No.467:新規事業で成功する条件。また、絶対に手を出してはいけないこととは!?

№467:新規事業で成功する条件。また、絶対に手を出してはいけないこととは!?

この日は、建設業N社長との面談です。
クライアントからの紹介で、「素晴らしい商品を開発した(ようだ)から、ぜひ会ってほしい」との依頼がありました。
 
N社長とその商品の担当者が席に着きました。
既存の事業のお話を聞き、次は新規事業内容の説明をお願いしました。
 
その彼は、カバンから商品を取り出し机に並べました。
「これはいま評判の〇〇という技術から開発された商品です。使っていただければ、この商品の良さはすぐに解っていただけます。」
 
素晴らしい商品のようですが、ビジネスとしては素晴らしくは無いようです。


ビジネスとは、『売る物』と『売り方』の組み合わせです。
この組み合わせによって、ビジネスは成り立ちます。
 
私が説明で使う、『年商=単価×数』とはこれを指しています。
『単価』とは『売り物』であり、『数』とは『売り方』です。
この掛け算で『年商』が出来上がります。
 
ですから、ビジネスは、売り物と売り方をセットで考えていく必要があります。
健康系サプリ業A社は、ネット上で集客から継続購入型というサービスの販売までを完結させます。
健康系サービス業B社は、店舗という売り方で、地域住民に対し施術サービスを提供しています。
 
儲かるかどうかも、大きくなるかどうかも、この二つによって決まってくるのです。
 
このどちらかの出来が悪ければ、当然そのビジネスは儲かることも、大きくなることもありません。
C社は、ある業界向けのシステムを開発しています。昔自分がいた会社やその時の顧客からの紹介で食いつないでいます。
D社は、専門コンサルティング会社です。社長が出している書籍や他社主催セミナーに参加された方からの問い合わせで成り立っています。
 
このように、売り方が確立していないと、「なんとか売上げが繋がっている」という状態になります。安定もしません。これではスピードある展開は無理となります。
また、案件数が限られるため、社員に振れなくなります。その結果、「顧客が社長に付く状態」になります。
その結果として、年商数億円という規模での停滞期に入ることになるのです。
 
年商数億円企業では、『売り方』が確立していないケースが多くあります。
良いサービスや商品はある、しかし、「これだという売り方」すなわち「必勝パターン」が無いのです。
 
また、こういう面もあります。
売り方が固まっていないから、商品が増えるという現象が起きます。
どうしても顧客の属性やニーズがばらけてしまうのです。
そして、それに合わせることで、商品が増えることになります。益々「社長一極集中」や「忙しいわりに儲からない状態」になるのです。


新規事業を考える時には、どちらかを固定して考えることがスタートとなります。
『売り物』を固定し、『新しい売り方』をつくる。
『売り方』を固定し、『新しい売り物』をつくる。
 
健康系サプリ業A社は、今ネットで売っている継続購入型サービスを、整体院などで取り扱ってもらうことを考えています。
健康系サービス業B社は、同じ店舗という形で、より付加価値の高い店舗パッケージを考えています。
 
どちらかを固定することで、新規事業の成功の確率は格段に上がります。
良く知った商品です、良く知った売り方です。そこにある顧客のニーズや商習慣、なによりも自社の勝ち方のノウハウの半分は使えるのです。
 
冒頭のN社は、どちらもない形で新規事業に取り掛かりました。
 
机に美容商品が並べられます。
それは、シンプルで高級感を現したパッケージになっています。
 
担当の彼がこの商品の素晴らしさを勢いよく説明をしてくれます。
最新の技術、ターゲット、この商品への思い。そして、どこかしらの高名な先生のお墨付きであるとも。
 
その商品から目を離し、私はN社長のほうを向き訊きました。
「これをどうやって売っているのですか?」
 
少し間があり、N社長は答えました。
「それを相談させていただこうと、今日は来ております。」
その声に力がありません。すでにN社長は、間違いを犯したことに気づいているのです。
 
そうです、『売り物と売り方をセットで考える』という商売の原則を守っていないのです。
それを、売り物だけを先に作ってしまったのです。
 
確かにその商品は素晴らしいものかもしれません。使ってもらえれば、その良さを実感してある率でリピーターになるかもしれません。
しかし、売り方が無いのです。それでは、使ってもらうことなどできないのです。
 
この間違いをしている会社は少なくありません。
システム開発会社C社は、自社のパッケージ商品としてある業界向けのシステムを開発しました。その開発に2年という時間とそれなりの資金を投入しました。
しかし、売り方の開発をしていません。何となくいままで同様に社長つながりで売っていけば・・・と思っています。
 
専門コンサルティング会社D社は、画期的な人事制度の商品を作りました。それはD社長の長いコンサルティング人生の集大成です。しかし、その売り方は考えていません。既存の顧客に案内して・・・ぐらいしか無いのです。
 
これではだめなのです。売り方が無ければ、知ってもらうことも、使ってもらうこともできないのです。紹介をあてにしているようでは、スピードある成長は無理なのです。
売り物は売り方あっての売り物なのです。
 
 
私はN社長に、もう一つの質問をさせていただきました。
「社長は、この商品が好きですか、この分野に情熱を持つことができますか。」
 
失礼ながらN社長は、私と一緒で美容の分野に強い興味があるようには見えなかったのです。
 
後日N社長からお話いただきました「新規事業を考えている時に、あるコンサルタントから美容関係の提案を受けた。十分な利益も出ていたことから、それに安易に飛びついてしまった。大量に在庫を抱えることになり、引くに引けない状況になっている。」と。
 
売り物と売り方をセットで考える、ということ以上に、N社長は大きな間違いを犯していました。事業家としては最もやってはいけないことをしてしまったのです。
それは、「自分の好きでも無い分野のものに手を出してしまった」のです。
 
N社長、この日は「少し考えてみます」と帰って行かれました。その当時は専門工事業で年商は5億円でした。
 
あの日から3年が経った今、年商8億円になっています。その内訳は、本業が7億円、新規事業が1億円です。その業界では先進的な特殊設備を購入し、新工法を展開しています。
既存の営業の仕組みに乗せることで、立ち上げ一年目から1億円の売上げを得ることができました。来期は2.5億円を目標にしています。
 
大量の美容商品の在庫はどうしたのか。
N社長の決断は早く、その担当の彼に自分の間違いを詫び、全数廃棄および撤退を指示したのでした。
 
(まとめ)
・売る物と売り方はセットで考えること。
・新規事業は売り物、売り方のどちらかを固定して考えると成功の確率はぐっと高まる。
・その際には、それと共に次のことを絶対に守ること。
「社長自身がその分野やそのビジネスの形が好きである」
・好きであれば、売る物も売り方も全く関係ない事業に進むことも有り。この先の困難も乗り越えることができる。

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