No.499:要求する、責任を果たすことを求める、、、これで組織が崩壊します。
「先生、この言葉ってどう思いますか?」
コンサルティングを終えての一杯の席、S社長は前置きを入れます。
そして、ゆっくりと言葉を出していきます。
「命令する」
「要求する」
「責任を果たすように求める」
S社長は、言いました。
「これらの言葉を使うことに、なんか違和感を持ちます。」
私は賛同の頷きをします。
「社長が、使わないほうが良い言葉ですね。」
部下の出来によってリーダーシップのスタイルを変える必要があります。
部下の能力が高ければ、指示を出すだけで事が進んでいきます。
彼らは定期的に報告をしてくれ、必要とあれば相談もしてくれます。そして、その時には、何かしらの提案もしてくれます。
それに対し社長は意思決定し、再度依頼をします。それで進んでいきます。
部下の能力が低ければ、それだけではいけません。
報告を取りにいかなければなりません。実際に現場を見に行くことも必要になります。
その状況から課題を発見し、その案を考えなければなりません。
そして、次の行動を具体的にし、その実行を依頼します。そこまでしてやっと事が進んでいきます。
部下の出来によってリーダーシップのスタイルは変えることが必要です。
そうでなければ、事が進まないことになります。
依頼する相手の力量で自分の行動や態度を変えるのです。
「自分が下りていく」ことが出来なければならないということです。
組織の完成形で言えば、次が其々の階層の役目になります。
社長の役目は「意思決定すること」。
管理者の役目は「それを実現すること」。
そして、社員(判断層と作業層)の役目は「それを実行すること」、となります。
こういう役割分担をしているのが組織です。
実際に、世の人事制度を観るとこの役割を強化する作りになっています。
役職が上に行くほど「成果」に重点が置かれるようになります。一方、下に行くほど「実行」の責任が求められるようになります。
「社員には実行責任があり、その結果責任は管理者・社長にある」のです。
この組織の形が理想であり、我々はそれを作っていかなければなりません。
年商数億から10億に進むときに、この「組織」の獲得が必要になります。
しかし、現実には、今の我々の会社には、そんな人材はいません。仕組みの改善案を出してくれる管理者も、自分で考え動ける社員もいないのです。
それどころか、指示を出しても動いてくれない社員もいます。彼らは、その指示がなかったかのように、昨日と同じ態度で同じ作業を繰り返しています。
ここで彼らを責めてはいけません。
「なぜ、動けないのか(動けないのか)」を考えるのです。そして、それを補完することが必要です。
人が動けない理由は大きく三つあります。
理由その1:方法が解らない。
どのようにやればいいのか、どのように進めればいいのか解らないのです。
指示を与えたら、一緒に行動分解をし、次の行動を明確にしなければなりません。
理由その2:気持ちが乗らない。
やったことが無いことに対しては誰でもやる気が起きないものです。自信もありません。
行動分解と共に、気持ちが乗るような態度で接する必要があります。
間違っても、イライラを見せたり、面倒くさそうな言動をしたりしてはいけません。
理由その3:なにかの障害がある。
動かないのであれば、何かやれない理由があるのかもしれません。
業務時間内にその時間が取れなかったり、そのチーム内で理解が得られていなかったりすることがあります。また、他の部署の協力が必要な場合もあります。
その障害を取り除く必要があります。
この3つの中で、最初に手を付けるべきは3つ目の「障害を取り除く」になります。
これが原因で「社員が動けない」ことが圧倒的に多いのです。
社員は「なぜ、自分が動けない」のかを説明できません。また、多くの社長はその理由を解っていません。
その答えは明白です。「仕組みが無い」のです。
仕組みが無いので、案件の流れを知ることができません。そして、其々の業務の基準が解りません。その結果、問題に気づけない状態になっているのです。
他には、組織の指示命令系統が明確でないことも多くあります。また、社員同士や部署間のコミュニケーションの機会が設けられていないこともあります。
この状態が「障害」になっています。
彼らは、力を発揮できない状態にあるのです。
実際に、コンサルティングで仕組みを整備していくと、社員の発言量が格段に増えることになります。多くの社長は「うちの社員も考えているのだなぁ」との感想を述べられます。
「障害」を減らした後に、他の2つに手をつけることになります。
指示されたことをこなせるように行動分解を行い、具体的に方法が解るようにします。
前向きに取り組めるように、オープンで暖かい態度で接します。
そして、その後も定期的にそのコミュニケーションを取り、その進捗と次の行動を確認します。
この期間、社長は「この依頼したことは我が社にとって重要なことである」と「君は出来る社員であると信じている」という興味と暖かい光線を送り続けます。
これにより、指示したことが進んでいきます。
そして、その指示を一つクリアすることで、その社員は成長することになります。人生で初めて課題をクリアすることを体験するのです。
その体験により、社長とその社員の信頼関係も築くことができるのです。
それを繰り返すことで、「指示を出せば動く社員」に育てていくのです。
私たちは、このプロセスにより、組織を変え、会社を作っていくのです。
年商数億から年商10億に進むためにそれが必要になるのです。
この時、彼らを突き放してはいけません。
指示したことの実行を要求してはいけません。
責任を果たすことを求めてもいけません。
命令もダメです。
それが組織論的に正しかったとしてもダメです。
ここの正しいスタンスは、「依頼」であり「一緒に」なのです。
「こういうことをしてください。どうやったらうまくできるか一緒に考えよう。(行動できるように)次の打合せの日を決めておこう。」
なのです。
間違っても突き放してはいけません。
責めることがあってもいけません。
それでは、彼らは益々萎縮することになります。そして、社長への信頼を失うことになります。組織は崩壊することになります。
うちの会社には、指示を出せば動ける人間などいないのです。
それどころか、彼らが動くための前提である「仕組み」が無いのです。
間違えてはいけません。
優秀な社員がいれば良い、NOです。そんな社員は今の自社には来ません。
来たとしてもすぐに見切って辞めていきます。
具体的な指示を出して、社員を動かせば良い。
これもNOです。それで社員が成長することはありません。
順番はこうです。
まずは、『仕組みを整える』
その内で『依頼し、人を動かす(一緒に)』
仕組みが整備できたら『人を揃える』ことに向かう。
いずれにせよ、『冷たい』のはダメです。
あくまでも社員とは『パートナーシップ』です。
一緒に課題をクリアしていこう、一緒に世の中に貢献していこう、
一緒にこの人生を楽しもう。
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