No.567:売れない理由は“営業”ではない、「説明する文章」がないから
海外の展示会を視察したときのことです。
広い会場を歩いていると、どこかで見覚えのある顔がありました。
自社ブースに立つメーカーN社の社長です。
声を掛けると、N社長は開口一番こう言いました。
「この商品を売りたいのですが……まったく興味を持ってもらえなくて。」
私はブースを一周し、商品を手に取りながら尋ねました。
「この商品のコンセプトは何ですか?」
N社長は困ったように表情を曇らせ、そして静かに言いました。
「特に……ないのです。」
売れないのは“営業力”のせいだと思ってしまう
多くの社長は、売れない理由をこう考えます。
・営業のトークが弱い
・PRが下手
・SNSが足りない
・広告運用の精度が低い
しかし、これらは “結果として現れた表面の現象” にすぎません。
営業が弱いのではありません。
PRが下手なのでもありません。
根本的には「説明する文章」が存在していないのです。
事業は、文章で「説明できて」初めて存在する
私は経営の現場でずっと見てきました。
会社は、自社のサービスを“説明できた瞬間”に動き出します。
まず必要なのは お客様に向けての“説明文” です。
・何をするサービス(商品)なのか
・これを誰が使うべきなのか
・なぜその商品が必要なのか
・どんな未来(天国)が手に入るのか
これが30秒で語れている文章です。
これがなければ、伝わることはないのですから、どれだけ良い商品でも売れることはありません。
商品が売れない会社の共通点:説明文がない
冒頭のN社もまったく同じ状況でした。
・コンセプトがない
・ターゲットのイメージがない
・商品の特徴が整理されていない
・そして、価値を一言で表現できていない
そのため、ブースを見ても何も伝わらないのです。
「売れない」のではありません。売る前のスタートラインにさえ立てていないのです。
多くの会社には“説明する文章”が存在しない
自社のサービスの良さを伝えられていない。
それ以上に、それが文章として表現できていない。
それどころか、その文章自体が存在していない。
これが多くの企業の実情なのです。
この状態で作られた広告が刺さるわけがないのです。
また、営業担当が売れるわけがないのです。
“伝える技術”以前に、“伝える中身”が存在していないのです。
まずは「一文」をつくる
社長の最初の仕事は、商品開発でも営業研修でもありません。
まずは「お客様に説明する文章」をつくることです。
その文章を見込客にぶつければ、興味を持ってもらえる文章をつくるのです。
その文章とは──
誰の、どんな課題に対し、
この商品はどのように役立つのか。
これを 30秒で、魅力的に語れる一文 にすることです。
すると、この一文からすべてが生み出されることになります。
・営業トーク
・ホームページのメッセージ
・広告の訴求
・商談資料
・採用メッセージ
これらは全部その“説明文”の分身です。その一文があれば、営業やマーケティングの担当者は、これらを作ることができます。
営業マンは「説明できる状態」になっていますか
ややくどいようですが、重要なので再度確認しておきましょう。
営業マンは「なぜ自社のサービスを使うべきか」をお客様に説明できていますか。
マーケティング担当者は、広告制作会社に“売れる説明文”を渡せていますか。
できていなければ、それは担当者のせいではないのです。
会社として説明文がない、それが根本です。
お客様に説明する文章、これが全てです。
これがあって初めて、彼らも力を発揮できるのです。
まとめ: 自社のサービスを、お客様に正しく魅力的に説明する
まずは、この一文をつくりましょう。
「自社のサービスを、お客様に正しく魅力的に説明する」
ここからすべてが始まります。
営業も、広告も、組織も、商品開発ですらも。
すべてがこの一文を実現するために。
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矢田 祐二
理工系大学卒業後、大手ゼネコンに入社。施工管理として、工程や品質の管理、組織の運営などを専門とする。当時、組織の生産性、プロジェクト管理について研究を開始。 その後、2002年にコンサルタントとして独立し、20年間以上一貫して中小企業の経営や事業構築の支援に携わる。
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