No.116:運転資金の借入、展開のためであれば楽しく、業績悪化の補填のためであれば苦しい、そして、その後の返済は地獄

「計画通りの金額を借入することができました。」
専門機メーカーの社長、昨年対比130%
儲かる仕組みもできて、更に大きく儲けるために展開を始めています。
社長 「矢田先生、経営を20年やってきて、こんなに楽しい借入は初めてですよ。」


事業の構築は、2段階で考えます。
開発段階:仕組みで回り、しっかり儲かる年商1億の事業モデルをつくる。
展開段階:その出来た1億を10個つくり、より大きく儲ける。
 
この展開の段階に入ると、売上げの伸びは、いままでのような年数%では収まらず、年数十%となります。また、社長のなかにも、やれば儲かると言う確信があります。 
こういう宣伝をすれば、これだけ見込客が集まる、その中からある確率で顧客になる、そして、その顧客はこれだけの収益を自社にもたらしてくれる、そして、その増えた分の仕事は・・・・と、やれば儲かることは確認ができています、どんな社長でも、早く展開したくてたまらなくなります、また、早く展開する必要もあります。
 
顧客や世の中の興味や欲求が次に移る前に、できるだけ大きく儲けたいのです。そして、ライバルに追いつかれる前に、その業界でのNO.1の認知度も、大きなシェアも獲得したいのです。
 
しかし、そのスピードが出始めたタイミングで、ブレーキをかける問題が発生します。
それは、二つの資源に関する問題です。
一つの資源は「人」、人的資源の調達が追いつかなくなります、現場のスタッフがいない、派遣が調達できない、外注先も見つからない、と。
そして、もう一つが「金」、資金が追いつかなくなります、急拡大する事業に対し自社が保有する資金だけでは当然足りず、外部から調達することになります。
やれば儲かるとわかっているだけに、もどかしい限りです。
まさに、借金は企業にとっての、加速装置であり、特急切符なのです。


資金調達は、銀行からの借入、社債の発行、IPOなどありますが、多くの企業は、銀行からの運転資金の借入を起こすことになります。
しかし、この資金調達に対しては、銀行も非常に協力的で、社長が思っていたよりもスムーズに進むことがほとんどです。
 
それは、資金調達の理由が明確であり、理に適っているからです。
銀行の担当者への社長からの説明は、その事業が儲かる理由が理路整然としています、そして、それだけの資金調達ができればどれぐらいの収益が上げられるかも示されます、そして、それが事業計画書という形で書面にまとめられています。
社長の目からは自信が溢れており、何かをごまかそうという色は微塵も感じられません。
お金を貸す方も、その事業の収益性に納得ができ、その事業計画書の存在に誠実さを感じ、社長の毅然とした態度に、安心感さえ持つことが出来ます。


冒頭の専門機メーカー社長は言われます、『今回の借入は、過去の借入とは全く意味が違います』と。
過去の借入とは2006年のリーマンショックのこと。その時には、大きな借入をすることにより何とか生き残ることができました。
リーマンショックの影響は、特に設備業には大きく、ある水準に戻るのに、その後数年を忍ぶ必要がありました。それは、社長の当初の予測以上で、数回の追加の運転資金の借入を起こすことになりました。その運転資金を返しきったのが数年前です。
 
「その当時の借入は、生き残るための運転資金でした。そして、銀行に出した事業計画書も、その借入のために作成したものであり、実は、その内容はただの「願望」・・・「妄想」に近いものでした、銀行の担当者の目を正視することができませんでした。
今回の借入は、同じ運転資金ですが、その意味はまったく違い、大きく儲けるための運転資金です。銀行に出した事業計画書は、事業の設計書であり、そこには儲かる理由がしっかり書かれています、だから楽しい借入です。」
 
同じ借入でも、その借入を起こす時の、社長の気持ちはまったく異なることになります。
先が見える中での借入
業績が伸びている故の借入
狙い通りコントロールされた中での借入

先が見えない中での借入
業績が悪化した故の借入
景気に翻弄された中での借入
 
展開するための運転資金の借入は楽しく、業績悪化の補填のための運転資金の借入は苦しい、そして、それをその後返済するのはさらに大変なこと。


儲かっているうちしか、「開発」すなわち新しい取組みは、できません。
新しい取組みは、そのどれもが不確かであり、無駄になるものが多いものです、そして、収益を出すまで時間がかかるものです。
業績が悪くなれば、たちまち何も手を打てなくなります。3期も赤字が続けば、本当に何もできなくなります。そして、その状況下での「開発」のための借入は、厳しすぎるのです、まさに、最後の賭けになります。
儲かっている今こそ、手を打つときです。

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