No.402:社長の本来の役目は、効率の悪いことをすること。たまに、それは遊んでいるように見えるが。

№402:社長の本来の役目は、効率の悪いことをすること。たまに、それは遊んでいるように見えるが。

U社は、この4年間で、コンサル型のシステム業から、パッケージ型のシステム業への変貌を遂げました。
 
そのU社長から、コンサルティングの場で、一件の案件について相談を受けました。営業担当者が拾ってきたその案件に、U社長は何か感じたのです。
 
その案件の話を聴いて、私も驚きました。私の経験上からしても、そこにはもの凄い大きなマーケットがあることが解ります。
 
私は、お伝えしました。
「これは、お金を払ってでもやってみたい案件ですね。」
 
多くの事業家がこの段階で、大躍進のチャンスを逃す致命的な間違いを犯しています。


『開発』と『展開』の前には、『発見』があります。
 
経営においては、『開発』と『展開』の考え方は、非常に重要になります。
 
『開発』とは、その事業や仕組みを作り上げる段階を指します。その基盤となるものをつくります。
 
それが出来上がると、『展開』に移ることができます。人を増やし、そして、集客にお金を投じていきます。それにより、大きく儲けることができます。
 
事業のすべてにおいて、この『開発』を経て、『展開』に移ることをします。
この『開発』をすっ飛ばして『展開』に移ることや、『開発』という考え方自体がないところに、大きな失敗があります。
 
(この考え方は、私の書籍(白の表紙)で詳しくご紹介しています。)
 
そして、この『開発』と『展開』の前には、もう一つの段階があります。それは、『発見』です。
 
アイディア段階のものを『発見』と表現することはありません。一つのアイディアが、一つの『行動の方向性』を得た瞬間に、『発見』になります。
 
この事業アイディアはいけそうだ。いくつか視察に行ってみよう。
この方針でいけるかもしれない。この道の専門家に意見を求めよう。
 
一つの方向性を持って動いている段階であり、それに確信を持つために動いている段階が『発見』なのです。
その『発見』を、「これはいける」という確信と「これを実現しよう」という決定をした時に『開発』の段階に移ることになります。


U社長は、今のパッケージ型の事業に変革することで、完全に仕組みで回る状態にすることに成功していました。しかし、今のこの事業では、年商3億円が限界だとも感じていました。
 
そんな折に、営業担当者が持ってきた案件に引っかかるものを感じたのです。
 
それを矢田に相談しました。
「先生、どう思われますか?」
 
それは、開発型の案件です。すでに「展開」の段階にあるU社にとっては、本来断るべき案件なのです。それを、U社長も十分に理解をされていました。
 
私は、その案件の説明を受けると、U社長が相談を持ち掛けてきた理由を理解することができました。そこには、物凄い大きなマーケットがあるように感じられたのです。
 
それが事業化できれば、優に年商10億円を超えることができます。それどころか、日本が長年抱えていた商習慣を解決してしまうほどのインパクトがあるように感じられます。
 
しかし、今の段階では、その多くが解っていないのも事実です。
「いま、現場では、どのように業務が回されているのか?」
「実際の、伝票の動きはどうなっているのか?」
 
今の情報では、そのサービス(システム)を提供している会社も無いようにも思われます。実際に、その1社は、その大きな問題を解決するために、探しに探してU社に行きついたのです。
 
U社長と私は、「この案件は、なんとしても取りに行きたい」という意見で一致しました。
 
 
そうなると値決めが変わってきます。
私は、提言しました。
「ここで儲ける必要はありません。開発にかかる人工代だけ頂戴できれば十分です。」
 
ここで『展開』の発想をもってはいけません。『展開』の発想を持てば、値決めは、当然、高額になります。開発にかかる費用プラス自社の管理費、そこに、利益を載せることをやってしまいます。
 
間違ってはいけません。
 
この案件を受ける目的は、『開発』でもありません。あくまでも『発見』の段階なのです。この1社と関わらせてもらうことで、その業界の本当の課題や業務の実際の流れが解るのです。一気に、中枢に入り込めるのです。
 
そして、その「システムの開発」は、そのまま「次の自社の主力商品」として『開発』できるのです。
 
これは、お金を払ってでもやってみたい案件なのです。
さすがのU社長です、この値決めに迷っていたのです。(迷うことも、そして、それを相談してみるのもある水準を越えた事業家ということです。)
 
『発見』、『開発』、『展開』、この考えを持つことです。
そして、いまどの段階にあるのか、を正しく見極めることです。
発見で、お金を儲けてはいけません。開発の段階で、売りに走ってはいけません。
この間違いを犯してしまい、大きなチャンスを逃している会社は非常に多いのです。
 
既存の事業の儲けからすると、発見のための行動は、すべからず『無駄』に見えます。それは極めて、効率が悪い動きなのです。
そのため、それを、「既存事業の社員」や「経営感覚の無い税理士」に相談すれば、間違いなく反対をされることになります。彼らは、言います。「損をしたらどうするのか?」、「いまの仕事を、一件でも多くやったほうが良いのではないか?」
 
それは、そうなのです。その『発見』のための行動が、利益に繋がる補償など何も無いのです。それをすれば、間違いなく今期の利益を食うことになります。
 
しかし、今『発見』のための動きをしなければ、数年後、自社は停滞期に入ることになります。『発見』のための行動しか、次の事業の柱や飛躍の機会を得ることができないのです。
 
それは、一見すると無駄のように思えます。社長が遊んでいるようにも感じられます。しかし、その動きからしか『発見』はあり得ないのです。
最初から、効率を求めてはいけません。

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