No.513:社長が心の底から「経営が楽しい」と思えるための条件とは。

№513:社長が心の底から「経営が楽しい」と思えるための条件とは。

建設業H社長がコンサルティング受講のために事務所に来られました。
「先生、こんにちは。本日もよろしくお願いします。」
その表情に、九州からの長時間移動の疲れは見えません。それどころか、その体からは眩いばかりのオーラが出ています。
 
次がH社長のこの一年間の主な成果です。
・日常業務を管理者に任せられるようになり、経営に割ける時間が大幅に増えた。
・初めての営業担当(22歳男性)を採用した。その営業が一人で受注してくる。
・2週間前に、年商が同規模の専門工事会社をM&A(購入)した。
 
そして
・大学生の息子が楽しそうな親父を見て「俺もはやく親父の手伝いがしたい」と言ってくれた。


20:80の法則は、経営者としては絶対に知っておくべき理論です。
実際に適用できる事象は多く、活用することで大きな成果を出すことができます。
 
ニッパチの法則、パレートの法則とも呼ばれ、「構成要素を大きい順に並べたときに、上位20%の要素が、全体の80%程度を占める」(超要約)という法則です。
イタリアの経済学者であるパレート氏が、「欧州の20%の人が、80%の資産を所有している」という法則を発見しました。
 
この法則は、ビジネスの世界でもいたるところで見られます。
・上位20%の顧客が売上げ(粗利高)の80%を占めている。
・上位20%の商品が売上げ(粗利高)の80%を上げている。
・原因の上位20%が故障の80%を引き起こしている。
 
この20対80とは厳密ではなく、「少ない要因が多くの現象を決定づけている」と解釈をします。過去の私が見てきた例では、「上位5%の顧客が売上の90%を占めていた会社」もあります。
 
そして、この法則は私たちの人生にも当てはまります。
・我々の行動の20%が、80%の結果を作っている。
毎日の営みからするとほんの少しの時間が、大きな成果を決定付けているのです。
 
我々は、自分の行動を選ぶときに、しっかり何が重要であるかを考える必要があります。
また、自社の方針を決める時に、それを見極める必要があります。
 
コンサルティングとは、「その20%を探す行為」だと言っても過言ではありません。
その取り掛かるものを間違えれば、投じた時間や費用に比べ、得られるものは極わずかになります。逆にそれを見つけられれば、大きく前進飛躍することができるのです。


会社というモノが社会のモノである限り、また、組織が人の集合体である限り、そこには多くの共通項があります。やはりそこには、絶対抑えておくべき要素があります。
私はそれを『経営の基本』と呼んでいます。
 
経営には基本がある。
経営には原則がある、とは違います。基本なのです。
・伸びるビジネスは、基本をしっかり押さえている。
・仕組みづくりには、基本的な進め方がある。
・社員は、基本が身についているから、応用することができる。
やはり原則とは違うのです。
 
この基本です。
「なんでこんな当たり前のことを」と思われるかもしれません。
しかし、それだけ重要であり、お伝えしたいことなのです。
 
多くの経営者が、「基本的なことが解っていない」、その経営において「基本ができていない」のです。
 
その結果として、間違ったことを取り入れてしまっています。
例えば、「これだけをすれば上手くいく」と謡っているコマーシャルがありますが、それは完全に間違いです。また細かい施策も必要ありません。
 
経営はすべてが繋がっています、また組織は人の体と同じです。
まず大まかなところ、核となるところを作っていくことが必要です。そして、そこをしっかり繋げて動かしていくことです。
・・・「社員の手によって自社のサービスが売れる、提供される」、「管理者が自部署とその進捗を管理している」、「会社としてPDCAが回っている」。
 
上記が大まかなところであり、「社員の育成のために研修をしている」、「立派な経営計画発表会をする」、「社員同士でお礼のカードを送りあう」、「コミュニケーションのために飲み会をやる」これらの施策は、その『基本』に比べたら『どうでもいいこと』になります。
管理会計や人事評価制度でさえも、その大まかなところには含まれないのです。
 
これらの施策は、基本があって初めて活きてくるものです。その施策により、一時社員のモチベーションが上がったり、態度が改善されたりすることはあるかもしれませんが、根本は何も変っていないのです。そこには軸となるものが存在しないのです。会社としての体を成していないのです。
 
基本が身に付くと人の意見に対し、正しいか正しくないかは、簡単に見極められるようになります。これは、習い事やスポーツなど、どんな分野でも当てはまります。
どんな分野においても、初心者がまずは身に付けるべきは基本なのです。また、教える方も基本を教えます。
 
基本の出来ていない者に応用なんて必要ないのです。また、そこに細かいテクニックも関係ありません。それどころか、却ってそれは害になります。
解った者が観れば、その相手のレベルがどれくらいかはすぐに解ってしまいます。そして、その人のレベルに合ったアドバイスをします。もし基本が出来ていなければ、やはり基本に言及することになります。
 
経営にも『基本』があり、『基本』こそが20%に当たるのです。
その20%を抑えることで、早期に80%の成果を得ることができます。
成果が出ると楽しくなります。
 
冒頭のH社長は言いました。
「大学生の息子が、早く親父を手伝いたいと言ってくれました。私が楽しそうに経営をやっているのを見てそう思ったそうです。」
 
習い事やスポーツ同様に、基本が出来ているから楽しめるのです。そして、基本が出来ているから成果が出るのです。そして、成果が出るからまた自信がつくのです。
 
1年前のH社長は、言っていました。
「私は、小さな会社の土建屋の社長としていままでやってきました。経営の勉強をしっかりやったこともありません。社長とは何をする人なのかも解りません。」
基本ができていないと不安なのです。根拠が無いので、たまたま上手くいったものにも自信が持てません。そして、どこかのコンサルタントから原則に反した施策を購入したり、全然解っていない先輩経営者に相談したり、してしまっています。
 
社長は早く経営の基本を習得することです。
それは、本当に基本的なことですが、大きな成果をもたらしてくれます。
覚えることは、それほど多くはありません。
 
しかし、大きな成果を与えてくれます。大きな変化を社長自身に与えてくれます。
その結果、会社が変わるのです。
 
20%をその手に掴むのです。そこに経営を楽しめる自分がいます。

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