No.508:仕組みの効果の三つ目:社員を解放し、社員の能力を発揮させる
私は、いままで「仕組みの効果効用とは大きくは二つ」だと考えてきました。
「効率」と「再現性」。
多くの組織論の本にも、そのように書いてあります。
そして、それを皆さんにもお伝えしてきました。
最近、この二つ以外に、三つ目があることに気づいてしまいました。
それどころか、これこそが最も重要なものであり、一つ目に列すべきものではないかというほどのものです。
【復習:仕組みの効果効用】
その1.『効率』
いま10人でやっている業務を8名で出来るようにします。
いま1時間かかっている業務を30分で出来るようにします。
このように、仕組みにより、同じ投入資源でより大きな成果を出すことをします。
我々企業は、事業モデルにより稼ぎ、仕組みにより効率アップし、より儲けることに取り組んでいます。
その2.『再現性』
誰かが休んでも誰かが替わりを出来るようにします。
新たに採用した人が、短期間で同じように成果を出せるようになります。
仕組みにより、同じ作業を同じ条件でやれば、同じ結果が得られるようにします。
企業においては、集客、営業、サービス提供、すべてに置いて再現性が必要になります。狙った質を大量に生産する、だから大きく儲けることができるのです。また、そのノウハウを会社として保有することができるのです。
「効率」と「再現性」この二つこそが仕組みの効果効用となります。
そして、今回三つ目に気づきました。
それは、『発揮』です。
その3.『発揮』
仕組みにより、社員の力が発揮されることになります。
私は、クライアントの仕組みづくりをお手伝いする中で、その様子を多く見てきました。
・工場で黙々と働いていたパートさんがワイワイ業務改善に意見をするようになる。
・部下を指導できない管理者が、しっかり部署を回すようになった。
また、実際にその様子をクライアント社長からも多く聴きます。
「最近社員が会議で意見を言うようになってきました。」
「先日、若手社員の一人が企画書をつくってきて提案がありました。」
仕組みによって、これが起きるのです。
その様子はまさに『発揮』です。
彼らは、いままでもそこに居たのです。同じ給与を払っていたのです。そんな彼らが、意見を言ったり、行動するようになったりするのです。彼らが体だけでなく、脳や心という資源も使いだしたのです。その表情も全く違うものになります。
この様相は、『解放』という表現が適格なのです。
私は、いままでも『解放』という概念と言葉は使ってきました。
しかし、「効率」と「再現性」の二つと結びついたことが私のなかでの大発見だったのです。
彼らは、なぜ今まで力を発揮できなかったのでしょうか。
なぜ自分達で判断することができないのか。いちいち社長に訊かなければならないのか。
なぜ考えられないのか。なぜ意見が言えないのか。そして、なぜ動けないのか。
その原因を確認しておきましょう。
まずは、業務や案件の流れが見える状態にありません。
各担当者が何をやっているのかを知りません、その案件がどのような状態なのか他の部署や管理者からは知りようがありません。そのため自分達で調整することや先回りして動くこともできません。横のつながりが機能し難いのです。
それぞれの業務には基準がありません。
人それぞれが違う手順でやっています。そこでは、其々が異なる考え方でやっています。
其々の業務の方針は、社長の口から出ますが、それは断片的なものばかりです。
新入社員は先輩から「私はこうやっているよ。きっとこうなっていると思うよ。」と曖昧な教わり方をします。管理者も部下を指導する根拠(基準)を持たないことになります。
全員が、会社として決まったことを体系的に知ることも、見返すことも出来ないのです。
そして、この先の方針も解りません。
どの事業を伸ばしていくのかが、今期の目標は何か、知りようがありません。
経営計画書はありますが、そこには大きな目標と理念が載っているだけで、具体性がありません。自分たちが明日から何をすればいいのか、解らないのです。
未来が解らないために、先回りしての仕事も出来なければ、考えることも出来ないのです。
このような結果、社員の能力も心も蓋をされた状態になります。
その時間が長く続くのです。その結果、一部の優秀な人や若い人はこの会社を去ることになります。そして、残った多くの社員は、思考を止め、毎日自分の受け持ちの範囲だけを守ることになります。
年商数億企業である当社のクライアントの多くは、この状態でした。
そして、一つひとつ仕組みの整備を進めました。
その結果、その会社の社員は力を発揮し始めたのです。
その様子は、正に『解放』そのものです。
仕組みの効果効用は、
『発揮』、『再現性』、『効率』、の三つです。
そして、正しくはこの順番になります。
仕組みは、「社員の力を発揮させる」というところにも、「再現性」という効果効用をもたらしてくれます。
この仕組みが整備された会社に社員が入れば、意見を出すようになります。また、基礎能力があり経験を少し積めば、自分で判断できるようになります。チームで集まって、起きた問題の原因と対策を考えるようになります。次の社員でもそれが起きるのです。
「社員の力の発揮」に対しても「再現性」が担保されるのです。
そして、それを更に「効率」よく出来るようになります。
より少ない人数で大きな改善が出来るようになります。また、より能力の低い人でも意見したり、行動したりすることが出来るようになります。
入社した社員が一人前になるのも、職場のリーダーとなるのも、より短期間になるのです。
どんどん会社は良くなっていきます。確実に会社として強くなっていきます。
『発揮』、『再現性』、『効率』
この三つが相乗効果を発揮して、グルグル回って、良くなって行くのです。
これが、当社のクライアントや世の急成長企業で起きていることなのです。
必要なのは、「人を伸ばす」という『教育』ではありません。
「決まったことを出来るようにする」という『訓練』でもありません。
まずは、「そこにあるもの」の『発揮であり解放』が先なのです。
当然、いま居る社員の能力や意識の問題はあります。
しかし、それを議論してよいのは、仕組みという前提を揃えた後になります。
まずは、解放なのです。
まずは、発揮できる前提を揃えることなのです。
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