No.498:飲みにケーションをやっていい会社、やってはいけない会社

№498:飲みにケーションをやっていい会社、やってはいけない会社

この日はT社を訪問してのコンサルティングです。
ある業界に特化したサービスを展開するT社長は言いました。
「先生、入社して6カ月で退社した社員が残していった言葉が気になって。」
 
私はそのままT社長の次の言葉を待ちます。
「この会社は思った以上にドライでしたと。飲み会とかやったほうがいいのでしょうか?」
 
私は答えました。
「今の御社なら、やったほうがいいかもしれませんね。」
 
T社長は、過去に飲みにケーションを推奨していた時期があり、その『不毛』を覚えています。


会社の本質とは、PDCAにあります。
そう、PLAN-DO-CHECK-ACTIONです。
 
組織には、何かしらの目的、目標があります。
それを追求し、達成するために組織がつくられます。
 
そして、それを実現するために計画を立てます。
各部署や各担当者は、その計画を実現するために実行をします。
その実行した結果を確認します。何が上手くいって、何が上手くいかなかったのか。
それを受けて対策すなわち仕組みを改善します。
このPDCAを回すことで、目標に向けて進むことができます。
 
ここで確認しておきたいのは、ここの『前提』です。
PDCAの前提は、『目的・目標がある』と『仕組みがある』ということです。
これを基盤としてPDCAが存在し得るのです。
 
そのため、当社のコンサルティングでは、必ず目標を明確にします。
それもしっかり具体的にします。そして、その基盤となる仕組みを整備します。
そのうえでPDCAを回す仕組みを整備します。
その結果、会社として各部門として、PDCAが回せるようになるのです。
そのサイクルにより組織が出来てきます。組織がより強固なものになっていきます。
PDCAの前には『目標』があり、後ろには『仕組み』があるということです。
目標⇒PLAN-DO-CHECK-ACTION⇒仕組みです。
 
組織が出来ない会社とは、根本的にここに問題があります。
・目標が明確で無い ・仕組みが無い
目標が無いので計画も無ければ、仕組みが無いので改善も無い。
無いから、全体としてPDCAが回せないのです。
だから、いつまでも組織が出来ないのです。また各部門やその管理者が「目標に向けたマネジメント」や「仕組みの改善」という本来の仕事を行えないのです。
 
組織の根幹となるのがPDCAです。
PDCAが組織を作るのです。
 
どんな会社も、この獲得こそが『第一にやるべきこと』になります。


PDCAを持たない会社では、すべての「施策」が「DO」になります。
「うちの会社は、DO-DO-DOです」と嘆いている社長がいますが、まさにその状態になります。
くどい様ですが、その原因は、「社風の悪さ」とか「管理者の能力の無さ」とかではありません。あくまでもPDCAを回すという仕組みが無いというだけです。
 
そして、マズいとその状態で次のような施策を行います。
研修や勉強会をします。評価制度や面談を導入します。そして、懇親会や飲み会というコミュニケーションの機会を増やします。
 
研修をやれば「一時のモチベーションアップ」や「スキルの獲得」ができます。
しかし、それで何かの仕組みが変わるわけではありません。
そのため、時間が経つほど、また、人の入替と共に、その効力は無くなることになります。
 
評価制度を導入すれば「やるべきことが明確になって」、ダメな社員を正し、やる気のある社員がやる気を出す・・・という効果が期待できます。
しかし、それも限定的と言わざるを得ません。
会社のPDCAが無いままです。社長または一部の優秀な社員が会社を回している状態は何も変わっていないのです。その施策は、大きな成果を出すことなくマンネリ化することになります。
 
そして、コミュニケーションの機会を増やします。
社内の人間関係の問題や派閥を解消するために、懇親会や飲み会を開催します。
それで少し改善されたとしても、その現象を生んだ根本原因は変わっていないのです。
 
その懇親会や飲み会の場には、「上辺だけのコミュニケーション」が蔓延することになります。そこに「一緒に頑張っている仲間」という意識はありません。
普段から「仕事を良くする会話が出来ていない同士」は、この場でも本質的なコミュニケーションは取れないのです。
彼らには、「仕事に対する充実感」も「会社に対する愛も貢献心」も無いのです。
やはりその効果は一時的なものとなります。


研修や勉強会、評価制度や面談、懇親会や飲み会。
私はこれらを「効果がない」「やるべきでない」と言っているのではありません。
あくまでも『基盤』が無い会社のことを言っているのです。
 
会社としてPDCAが回っていない状態で、これらの施策をやっても本来の効果を発揮することはありません。残っていかないのです。
優先順位が違うと言っているのです。
 
T社が改革に手を付け、4年目に入りました。
完全にPDCAが回った状態が出来ています。
 
T社長は毎期管理者と共に経営計画書を作っています。
そして、月例会議でその進捗を管理しています。そのやるべきことを各部が実行しています。また、必要に応じ仕組みを改善しています。PDCAが回っているのです。
T社長は会社が良い状態であることを感じていました。
 
そんなある日です。
入社半年の社員が辞表を持ってきたのです。T社長はその理由を訊きました。
彼は、「やりたいことが見つかった。」と言いました。
そして、「入社前に抱いた印象とは違い、この会社はドライな社風でした。」と付け加えました。
 
T社長はこの言葉に驚きました。
T社長自身、そんなことを全く感じることはありませんでした。
それどころか、本質的なコミュニケーションが取れていると感じます。会議では「方針はあっているだろうか」、「どうすればもっと良くできるのか」など、忌憚ない意見交換ができています。
どちらかと言うと、熱く、密な、会社だと思っていました。
 
そこまでお聴きして、矢田は質問をしました。
「一般社員のコミュニケーションはいかがですか?」
 
頭の良いT社長です。その問いですぐに閃きました。
「一般社員のコミュニケーションは少なくなっているはずです。」
 
今のT社内は、仕組化されることで、すべてが坦々と流れるようになっています。トラブルや現場にイレギュラーな判断が求められることも減っていきます。
また、他部署や他の担当者とのやり取りは、システムやメールに置き換えられていきます。
その結果、社員間のコミュニケーションの機会は減っていったのです。
 
また、社長や幹部層と一般社員のコミュニケーションも激減していることにも気づきました。4年前とは全くその量が違います。T社長は、その辞表を持ってきた社員のことを「何も」知りませんでした。
 
彼が「ドライな社風」と言ったのも仕方が無いことなのです。
また、求人のホームページには、それとは真逆のイメージを持たせていました。
 
スピードある変化をしているので幹部や管理者とのコミュニケーションはより密に、より本質的になっていました。その一方で分業と仕組化が整備されることで職場におけるコミュニケーション量は格段に減り、上層部との関係は皆無になっていたのです。
 
T社長は、「飲み会をやったほうがいいのでしょうか?」と聞きました。
私は、「今の御社なら、やったほうがいいかもしれませんね。」と答えました。
 
仕組化が進むと、どうしても「人間的なつながり」は薄くなります。
それを補完する施策はあってしかるべきものなのです。
それは飲み会であっても、勉強会であっても良いでしょう。
そのままで問題が起きるようであれば、対策を施す必要があります。これも企業の一つの仕組みとして回していきます。
 
今は、会社全体として本質的な取り組みが出来ているT社です。
飲み会の席も、「上辺のコミュニケーション」でなく、部門間を超えて「仕事」の話が出来る良い機会になるはずです。その場では「子供じみた行為」はなく、自分から他の部署に話しに行くという「大人の行為」も見られるはずです。
そういう場を彼ら社員も求めているはずです。
 
 
正しい優先順位を持つことです。
 
まずは、会社としてPDCAを回すことです。
その前提である「目標」と「仕組み」を整備することです。
 
その後に、研修、評価制度、懇親会という施策が活きてくるのです。

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