No.134:「お薦めのものは、何ですか?」とスタッフに訊く、この質問をすることで解ることとは?

「お薦めのものは、何ですか?」
居酒屋、レストラン、どこか店に入った際には、訊くようにしています。
 
これに対し、スタッフが「当店は、〇〇が銘物です」や「〇〇が美味しいですよ」と薦めて頂けます。
私は、その答えに『安心』し、やはりそれを頼むことになります。
 
この「お薦めのものは、何ですか?」
これに答えられる必要があります。


この「お薦めができる」ことを、『スタッフの教育』という低いレベルで考えてはいけません。
これは、根本的な事業モデルの問題と視る必要があります。
 
私は、機会が有るたびに訊くようにしております。
相談に来られた社長に、「御社がお客様に強くお薦めできる商品(サービス)は何ですか?」
これに答えられる方は、決して多くはありません。
 
そして、会社を訪問した際には、その営業担当や社員を捉まえて、同様に訊かせていただきます。
「御社のお薦めは何ですか?何が売りですか?」
社員が答えられる会社は、10社に1社ぐらいしかありません。
 
このような状態で、儲かるのか?というと、やはり儲かるはずもありません。
自分たちをお客様に強くPRすることができないことになります。
我々が、顧客の立場であれば、「何の特色もない」や「ありきたりのもの」に魅力を感じることはありません。
 
居酒屋やレストランで、「お薦めは何ですか?」とスタッフに訊いた時に、
「解りません」、「店長に訊いてきます」という答えを受けると、冷めることになります。
これこそが、その店に『売り』も『特色』もないことの表れなのです。
「どれもおいしいですよ」という答えでも、それが本当だとしても『売り』がないと受け止められることになります。
その結果、「つまらない店」となり、再度の利用をしないことになります。
 
自社に明確に「薦められるもの」がない状態を、危機的な状況として受け止める必要があります。


 そして、その「薦められるもの」は、必ず『商品』になっている必要があります。
『商品』とは、モノとして買える形になっている状態を意味します。
その状態になっているからこそ、「社員が売ることができ」「顧客は買うことができる」のです。
 
この「お薦めのもの」が「提案力」や「技術力」ではいけません。
これがその類のものでは、たちまち「社員では売れない」「顧客は買うことができない」状態に陥ります。
 
これでは、『お任せで食べる寿司屋』や『高級料亭』と一緒の状態になります。
『お任せで食べる寿司屋』でホールスタッフに「何がお薦めですか?」と訊くと、カウンターの向こうの板前の方に顔が向きます。
そして、その板前が答えてくれます。そして、旬な素材で、メニューに無いものまでつくってくれます。
 
この板前が、「社長」であれば、社長は現場を離れられなくなります。
その日の材料や顧客の要望にあわせ、提供するものをつくります。顧客も腕が良く話も面白い社長に付きます。
そして、会社として大きく展開することは難しくなります。 


このような事業が間違っているわけではありません。
しかし、年10億の視点で考えた時には、「間違い」になります。
 
年商10億事業を構築する順番は次のようなものになります。
 
1.事業定義を決める
どういうコンセプトにするか。どういう価値を事業の中心にするか。

2.商品をつくる
その事業定義のなかで、見えるように商品化する。

3.サービス対応が出来る様にする
スタッフが、その商品を薦め、提供できるようにする。
 
例1.高級中華
事業定義:エグゼクティブ層向き、接待、お祝いなどで使用
商品:銘物は「フカヒレ」、フカヒレをメイン料理にしたコース。
サービス:マニュアルを整備、スタッフに教える。
 
例2.学習塾
事業定義:個別指導塾、徹底指導で学力アップ
商品:週3回コース、苦手科目徹底コース、など、成績アップのためには高額でも徹底が必要。
サービス:親への面談(売り込み)マニュアル、講師マニュアルの整備。訓練体制の整備。
 
 
事業をつくるとは、必ずこの順番になります。
この1の事業定義で「尖らせ」、それを2の商品として「売れる形」にするのです。
ここまでの段階で、その事業が儲かるように「特色」を持たせることになります。
そして、その結果、「スタッフを活かせる」状態になります。
 
これを3の「サービス対応」だけで、考えてはいけません。
3だけで考えると、「技術力」や「提案力」という売り難い事業モデルになります。
お客様に自信を持って「薦めるもの」がないのです。
いくらスタッフの能力が高くても、勝負はついています。


「提案力」や「技術力」とは、あくまでも『資源』と考えることが必要です。
「板前の腕がいい」は資源であり、売りものにはなりません。
その『資源』を持って、「事業」と「商品」をつくるのです。
 
「当店は、焼きアナゴが銘物です」
「法要では、こちらの5千円のコースがお薦めです」
世のビックになっているビジネスをみると、必ず『モノ』があり、そのモノは、『一品』です。
『自信があるものを一品持つ』、これこそが事業を飛躍させる要所となります。
 
御社のお薦めはなんですか?
薦められる商品があること。そして、薦める商品が会社として決まっていること。
その上で、「訊かれた時には、こう答えなさい」とスタッフに明確に教えるのです。

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