは思っていないのです。そのスタッフが、独立すれば、そのままそのお客様は付いていくことになります。
 
サービス型事業は、そもそもが独立しやすい事業なのです。
それを、益々独立しやすい状況をつくっているのです。そのスタッフは、お客様を持って独立することができます(その後成功するかは別の話ですが)。それは、まるで独立に仕向けているかのようです。


そして、その退職した社員の欠員補充をするために、採用を行います。
中途採用した人の「当たり外れ」が大きくなります。それは、「勝手にして良い」という状態だからです。
 
その結果、「自分で何とか成果が出せる人」が残ってきます。それらの人は、総じて個性の強い人や克己心の強い人です。より「組織に馴染みにくい人達」と「独立予備軍」を増やすことになります。
 
また、新卒を採用すれば、戦力化に物凄い時間が必要となります。
形が出来ていない人に対し、「勝手にして良い」、「自分で考えろ」という仕組みの無い環境では、育つはずがないのです。
 
 
その間に、『会社自体が崩壊に向かうこと』になります。各店舗、各部署が『独自の進化』を進めるのです。
 
時間の経過と共に、管理者や社員が入れ替わっていきます。その時々で、「力の強い人(声のデカい人)のやり方」に染まっていくことになります。そして、新しく入った人は、それに習っていきます。
 
その結果、同じ会社で有りながら、店舗や部署によって、全く違う考え方ややり方が存在することになります。その時には、その考え方ややり方を、経営者は把握できない状態になっています。
 
一人のスタッフに対し、社長は「少し違うのではないか(問題あり)」と思ったこともあります。しかし、彼は、良い成績を出しています。会社としてのやり方が明文化されていないこともあり、それを、強く咎めることも出来ません。
 
仕組みが無いので、人間関係も悪くなります。
「人間関係が悪い」とは、誰かがストレスを抱えた状態と言えます。
「相手にこう動いてほしいと期待すること」が、裏切られた時に、ストレスが発生します。それが積み重なると、相手への嫌悪感や怒りになるのです。
 
その期待を伝えたり、正したりする機能、すなわち、仕組みが無いのです。社長が仲裁に入ることで、一時は解消したとしても、すぐに再発することになります。
 
 
冒頭のN社は、まさにその経緯を辿ったのでした。
その結果の「退職率の高さ」、「顧客を持っての独立」、「人間関係の悪さ」だったのです。
 
そして、更にマズイことに、N社長は、その解決の方向性を間違えてしまいました。『仕組み』でなく、『人』に向かってしまったのです。
 
社長自身は、ある会社の勉強会に、参加するようになりました。
その会では、「経営者の人格向上」、そして、「理念経営」を主に学びます。「感動」という言葉も、そこで出会ったものです。それに、没頭しました。
 
そして、自社に、その会社の社員研修を導入しました。社員に対しても、「人格」と「理念」の教育です。
 
社長が仕組みに向かえば、社員も仕組みに向かいます。
社長が人に向かえば、社員も人に向かいます。人が人を責めるのです。
更に「人間関係」を強く、悪くしてしまったのです。
 
そして、「人」への取組みは、終わりが無いのです。一時、全体のモチベーションが上がったとしても、それは、すぐに冷めることになります。そして、優秀な社員は、呆れて辞めていきます。
 
その結果、創業当時の「社長とスタッフが、お客様のためにワイワイと意見交換していた頃」の社風は完全に崩れてしまいます。また、一人ひとりの考え方ややり方は、完全にバラバラな状態となります。


まとめです。
 
お客様は、何を求めているのか?
感動を求めている・・・NOです。
 
お客様が求めているのは安定です。
 
顧客は、そのサービスを、必要だと感じてくれています。
そして、その価格並みのサービスに満足をされています。
そして、次回も、それと同じ満足を求めてやってきてくれます。
 
我々が目指すビジネスとは、そういうものです。
それは、「世の中の課題(欲求)を満たすためのインフラ」のようなものなのです。そこに感動は必要ありません。
 
実際に、我々は、日常的に「感動サービス」を利用していません。
ランチは、安定してうまく、安く、早い、いつもの定食屋です。
サーバーやシステムに求めるものは、安定の上の効率です。
家族で遊びにいくテーマパークにも、安定したクオリティを求めます。
 
それは、その会社の狙ったものなのです。
それを、その会社は、仕組みで再現しようと努力を続けているのです。
 
その枠のなかで、一人ひとりのスタッフが、ホスピタリティやクリエイティヴを発揮しています。それらは、コントロールされた枠の中に存在します。
 
顧客も、それらがコントロールされていることを望んでいます。
それが、裏切られた時に、クレームになります。
 
社員に向かって、「お客様を感動させろ!」と言うことはかまいません。
しかし、それを、経営に持ち込んではいけないのです。
 
一般社員向けの経営計画書に記載することはかまいません。
しかし、それは、経営者や幹部向けのものには、全く必要が無いのです。
 
必要とされるサービスを設計する。
安定したサービスを提供できる仕組みをつくる。
それで顧客を集め、安定した満足を提供し、繰り返し使ってもらう。
そのためにスタッフを集め、均質な技量まで引き上げ、安定して働いてもらう。
その中から、優秀な社員には、その仕組みづくりに参画してもらう。
 
これが、全てです。これが、我々のつくる世界です。

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