No.71:部門をつくっても機能しない・・バトンの受け渡しを設計すること

いままで社長や一部の優秀な人材が中心となって流してきた業務を、組織として各部門が機能して流すためには、業務の流れをいちから棚卸し設計する必要があります。
どの事業も大きな業務の流れは、下記になります。
集客 ⇒ 見込み客フォロー ⇒ 販売 ⇒ 制作・納品 ⇒ リピート営業
そして、多くの事業では、さらにこの「製作・納品」というセクションのなかに、担当間や外注業者などとの多くの業務のやりとりの流れがあります。
 
ホームページ製作業者の事例をお話します。
社長は、当時37歳。創業して5年目。
顧客に対しマーケティング的な視点での提案が評判になり、仕事は順調に増えていました、そして、より拡大をするためにスタッフを増員、その当時スタッフは8名。

「矢田先生、部門をつくったのですが、業務がスムーズに流れません。半年ほど我慢していましたが、納期遅れや製作レベルの低下などの問題が繰り返されます。そして、最近では、お互いに責任の擦り付けのような発言がみられるようになりました。結局、いまはもとの形に戻し、自分が全部をコントロールしています。」

これは、成長の過程で、起きやすい問題です。
規模の小さいうちは、業務を、社長や一部の優秀な人材が中心でコントロールして、流していることがほとんどです。各セクションに対し、期日を伝えたり、その進捗を確認します。各セクションのつなぎで品質を確認します。それにより業務が滞ることなく流れます。
そして、順調に受注が増えてくると、社員を増やし、部門をつくることになります。
営業部:お客様から要望を聞き、企画し案件をまとめる
製造部:その案件を具体的に形にします。
そして、うまくいかなくなります。

それは、次の視点での仕組みの構築が欠けているからです。
『バトンの受け渡し』
バトンリレーのバトンです。

いままでの一部の人材がすべてをコントロールしてきた状態では、このバトンを渡す必要がありませんでした。
その人材の頭のなかに、顧客の要望や企画の全体像、そして、仕様などの情報がすべて入っていたからです。
そして、それをもとに補佐的なスタッフに指示を出してきました。
これは、1000mを、一人の人材で走っている状態です。


それを各部門で流すということは、各部門の間に、バトンを渡す行為が必要になります。 
顧客の要望や企画の全体像、そして、仕様などの情報を。
頭の中にあっても、何かしらの形にして渡さなければ後の工程は受け取ることができません。

1000mを5名で走るのです、ひとり200m、バトンを渡す回数は4回です。
それも一人で走るのと同じぐらい、正しくスピーディに受け渡しすることが必要です。 

 
このホームページ製作会社は、まさにこのバトンリレーができていなかったのです。
この業務の流れを設計し、構築をすすめた現在(着手から3年)、スタッフ数は13名に増えています。そして、特に社長がコントロールしなくても、業務がスムーズに流れる様になっています。
社長も、ほぼ現場を離れた状態になっています。


この取組みのデメリットもあります。
打ち合わせや書類が増えることです。

これは当たり前です、いままで一人の頭の中にあった情報を人に渡すのですから、何かしらの書面にすることや
すり合わせのために打ち合わせが必要になります。

当然、大手企業のように書類も会議も多すぎるのは困りますが、最低限のものは必要です。

こういう社長がいます。
また古株のスタッフに多い発言です。
「面倒な書類が増えるの嫌だな。社内の事務仕事が増えるのは嫌だ。」


私はこうお伝えします。
「嫌ならやめてください、そして、今の規模やステージのままでいてください。
でも、より多くの儲けを出したい、事業も組織も次のステージへいきたい、各部門を機能させて、社長は経営に専念したい、のであればやるしかありません」

リレーのバトンの受け渡しを設計し構築することです。
この構築ができていない状態で、ますます業務が増えれば、間違いなく混乱は広がります。
また、部門や拠点(複数の事業所)が増えればなおさらです。
そして、ますますコントロールする人材の役目は大きくなります。
コントロールする人材を増やしても、個人商店が増えるだけで、何の解決にもなりません。
それどころか、その人材の退職リスクが高まりや、ローテーションできないという問題が大きくなります。


この規模で手を付けてください。

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